第15話 昼食
次の日。
登校すると昨日、薺とアイスを食べている姿が目撃されていたらしく噂になっていた。
'最悪だ。金曜日からずっと私関連のことが学校に来るたび話題になる。なにこれ?なんのなの?一体私が何をしたっていうの?嫌がらせにも限度ってもんがあるでしょ!'
私は会ったことも、実際にいるかもわからない神に向かって心の中で文句を言う。
女子達の視線にうんざりしながら、私は教室まで逃げるように早歩きで向かう。
「おはよう。巴……それより大丈夫?」
教室に入り、自分の席に着くと桃花に話しかけられた。
私のげんなりした顔見て心配そうな顔をする。
「おはよう。大丈夫じゃない。なんで、私の噂ばっかり流れるの?あの二人と関わる女子なんて私以外にもいるのに……」
私は鞄に顔を突っ込みながら嘆く。
桃花は私の言葉を聞いて「それはあんたが学校一の美女で、男嫌いで有名だからよ」と言いたくなる。
本人は知らないから余計にややこしくなるんだよな、と思いながら「あの二人は学校モテ男トップ3に入るからだよ」と誤魔化す。
桃花は嘘は言ってないし大丈夫だろうと苦笑いするしかない。
「モテる人って大変だね……」
私は桃花の言葉を聞いて二人に同情する。
たった3日噂になっただけだし、毎日噂される二人に比べたらマシだなと思えてきて、少しだけ元気になる。
'あんたがそれ言うか!'
桃花は出かけたその言葉をなんとか飲み込み、知らないって幸せなんだなと私を見て思う。
「本当そうだね」
桃花はもう苦笑いするしかできなかった。
午前の授業が終わり昼休みになる頃には女子達の視線にも慣れた。
というより、クラスの女子達は藤堂の噂が流れたときからさほど興味がなさげだった。
さすがに秋夜と別れたという噂が流れた昨日は私のことを見ていたが、今日はいつも通りだった。
ただ、トイレにいくときは他のクラスの女子達から睨まれたりはした。
その度に「薺くんって本当にモテるんだな」と他人ごとのように思っていた。
そもそも私に睨む時間があるなら話しかければいいじゃん!
できないからって私に八つ当たりしないでよ!
そう思うと、急に女子達の視線がどうでもよくなった。
彼女達に遠慮する必要があるのか?
私が何か悪いことをしたのか?
ただ普通に話しただけなのになんでこんな目に遭わないといけないのか?
最初は悪いことしたのかと申し訳なく思っていたが、だんだんと怒りが込み上げてくる。
同級生と話すくらい別にいいじゃん。
少し前までそう思っていた自分を殴りたくなる。
なんでこんなことになったのだろうか。
周囲の視線を痛いほど感じる。
何故、私の真正面に芹那、桃花、楓が座り、私の右隣に藤堂、左隣に薺が座っているのだろうか?
時を遡り、少し前。
今日は弁当を忘れた芹那のために学食でご飯をすることになった。
いつものように席を取り芹那が来るのを待っていると、後ろから「隣いいか?」と話しかけられた。
私は誰かわからないまま「どうぞ」と言おうとしたが、それより先に楓が「どうぞ!」と食い気味に答える。
急にどうしたんだ?と座ろうとしている人物を見ようとしたら、今度は反対側から「ここいい?」と聞かれる。
今日はそんなに席が空いてないのかと思いながら「いいですよ」と返事しようとするが、今度は桃花に「もちろん。いいですよ」と言われてしまう。
二人共どうしたんだ?と思いながら両隣を確認すると驚きのあまり私は固まってしまう。
'なんでこの二人がここに……?'
私は今すぐ頭をどこかにぶつけて気絶したかった。
誰か、これは夢だと言ってくれ、そう願うのに、周囲から聞こえてくる声でこれは現実なのだと思い知らされる。
「あれ?なんで二人がいるの?」
学食を買って戻ってきた芹那は藤堂と薺を見て首を傾げる。
「座る場所がなかったみたい」
桃花がそう答えるかが、誰がどうみても空いている席はある。
「そう。なら、仕方ないね。今日は6人で食べよう」
芹那は桃花の言葉を聞いて「ん?」と思うも、考えるのが面倒くさくなり思考停止する。
「そういえばさ、3人って図書委員なんだよね」
楓は急に私と藤堂と薺の共通点を思い出し、そう尋ねる。
「そうだね……」
ハハッ、と私は乾いた笑みを浮かべる。
この空気に耐えられず私は早く昼休みが終わってくれと祈る。
「3人一緒に仕事したこととかあるの?」
「ないかな。基本、2人1組でだし。たまに、本の入荷だったり、掃除だったりで大勢でやることはあるけど……」
'そういえばこないだ、一緒に本の入荷の整理したな'
私の説明を聞きながら藤堂はあの日のことを思い出す。
そして、そのあとの浮気現場を目撃し彼女の傷ついた顔を思い出し、あの二人に対しての怒りがまた込み上げてくる。
「基本じゃんけんで負けた人がやるね」
薺がニコッと笑う。
「だね」
「図書委員って思ったより大変なんだね。でも、巴去年もやってなかった?」
「うん。私は本好きだからね。苦じゃないよ。それに図書委員だと一番最初に新刊借りられるからね」
それこそ私が図書委員になった理由だ。
「相変わらず本好きだよね」
楓は漫画は好きだけど小説は読まないので、一ヵ月で何冊も読む巴のことを尊敬していた。
「うん」
「へぇ。本好きなんだ」
薺が言う。
「うん」
「ならさ、おすすめの本教えてよ」
「いいよ。好きなジャンルとかある?」
自分の好きな本を人に紹介できるのは嬉しい。
桃花達にもおすすめしたことはあるが、あまり小説を読むのが好きそうではなさそうだったので無理強いはよくないと思い一回でやめた。
向こうから聞いてきたら喜んで教えはする。
「俺はミステリーとファンタジーが好きかな」
「いいよね。私も好き」
もちろん、ミステリーとファンタジー以外のジャンルも好きだ。
ぶっちゃけ面白ければなんでも読む。
ただホラーのジャンルで心霊関係だけは苦手で読まない。
昔、一回だけ読んだが、夜寝られなくなり二度と読まないと誓った。
それくらい怖かった。
「……『私の愛はここにある』ってファンタジー小説は読んだことある?」
少し考えてからおすすめの小説を言う。
みんなが知っているような小説を最初は言おうかと思ったが、気づけば言おうと思っていたのとは違う作品名を口にしていた。
「ある。あれ、いいよね。俺は特にヒロインが愛する人を救うためその身を捧げて助けるってシーンが一番好き」
「そこ本当に良かった。感動するよね。特にヒロインのセリフ……」
薺が知っていることに驚いたが、ヒロインのセリフを思い出し目頭が熱くなる。
「「私はあなたのために死ぬんじゃない。私のために生きるのよ」」
薺と同じタイミングで同じセリフを言う。
驚いて私は薺を見る。
「驚いた。薺くんもこのセリフ好きなの?」
「ああ。一番好き」
薺はそう言って柔らかい笑みを浮かべる。
薺が笑った瞬間、後ろから悲鳴が上がり私は驚いて肩がビクッとなる。
「へぇ。二人がそう言うってことは面白いんだね。ハッピーエンド?」
芹那は二人の一番好きなセリフを聞いて矛盾してない?と思うも「生きるのよ」と言うセリフにハッピーエンドだと思い読んでみたくなる。
「ネタバレになるけどいいの?」
私は全員に尋ねる。
ネタバレしていいと言う人もいるが嫌な人もいる。
芹那が良くても他の人が嫌だったら後で教えてあげようと思ったが、全員別にいいと言うのでネタバレすることにした。
「バットエンドだね」
「うん。ヒロイン以外、いい死に方しないね」
薺は内容を思い出し、特に主人公は酷かったなと思う。
「え!?そうなの?てか、ヒロイン死ぬの?」
芹那な驚いて、少し大きな声が出る。
「なんでなの!?」
理由が知りたくて芹那は尋ねる。
私はその質問に答えようと口を開いたが、それより先に声をかけられ答えられなくなる。
「巴」
私の名を呼んだのが誰か私は顔を見なくてもわかった。
声のした方に顔を向けると予想通り、そこにいたのは茜だった。
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