モーニング・ハーモニー:朝のカフェ物語

@minatomachi

第1話 プロローグ

中村咲は、静かな街角にたたずむカフェ「モーニング・ハーモニー」をオープンしたばかりだった。まだ朝の光が柔らかく、薄い霧が町全体を包んでいる。彼女はカフェの大きなガラス窓越しに外を眺めながら、心の中に静かな喜びが広がるのを感じていた。


このカフェは、咲がずっと夢見ていた場所だった。都会の喧騒から逃れて、自分だけの小さな世界を作り上げること。彼女はいつも、自分だけの居場所を求めていた。心地よい空間、香ばしいコーヒーの香り、そして訪れる人々の笑顔。それが、咲の描いた夢の全てだった。


カフェの準備を終え、咲は深呼吸をした。心の中の不安が少しだけ和らいだ気がした。木製のカウンターには、今日の朝食メニューが並んでいる。手作りのパン、フレッシュなフルーツ、そして特製のコーヒー。彼女の手から生まれるもの全てが、このカフェの一部となっていく。


外の通りを歩く人々の足音が近づいてくる。咲は一瞬、時間が止まったかのような感覚にとらわれた。ガラス越しに見える景色が、まるで絵画の一部のように感じられたのだ。静かで、穏やかな時間が流れるこの場所で、咲は新しい生活を始める準備が整っていた。


扉がゆっくりと開き、最初のお客さんが入ってきた。その瞬間、咲は微笑んだ。これが新しい始まりの第一歩だと感じたからだ。カフェの空間に広がる温かな空気、そこに集まる人々の物語が、今ここから始まろうとしている。


カフェの中には、咲の心の中と同じように、静かで穏やかな音楽が流れていた。外の世界がどうであれ、この場所だけは特別な時間が流れている。それが、彼女の求めていた全てだった。

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