100日連続小説 SS500
篠塚しおん
第1話「父の日」(2024/6/16)
父の日ってウチじゃなぜか一張羅着て鰻屋行くんだ。
還暦を迎えてなお健啖な父は、枝豆と白焼きをつまみにビールを煽り、いい気分になったところで、うな重(特上)を追加注文する。
酒が入って声が大きくなる父と、それに負けない声量で話す母と姉。僕は基本的に喋らない。だって、会話の隙間が無いんだもの。今日の僕の役割はお財布なので、主役を楽しませる役目は女性陣に任せる。こうやってウチは家族という強固で脆い関係性のバランスを取ってきた。
この束の間のピースが、可能な限り長く続くように祈って、僕は伝票を持って席を立つ。長年この鰻屋を支える看板ババアが笑顔でキャッシュトレーを差し出す。
「お会計、ちょうど3万円です。お支払いは現金のみです」
絶望的な出来事となりました。
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