第30話 崩壊の告白
影との激しい戦いを終えた一輝、藤本、葵、そして玲奈の四人は、呪いの源を封じ込めることに成功したかに見えた。しかし、洋館の奥深くにはまだ解き明かされていない秘密が残されていた。
部屋の中は静寂に包まれていた。影が完全に消え去り、冷たい風も止んだことで、ようやく安堵の息をつくことができた。
「これで…本当に終わったのか?」一輝は息を整えながら呟いた。
「まだだ。」藤本は壁に刻まれた古代の文字を見つめながら言った。「私たちはさらに調査を続けなければならない。」
玲奈は疲れ果てた様子で、一輝の肩にもたれかかった。「ありがとう…助けてくれて。」
その時、玲奈の体が突然震え始め、彼女の目が白くなった。彼女は意識を失い、その場に崩れ落ちた。
「玲奈さん!」葵は叫びながら駆け寄った。
一輝も驚愕の表情で玲奈を支えた。「何が起こったんだ?」
藤本はすぐに呪文書を開き、古代の文字を読み上げながら玲奈の様子を観察した。「これは…憑依の兆候かもしれない。」
その瞬間、玲奈の口から異様な声が響き渡った。「私の名前はエルデリック。この洋館に封じられた霊だ。」
「エルデリック?」一輝は驚いた表情で問いかけた。「あなたがこの洋館の呪いの原因なのか?」
玲奈の体を通じて語られるエルデリックの声は、低く冷たいものだった。「そうだ。私はかつてこの洋館の主だったが、裏切りに遭い、この地に封じられた。そして、私の怨念がこの場所を呪い続けたのだ。」
「なぜそんなことに…」藤本は声を震わせながら言った。
「私の家族も、全て失った。」エルデリックの声は悲しみに満ちていた。「だが、あなたたちが私を解放してくれたことで、私はようやくこの呪いを解くことができる。」
その瞬間、洋館全体が激しく揺れ始めた。ゴゴゴゴゴという音が響き渡り、天井からは砂埃が降り注いだ。
「何が起こっているんだ?」葵は恐怖に震えながら叫んだ。
「洋館が…崩れ始めている!」一輝は驚愕の表情で言った。「早くここから逃げなければ!」
一輝たちは急いで部屋を飛び出し、崩れ始める洋館の中を駆け抜けた。バサバサと天井が崩れ落ち、床が割れ始める中、彼らは全力で出口を目指した。
「玲奈さん、しっかりして!」一輝は玲奈を抱えながら叫んだ。
「私は…もう大丈夫。ありがとう…一輝さん。」玲奈はかすれた声で答えたが、彼女の体は次第に重くなっていった。
藤本と葵も必死に逃げ続けたが、崩れ落ちる瓦礫に阻まれていた。「早く、出口にたどり着かなければ…」藤本は必死に道を探しながら言った。
一輝は全力で玲奈を抱え、瓦礫を乗り越えながら進んだ。ドサッと天井が崩れ落ち、床がさらに大きな穴を開けた。
「もう少しだ…!」一輝は自分自身を鼓舞しながら、全力で出口に向かって駆け抜けた。
最後の瞬間、彼らはようやく洋館の外にたどり着いた。ガシャーンという音とともに、洋館全体が崩れ落ち、巨大な砂埃が舞い上がった。
一輝は地面に倒れ込み、息を整えながら玲奈の顔を見つめた。「玲奈さん、大丈夫か…?」
玲奈はかすれた声で答えた。「ありがとう…一輝さん。あなたのおかげで、私は…自由になれた。」
その瞬間、玲奈の体は光に包まれ、彼女の姿は次第に消えていった。彼女の最後の言葉が風に乗って一輝の耳に届いた。
「ありがとう…さようなら。」
一輝は涙を流しながら玲奈の消えゆく姿を見つめた。「さようなら、玲奈さん。」
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