「遥≪はるか≫さんにふさわしい男になる。そのために大学に合格するまで遥さんに合わない」

　そう決めた俺は、早々と部活を引退し、自分の持てるものすべての力を大学受験に集中した。

　その甲斐あって、俺は守備よく第一志望の大学に現役合格した。東京駅から電車で１時間ほどの郊外の町にある国立大学だ。

　早速合格の報告と共に、遥さんに改めて交際を申し込んだ。　

　ところが、もう彼女には将来のことを考える彼ができていた。五歳年上の同業者だそうで、どちらが遥さんと釣り合うかは考えるまでもない。

　「本当にごめんなさい」と謝る遥さん。

　しかしその態度は頑な≪かたく≫で、きっぱりと断った後は、二度と俺と会うこともしなかった。

　当然未練はあったが、彼女の幸せを考え、俺は断腸の思いで彼女への気持ちを振り切らざるを得なかった。

　かくして俺のキャンパスライフは呆然自失の状態でスタートすることになった。

　新歓の合コンなど、女性と知り合う機会は何度もあった。しかし遥さんに匹敵する女性などそう簡単にいるはずもない。

　時々、夜街を歩いてはオーラを発している女性に声をかけたりもした。

　例の能力のおかげで、俺のナンパの成功率は、あのイチローさんの打率をも大きく凌駕した。

　しかし、俺は、無用なトラブルを回避すべく、女性との関係は一人一回限り、本名を明かさず、連絡先も教えないようにした。

　でも、そういう女性と関係を持ったところで、遥さんを失った喪失感は埋まらない。

　こんな状態で、中学からやっていたバレー部に入部したこと以外は特に語ることもない１年が過ぎ、俺は２年生になった。

　２年生の春、俺は部活の先輩から家庭教師のバイトを紹介された。

　生徒は私立の女子高に通う、金子ひなたという、小柄ながらグラマラスでかわいい高校二年生だった。

　このひなたちゃん、俺のことがいたく気に入ったようで、一丁前にピンクのオーラを纏いながら、しきりとちょっかいをかけてきた。

　座ると半ケツがはみ出るような丈の短いショートパンツを履いたり、着古して襟ぐりがたるんだTシャツをノーブラで着たりして、俺の劣情を誘おうとする。

　さりとてこんな程度の小娘の色仕掛けに惑わされる俺ではない。なにせこっちはひなたちゃんの下心などお見通しなのだ。

　こんなことでせっかくの先輩の紹介のバイトをフイにしたくないので、俺は彼女の幼い誘惑を適当にあしらい続けていた。

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