『スキル:上位存在に無条件に愛される』を持ってしまった男の末路

seeking🐶

第1話 世界

 1000年前、人類は普通に魔王に敗北した。


 500年前には、そんな魔王すら天族が滅ぼしてしまった。


 そんな感じで人類は、1000年間敗北者として肩身の狭い思いをしてきた。



 現在、主に世界を支配しているのは魔族と天族だ。


 その二勢力は、大陸の9割近い領土を占め、熾烈な覇権争いを続けていた。



 人類はと言うと、何とかその小さな小さな領土を死守し、覇権争いをする二勢力でもギリギリ無視できないくらいの勢力を保っている。


 しかし、少しでも均衡が崩れようものなら、いますぐに滅ぼされてもおかしくないくらいの勢力だった。



 俺はそんな結構過酷な世界に生まれた。


 まぁでも俺は勇者でも貴族でもない。


 何の才能も持たない俺にとって、天族や魔族というのは無縁の存在だった。


 貴族のように領土を奪い合うこともなければ、勇者のように直接戦闘することもない。


 ただの一般人の俺にとっては、目の前のことが精一杯で、天族や魔族のことなんて本当にどうでもよかった。



 しかし、そんな俺でも普通の人間とは少し異なる点があった。


 それは俺のスキル『上位存在に無条件に愛される』だった。



 一般的なスキルと言えば『魔法を使える』とか『筋力が上がりやすくなる』とか、無難なものが多い。


 どんなに尖っていても、『勇者の力を使える』とか『人から好かれやすい』とかだ。


 それなのに、俺のスキルは『上位存在に無条件に愛される』という聞いたこともないスキルだった。



 そもそも上位存在ってなんだ?


 人類より遥かに強力な天族や魔族は、上位存在と言えるのか?


 それとも、もっと天族や魔族より上位の存在なのだろうか。



 まぁどちらにせよ、俺が生涯で天族や魔族に遭遇することはないはずだ。


 俺はしがないEランク冒険者で、主な仕事内容といえば清掃業務や低級モンスターの討伐ばかりだ。


 そんな仕事じゃ、どんなことがあっても彼らに遭遇することはありえないはずだろう。


 そもそも、天族と魔族は人間より個体数が少ないのだから尚更だ。



 うん……そう、思っていたんだ。


 この日までは、そんなことを考えていられた。


 それなのに……。

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