B-3 ベッドをめぐる攻防

いよいよ就寝だ。

遼馬の部屋で、誰がどこに寝るかの話し合いが始まった。



「どちらが遼馬と一緒に寝るか、じゃんけんで決めようよ」


北斗が言った。



「昨日はお兄ちゃんだったんだから、今日はあたしに譲ってよ!」


「嫌だね。公平なじゃんけんで負けるならまだしも、俺だって遼馬が好きなんだから、簡単には譲らないよ」


「いや、ちょっと待て! 俺の意思! 俺の意思大事じゃない?! 俺は、今日は蒼と一緒に寝たいよ!!」


遼馬が口を挟んだ。

この兄妹相手に受け身じゃダメだ。

大変なことになる。



「そうだよ! あたしと遼馬くんはもうラブラブの両想いなんだから、本当は、お兄ちゃんの入る隙間なんてないんだから!!」


「そこまで自信があるなら言うけど、今朝、遼馬とは…「アーーー!! ちょっとその話はやめて!! あれは事故だから!!」


遼馬は北斗の声を掻き消すように、かぶせて話した。



「いかにも俺がお邪魔虫みたいに言うけど、今朝の…「あれは!! ごめんってば!! 寝ぼけてたの!!」



蒼が急に不安げな顔になった。


「……遼馬くん……もしかして、お兄ちゃんとエッチなことしちゃったの……?」


蒼が、眉をハの字にする。



「それはっ……あのねっ……生理現象なの……仕方ないの……!!」


「現象は生理的だけど、状況的には俺が恋人であることが前提の行為だよね」


北斗が勝ち誇ったような顔で言う。



「お兄ちゃん酷いよ!! あたしより先に遼馬くんのあられもない姿を見るなんて……」


「俺の方が先に生まれたんだから、多少何でも早く経験するだろう」


「あたしが遼馬くんの初めてを奪いたかったのに!!」



……あれ?

なんか変だな。

蒼はどっちが先かにこだわってるだけで、俺が北斗と【自主規制】のは気にしてないの?



「はあ……わかったよ……。もう済んだことだし、仕方ないよね。あたしは、遼馬くんが気持ち良くなるためなら、お兄ちゃんに手伝ってもらうのも悪くないことだと思うの」


え?

手伝うって何?



「全ては愛しい遼馬くんのため! 遼馬くんファースト! 今夜は寝かせないぞ☆」


蒼はキャハ♡と笑って、抱きついてきた。

むにゅっとした胸の感触と石鹸の香りで、夢の国の門が開いた気がした。



「だってよ遼馬。がんばろうね」


と、北斗がニヤニヤしながら頭をなでてくる。


え、いや、うん、何が起こるのかな?

ラブコメってこんなんだっけ?


そして遼馬の思考はゆっくり停止した。



―― つづく…のか? ――

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