夏期講習中の北斗

遼馬と北斗は、夏休み中だけ予備校の夏期講習に通うことにした。

その期間中、北斗は遼馬の家に泊まり込むことになった。

なってしまったのだ……。



高校でも夏の課外はある。

昼過ぎまで高校で課外を受け、図書室に移動をして自習をし、夕方から予備校に行って夏期講習を受ける予定にした。

高校での自習は、蒼も一緒にすることになった。



「ねえねえ遼馬くん、ここどういう意味?」


蒼が遼馬に質問した。



「ああ……これ、どうしてこの答えになったの?」


蒼は少し考えてから、自分の解き方を遼馬に伝えた。

遼馬は、蒼の理解があやしいところを見つけて解説した。



「そっかぁ……わかった!」


蒼は理解できて喜んでいる。


机に、もちっ♡と乗っているおっぱいに気を取られないように教えるのは大変だった。

衣替えも終わり、薄着になった蒼のおっぱいは一層の存在感を出していた。



「遼馬、蒼に構ってると自分の勉強ができなくなるから、放っておいた方がいいよ」


北斗は相変わらず冷たいセリフを吐いた。



「遼馬くんは優しいから、放っておくなんてできないよねっ」


そう言って、蒼は遼馬の手の上に、白くて華奢な手を重ねた。

蒼が、えへっ、と笑う。

可愛いな……

世の中のカップルは常時こんな幸せ空間にいるのか……

別世界だ……



「俺、小学校の先生になりたいから、教えるの上手くなりたいんだよね。だから全然……いっぱい訊いてもらっていいから……」


確実にデレデレしているという自覚があった。



「そうなんだ! 似合ってるよ小学校の先生! 遼馬くんみたいな先生だったら、あたしももっと勉強がんばったのにぃ」


蒼がぷるんとした唇を尖らせて言った。


高校の先生を目指さなくてよかった……

蒼みたいなおっぱいに遭遇したら、いちいち理性を試されることになる。



「それは受かってからでもできるじゃん。落ちたら先生自体になれないんだから、そこは割り切って考えないと」


即、北斗に一刀両断される。

それは、そう……ですよねぇ……。



「でも、ほら、教えるとより身につくから! 蒼も遠慮しないで訊いていいからね……!」


夏期講習の1週間は、蒼とあまり一緒にいられない。

せめて自習の時くらい構ってあげたかった。



♢♢♢



夕方になり、予備校に向かった。

授業とは言え映像授業で、一人一人ブースに座ってヘッドホンをしながら勉強する。

遼馬は数学、北斗は現代文。

短期集中講座で苦手克服が目標だった。


さすが予備校の授業。

自分が何を勉強すればいいのかよくわかって、いよいよ受験生だという実感が湧いた。



授業を終えてスマホを見ると、母からメッセージが来ていた。


『ちょっとおばあちゃんの体調が悪くて、様子見てくるね。泊まりになるかもしれない』


おばあちゃんは80歳を過ぎていて、一人暮らしだった。

体調が悪い時は、大体母が泊まり込みで様子を見に行く。

そして、遼馬の父は、単身赴任中だった。



マ、マズイ!

北斗と二人きりじゃん!


遼馬は変な汗をかいた。



「遼馬、まだかかりそう?」


帰り支度を終えた北斗が近づいてきた。



「えーっと、だ、大丈夫。あ、あのね、母さんがちょっと仕事で遅くなるから、悪いけど今日はお弁当か、食べてから帰ってきてって……」


「そうなんだ。わかった。スーパーでお弁当にしようか」


「そうだね。うん」


「どうしたの?」


「か、帰ったらちゃんと復習しないとな、って!!」


そう、この宿泊は、あくまで勉強のためだから!!



「随分気合い入ってるね。あんまり飛ばすともたないよ」


と、北斗は笑って言った。

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