第1章 ガチャ開始

第1話 カイル追放

 いつも1人ぼっちのカイル・オリゲート。

 アラギリ領地にはいくつかの領地が分配されている。

 そこで1人ぼっちのカイル・オリゲートはトランプによるお金を稼ぐ為のギャンブルを行っていた。

 そして、人生最大の大負けをかましたのであった。


「うっはぁー」


 カイル・オリゲートはアラギリ領地の領主の息子だ。

 放蕩息子と呼ばれバカ息子と呼ばれている。


「はぁー」


 大きな溜息を付きながら、アラギリ領地にある領主の館に向かっていた。

 カイルの髪の毛を温かい風がよぎる。

 もう夏という季節だ。


 アラギリ領地には雪が降らない。

 だが四季はあり、雪は降らないが寒いものだ。


「でだ。お前はバカなのか?」


 目の前に仁王立ちしている男性こそが、親父ことガイバ・オリゲートであった。


「今日をもってお前をジスタ領地に追放する!」


「は、はぁああ、あそこは滅んだ領地だろうが」


「あそこは母さんの思い出の土地だ。お前を追放して、そこで朽ち果てて死後反省してもらう」


「お、親父、死んだら反省も何もないぞ」


「うるさああああい」


「は、はい」


「とにかく、追放追放追放だ」


「だかっらさ、親父、次のギャンブルで勝てば、今までの借金を返せるぜ」


「その借金の肩代わりがわしだぼけええええええ」


「は、はは」


 領主の館の領主の部屋にいる訳だが。

 親父だけではなく、1人のメイドと1人の執事がいた。

 メイドはリラ・メイド長と呼ばれている。

 一応幼馴染ではある。

 黒いロングヘアーにメイド服を着用し、すらりと長い足と、透き通るように白い腕。

 腰にはサーベルが装備されており、彼女がサーベルの達人だという事が明確に表れている。


 一方でその隣に控えるのがジーバ執事長だ。

 褐色の肌をしており、奴隷市場から救い出した訳だが。

 一応魔法の達人でもある。

 後、頭がとても良い。


 一応ギャンブルで勝ち取ったわけだが。


「お待ちください」

「閣下」


 2人が声を揃えて話し出した。


「カイル様はどこかがバカなのです。ですが、1人でジスタ領地追放は御可哀そうですわ、ここは私も同行を許してください」

「カイル様は命の恩人です。このジーバ、カイル様を厚生させて見せましょう」


「お、お前達はなんていい奴等なんだ。カイルよ、ジスタ領地を3人で復活させろ」


「お前はバカなんですか」


「バカ息子に言われとうないわ」


 親父は歪な笑顔を向けて、俺を一発ぶん殴ったのであった。


 目が覚めると、空が見えた。

 星々が見えた。

 月が見えた。

 沢山の巨大惑星が見えた。

 あそこには別な生き物が住んでいるんだろうか。

 青い青い惑星。

 それをアースと呼ぶ事を俺は知っている。

 そこに行けた人はいない。


 かつて遥かな山を目指し、遥かな宙を目指したとされる伝説のメロムとメロカという物語があるくらいだ。


「で。ここは?」


「そうね、ジスタ領地よ、カイルが眠っている間に馬車で強制追放よ」


「閣下は容赦がありませんね」


「いや、リラとジーバありがとうな」


「まぁ、カイルはしょうがないですから、ここを復活させれば見直して貰えるでしょう」


「このジーバ、カイル様を教育しなおさないといけません」


「俺は魔法なんて使えないからな」


「なら剣術はどうですか」


「出来る訳ねーだろうが」


 カイルは腕組みをしながら辺りを伺う。

 朽ち果てた建物。

 枯れた土、そして枯れた作物。

 住民はおらず。


 一応領主の屋敷があるくらい。

 それも今か今かと崩壊しそう。


「カイル、あなたの父親は1週間分の食料と作物の種を置いていったわ」


「あいつ馬鹿なのか、1週間で作物が実る訳ねーだろ」


「ここは狩りをするべきかと」


「見ろよ辺り一面荒野だぞ。どこに動物がいるんだよ、モンスターだっていやしない、ここが母さんの思い出の地だとはとてもとても思えないな」


 カイルは頷く。

 母親は病死している。

 ジスタ領地には母親の墓がある。


「ダンジョンなら一杯あるのにね、ここ」


「誰がダンジョン攻略すんだよ、冒険者じゃあるまいし」


「はぁ」


 リラメイド長が大きな大きな溜息をついた。


 カイルは人生で頑張った事がない。

 本を読む事すら面倒。

 剣術を学ぶ事すら面倒。

 魔法を学ぶ事すら面倒。

 唯一好きなのがギャンブル。


 だが、カイルは気付き始める。

 そんな事を言っている場合ではないのだと。


「たくよージーバ畑の耕し方教えろよ、リラは領地の屋敷で使えそうな物を探してきてくれ」


「このジーバ、畑の耕し方をご教授しましょう」


「まかせてよ、今にも崩れそうな領主の館にいってくるさ」


 それから領主の館から見つかったクワを使用して畑を耕した。

 何度も何度も手に豆が出来るまで。

 それが100回になろうとした時だった。


【スキル:ノルマガチャ習得】


「はい? ジーバ、俺は今スキルを習得したみたいだぞ」


「おめでとうございます、で何を?」


「ノルマガチャらしい」


「聞いた事がありませんねぇ」


 ジーバは細顔でありながら頑丈そうな腕まくりをしており。

 こちらを見ていた。


「ふむ、鑑定スキルを使用しましたが、ノルマガチャの説明は一切ないですね」


「そうかー」


【ノルマガチャはノルマを達成すると、1回のガチャを使用出来ます。よって【100回クワを使用する】をクリアしたので、ガチャを1回使用出来ます。こちらは神の声という物です】


「えーと神の声という人が、ノルマガチャの説明をおっぱじめたぞ」


「か、か、神の声だって、聞いた事がありませんねぇ幻聴じゃないんですか?」


【失礼ながら幻聴ではないです】


「違うみたいだな」


 カイルは腕組しながら。

 ノルマガチャを意識的に使用する。


 するとタンスくらいの大きさの箱が出現した。

 箱が回転を始めると、1個の玉が落下してきた。

 その玉を掴むと、頭の中に情報が流れる。


【S 級=伝説のクワ:振れば振る程持ち主が強くなる】


 玉を開けると。

 中から面積的におかしいだろと突っ込みたくなるクワが出現する。


 玉の大きさは卵くらい。

 だが、出てきたのは、普通のクワの大きさと同じ銀色のクワ。


「とりあえず使ってみるか」


「見た事ないスキルですねぇ」


 ジーバ執事長が腕組みをしながら頷いている。


「つまり、何かしらのノルマを達成すれば、その玉が出てきて、色々アイテムを習得出来ると」


 リラメイド長が目を輝かせながら呟くと。

 カイルもうなずいた。


「これはチャンスだ」


 かくして、カイル・オリゲートのガチャで領地開拓が始まった。



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