第14話 壊れた未来

銃声が響いた後、現場は一瞬の静寂に包まれる。片桐俊介はエミリーをかばい、彼自身が撃たれてしまった。しかし、彼の未来を視る能力が再び彼を救う。警察が犯人たちを取り押さえる中、俊介は痛みに耐えながらエミリーの無事を確認する。


エミリーは涙を流しながら俊介に駆け寄り、「俊介さん、大丈夫ですか?」と心配する。俊介は微笑みながら「俺は大丈夫だ、君が無事で何よりだ」と答える。彼は自分の傷が重いことを理解しつつも、エミリーの安全が最優先だと考えていた。


その後、警察がウィリアムズ副社長とミラーを逮捕し、プロジェクトXに関する全ての陰謀が明らかになる。副社長とミラーは会社の機密情報を利用して巨額の利益を得ようとしていたことが暴露される。


俊介は病院に搬送され、一命を取り留める。エミリーは彼のそばに寄り添い、感謝の言葉を述べる。「俊介さん、あなたのおかげで私は助かりました。本当にありがとう」と涙ながらに言う。


俊介は微笑みながら「君が無事で本当に良かった。これからも自分の力を信じて、前に進んでいってほしい」と答える。


エミリーは彼の言葉を胸に刻み、新たな決意を固める。彼女はプロジェクトXのデータを正しく利用し、会社の未来を守ることを誓う。


俊介は回復し、新たな依頼に向けて動き出す準備をしていた。しかし、彼はエミリーとの最後の会話の中で、彼女から意外な告白を聞く。


「俊介さん、実は…私はあなたが見た未来のビジョンを知っていたのです。あなたが未来を視る能力を持っていることを知ったとき、私はその力を利用して真実を暴こうと決めました。」エミリーは静かに語る。


「何を言っているんだ?」俊介は驚きながらエミリーを見つめる。


「私はあなたの能力を信じていました。でも、それだけではなく、実は私自身も未来を視ることができるのです。私たちの出会いは偶然ではなく、運命だったのです。」エミリーは微笑みながら続けた。


俊介は一瞬、言葉を失った。彼女も未来を視る能力を持っていたという事実に驚きを隠せなかった。しかし、その瞬間、全てが繋がったように感じた。


「だから、私たちはこの事件を解決できたんだ…」俊介は静かに呟いた。


「そうです。あなたと私は、未来を変えるために出会ったのです。」エミリーはそう言い、俊介の手を握った。


しかし、その瞬間、エミリーの表情が急に険しくなった。


「でも、俊介さん。あなたが視た未来には、私の存在がなかった。私たちの力を合わせても、未来は変わらないのです。」エミリーの声には絶望が滲んでいた。


「何を言っているんだ?私たちはこれからも…」俊介が言葉を続けようとした瞬間、彼のビジョンが突然変わり始めた。未来のビジョンが再び彼の頭の中に広がり、そこにはエミリーが倒れている光景が映し出された。


「どうして…?」俊介はショックを受けながら、そのビジョンの真実を理解しようと必死だった。


「私たちの力では未来を変えることはできなかったのです。結局、運命には逆らえない。」エミリーは涙を流しながら言った。


その言葉の後、俊介のビジョンは完全に崩壊し、彼は現実に引き戻された。エミリーが目の前で倒れる光景が現実となり、彼はその無力さを痛感する。


エミリーの死によって、俊介の心には深い傷が残った。彼は自分の能力が何の役にも立たなかったことに絶望し、探偵としての道を閉ざしてしまった。


「俺にはもう何もできない…」俊介はそう呟きながら、暗い未来に向かって歩き出す。


彼の未来を視る能力はもはや希望ではなく、絶望の象徴となってしまった。彼はエミリーを救えなかった罪悪感に苛まれながら、壊れた未来の中で生き続けることを強いられた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る