第37話 新生王国連合軍
ブルーム辺境伯領の城塞都市において、フリードリヒ国王、キルケ妃らが見守る中、集結した部隊を前にしてアウグストによる演説が行われていた。
「我、ブルーム辺境伯アウグストは、王都奪還をもって統な王権をフリードリヒ現国王より譲り渡されることとなった。
王位の正当性は我々にある、よって我々は反乱軍ではなく、我々こそが王国軍だ。
我々には、聖都ユグドラシルの女王、精霊王へカティア様からの支援が約束され、そして
よって我々は、この時をもって『新生王国連合軍』と名乗ることとする。」
アウグストはそう宣言した。
「これより我は、正統王位後継者アウグスト=ローゼンブルク第一王子として、神聖王国連合軍を率いて王都を奪還する。
これより王都への進軍を開始する!」
「「「「おおーー!」」」」
アウグストの号令により、新生王国連合軍の進軍が開始された。
ーーーーーーーーーーー
王都、執務室にて、アーサー国王代理の前に宰相サイロスが報告に上がった。
「国王代理に報告があります。
ブルーム辺境伯領に忍ばせていた密偵から報告がありました。
ブルーム辺境伯が、フリードリヒ国王の正統後継者を名乗り、新生王国連合軍を名乗る部隊を率いて王都への進軍を開始したとのことです。
その数8000余との報告が来ております。」
その報告にアーサーは言った。
「ずいぶん多いのではないか?
諸侯の一部が裏切ったということだな。
まあよい、
それよりブルーム辺境伯が、王が若い頃に作った隠し子であることは内々には聞いて知ってはいたが、正統性は私にあるということで良いのだな?」
何を白々しいことを...
サイロスは心の中で悪態をつきながらも答えた。
「亡くなったフルードリヒ国王の隠し子だなど誰が証明出来ましょう。
残されたアーサー第一王子が正統後継者といえましょう。」
「そういうことだサイロス、早急に可能な限りの騎士団を向かわせろ。
王、それにラヴィーネとエレナは絶対に逃すな。
奴らが全員死んだ時に、私は新国王を宣言する。」
サイロスは、その名前を聞き、言いにくそうに報告した。
「そのことですが...
報告が遅れましたが、死んだと思われていた フリューらしき人物が目撃され、それが賢者、聖女と行動を共にしていると...」
「なんだと、フリューはアイリスが殺したんじゃないのか?」
「密偵の情報では、どうやらフリューたちは先に辺境伯領を離れたとの事です。
現在の行方は分かっておりません。」
「行き先は追えていないのか?」
「なにぶん相手が相手なもので、
ただ方向だけは。
それが魔王領に向かったとの報告です。」
アーサーはイライラしつつ指示を出した。
「反乱軍に賢者ラヴィーネがいないことは好都合だが、奴らは必ず現れて俺の邪魔をするはずだ。
用心のため反乱軍の討伐に2万、いや3万を向かわせろ。
フリューは絶対に殺せ!」
「かしこまりました。」
こうして総勢5万の王国軍のうち3万の派遣が決定された。
ーーーーーーーーーーーーーーー
それから5日後、連合軍は大森林を迂回した渓谷付近に辿り着いていた。
その場所は向かって右側が魔王領の森、左側が渓谷の谷になっていて、平地は幅は数百メートルほどに狭まっていた。
その地に到着する3日前、リンがフリューたちからの伝令として一人で連合軍に合流し、アウグストに伝言を伝えていた。
「リン、言われたとおりこの地に陣を張ったが大丈夫なのか?
若干狭まってるからと言って平地で多数と対峙することは分がわるいぞ。
偵察部隊の話では、相手は予想外に多い、俺はもっと待って仲間を集めた方がいいと思うんだがなぁ。」
アウグストからの疑問にリンはラヴィーネから渡された紙を見ながら説明した。
「私は賢者ラヴィーネからの伝言をそのまま伝えるだけです。
『援軍は必ず駆けつけるからここで待ってなさい。』以上です。」
「賢者のいうことは信じるけどよ。
でも援軍ってどこの誰だよ。
それくらい教えてくれても良いんじゃないか?」
リンはラヴィーネからの紙を再度見た。
「『密偵がいるから援軍のことは話せない。』以上です。」
「リン、お前、援軍が何か知ってるだろ?」
「...以上です。」
援軍がバレたら大混乱するくらい私にもわかるわ...リンは苦笑いをアウグストに返した。
「なんとか凌げると言っても数刻だぞ。
それまでに援軍が来なければ終わりだ。」
「以上です。」
「ちぃ、仕方ねえなぁ。信じて待つとしよう。」
それから数刻後、連合軍8000と王国軍3万が対峙していた。
近衛騎士団長オクトが意見具申をした。
「アウグスト様、右側の森にエルフの弓兵を忍ばせて伏兵としてはいかがでしょう。」
アウグストは難しい顔をして答えた。
「それはダメだ、あの森には魔王軍の残党がウヨウヨいるらしい、刺激して二面を相手にしなければならない危険がある。
それより母上が魔法でバーってやっちゃってくれれば良いのだがな。」
「それは仕方ないでしょう。
フリードリヒ王が敵側の最優先の標的である以上、最大の戦力でお守りする必要がありますから。」
フリードリヒ国王とキルケ妃は、戦場からはるか後方に離れた場所にいた。
「そうだな。ないものは仕方がない。
ここは時間を稼いでフリューたちを信じて待つ。
母上がつけてくれたエルフの魔術師と弓兵を前面に出して、遠距離攻撃で時間を稼ぐぞ。
俺も精鋭部隊を引き連れて揺動をかける。」
「かしこまりました。私もお供しましょう。」
とオクトが言った。
間も無くして戦端が開かれた。
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