𐎢‎𓊆87録𓊇𐎽 幕間


4年目になって、レコーディング祭りからは解放されてきて、たまにレコーディングの仕事が入るだけになった。


あまりにも激務だったもので、その激務の元を可能な限り多めに取ろうと考えて、2期生全員で中抜きの額を減らして、アルバムとシングルの売上を高めに還元しろって何度も言ったら、売上の20%をくれるようになった。オリ曲の作詞作曲の印税とは別に、売上の中の利益のうちの20%を渡してくれたのは凄い嬉しかった。


……………出来ることなら、交渉無しでも渡して欲しかったのが本音なんだがな。


会社経営は金掛かるから、あまり多くは渡せないと懇願されたので。私達も鬼ではないのと、そういう事情も分かっているので、経営が成り立つ程度には普通に頂いております。


そういうことをやっていても、一般人よりも華やかな生活してるんだろうし。めっちゃ大きい家と高い車を抱えているのに、それでいて金欠アピールはみっともないな………と、正直なところ思った部分もあった。


2期生の初任給の次の給料…………手取りで20万行かなかったから。ギリギリまではいかなくとも、仕事量の割には……って思うと思うところしか無かった。


それがあったからこそ、仕事を詰め込まないと自己投資に回す金すらも無いってことで、色々やらざるを得ない状況だった。



その頃は社長も高級車ではなくて、中古のワゴン車をファミリーカーとしていて、ファミリー向けの賃貸マンションを借りていたくらい。


そう考えると、本当に大きな会社になっていたな………って思う。弱小事務所から、社長、社員、演者の全員で大手と呼ばれるまでに大きく出来たという………


社員としての仕事もやらしてもらっていたのと、仮に演者やめても………最悪引退して一般職になりたいとしても、その時の業務実績から、演者としてではなくて、普通に正社員として職歴が残るようにしてくれたのも良かった。


マネージャー、私、ディレクターみたいな並びで事務室のパソコンに向かい合って事務処理していたのが懐かしいな。


VTuberが普通に電話で取引先の応対をしていたり、ゲーム配信についての権利関連の擦り合わせもやったり………


ゲーム配信をやるとなったらば、人が足りないということで、自分自身で問い合わせのメールを送って、自分達で完結させてからの配信という事になる。



ガイドラインがあるものが多くなっていた時代だったから、そこまで面倒な事では無かったけども………企業としては、勝手に沢山の利権が絡んでいるようなコンテンツを無断で使うのはリスクがあるため、どうしてもワンクッション入れないと駄目。



ここまで裏方業務をやっていたのに、演者としての配信をやれば、事務所にある程度の中抜き……マネジメント料の天引きがあるというのは、よくよく考えたらブラックだな。


自分達でほぼやっているのに、収益の3割4割剥奪されているようなもの。会社経営の資金としても必要だとしても…………


やりがい搾取というのは、こういうことも入るのだろうと、今になって思ったりもする。


ただ、社長自身も自らをやりがい搾取しているような状態だったので、CRY.STi⟬A⟭LLIZATIONという会社の名を付けた化け物によって全員が蝕まれていたような環境だった。


CRY.STi⟬A⟭LLIZATIONというモンスターを全員で攻略していたのが、CRY.STi⟬A⟭LLIZATIONが伸びる前の話 ………伸びてからは、全員が伸び伸びと活動しながらも、収益沢山入ってきて、本当に楽しかったな〜って思うことしかない。


我武者羅に働いていた時代も勿論楽しかったが。手取り30万、月の残業代60時間、そこに配信時間やら何やらが乗っかってくる。給料は変わらない…………


しっかりとブラック稼業だった。良い社会人経験を積めたとは思える。新卒の会社を数ヶ月で辞めてしまって、一応は第二新卒扱いだとしても………って思っていたところの、正社員としての業務もこなすことが出来たから、本当に良い社会人経験になった。


楓夏依は、学業も入っていたから大変だよな………講義ずっと寝るのは仕方無いと分かっていたので、2期生全員で楓夏依の課題手伝ったりしていた。


楓夏依が配信している時に、楓夏依のマネジメントをしながらも、カナエの大学のレポートを私がまとめるとか。


20万人まで耐久配信をやることになって、5時間くらいで達成した!っていう時の裏側は………2期生の残り3人で楓夏依の大学の課題を全員で終わらせるという。


学業優先と言いながらも、結局は仕事優先になってしまっている。学業優先という体裁を保つために、同期の年長3人が同期の末っ子大学生の課題を片付けるという………


その時は楓夏依の奢りで飯を食いに行ったね。無駄に偏差値高い大学に入っていたものだから、課題をこなすのが本当に大変だった。


慶應出ている社長にもサポートしてもらいながらということもあった。社長自身が演者のサポートのために演者の大学の課題の手伝いをする、他の事務所では聞いた事のない協力プレイが行われていた。


耐久配信をやるように仄めかしていたのが社長自身というのもあるから、演者が仕事に集中できるようにケアをするのは当然だろう。というのを2期生全員で半ば脅して課題に取り組ませたこともある。

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