あしたてんきにならないで

長い曇りが一転して晴れた日。彼女からの話があった。

こっぴどく振られた。

俺の心情とは裏腹に、太陽は輝かしく照りつけていた。雲一つもなく。

その姿に。

その姿に、ここ最近の空模様に、彼女が重なった。

俺から離れた彼女はきっと、すがすがしい気持ちで、明るく輝いて。

明るく輝いて、人々を照らしていくのだろう。

俺みたいな、冴えない灰色の男に邪魔をされずに。

でも。

太陽に逃げられた俺はどこへ向かえばいいのだろう。

風に吹かれるまま、少しずつ身も心も冷たくなる。

気がつけば、涙が流れていた。

いつかやむはずの涙。その時だけはとても長く感じた。

それから、周りの暖かさに包まれても。

そこに溶け込もうとしたせいで。

俺は、俺というかたまりは。

少しずつ小さくなって。

どこかへ消えたように。

誰からも、見えなくなってしまったのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る