Reばいばる ~あなたのお宝買い取ります!~
@anagumachan60
第1話 ご用件は買い取りですか?
明るい室内にゆったりとした心地良いラウンドミュージックが流れている。
穏やかな空間。デスクに置かれたマグカップにはコーヒーではなく小さな観葉植物が
入っており、根元には500円玉程の小さな人形が2体添えられていた。
「さてと、これがラストだな。」
静かに呟く男が一人。何かを手に取り真剣に見つめ始めた。
白い手袋をはめた両手でじっくりと「それ」を観察する。
回して、ひっくり返して、においを嗅ぐ。淀みなく流れる動作に
彼の職人としての技量と信念が伺える。
「ん、これは何だ?」
男が何かに気づき、作業灯に「それ」を照らしつけると、水色のボーダーを
あしらった真っ白なパンツが露わとなった。
彼が手に取っていたもの――――それは女の子の人形……いわゆる
美少女フィギュアであったのだ。
そして、彼の人差し指は真っ直ぐ、一直線に「それ」の臀部へと吸い寄せ
られてゆく。彼の指がスリスリと曲線を撫でると「ふぅ…」と小さな吐息が零れた。
「汚れじゃなくて、ゴミが付いていただけか。」
そう言って持っていたフィギュアをカウンターに置くと、カタカタとPCに何かを
入力し、書類がプリンターから印刷されて出てきた。そして―――
「お待たせ致しました。『うさぎ』札でお待ちのお客様、準備が整いましたので
お手数ですがカウンターまでお越し下さい。」
と、マイクによるアナウンスを始めた。
すると、アナウンスをして数十秒もしない内に、カウンターを挟んで彼の前に
『うさぎ』札を持った一人の〝お客様〟が現れた。
男はお客様にニコリと笑顔をむけると、
「本日は当店『グッドスマイル』にお越し頂きありがとうございます。」
と深々と頭を下げた。
「お客様がお持ち頂いた『マッチョちゃん』の美少女フィギュアと『シンデレラ
ライブ』のプライズフィギュア3点の計4点で6,000円の買い取りになります。」
と印刷した書類を提示しながら、買い取りの内訳について説明を始めた。
そう、この物語はサブカルグッズ買取販売店『グッドスマイル』で働く男、
黒崎 一平(31歳)アルバイトの正社員への昇進を描いた、恥と涙と努力を
描いたハートフルストーリーなのである!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます