第23話 幸の話

23-1.幸の話


4月のある日、幸は極楽学園の小学4年生の道徳の時間を担当していた。

幸は、量子コンピュータでアウルと共に独学で勉強し、通信教育で教師の免許を取っていた。そういう意味では、幸は、極楽学園の本当の一期生と言うことができた。

それに、サンと幸の子供、美智も、極楽学園に入れられ、他の学園生と同じように育てられていた。

さすがに幸は、極楽学園の教育に関心を持たざるを得なかった。

しかも幸は、学園の副理事長であり、「お母様」と呼ばれていた。

幸は、イスに座っていた。前には、机は無かった。

学園生は20名程だった。その後ろには、同じ位の数の教師が、幸を注視していた。

「皆さん、こんにちは」

「お母様、こんにちは」

学園生が一斉に返事をした。

「皆さん、一生懸命勉強していますね」

「はーい」

「皆さんは、優秀な先生方やスタッフの方に、支えられ、またアウルと一緒にコンピュータでの学習も進んでいます。

皆さんは、自分が思っている以上に、勉学が進んでいます。でも、それだけではだめです」

幸は、学園生を見まわした。

「皆さんは、お父様の期待にお応えしなくてはなりません。ちゃんと勉強し、学園生として立派になるのは当然ですが、さらに大切なことがあります。

学園生はすべて、貴方たちの兄弟です。兄弟を絶対にいじめてはいけません。兄弟を助ける人にならなくてはなりません。お兄さん、お姉さん達は、社会に出ていろんな職業につきます。勿論お父様が十分な配慮をしてくれます。ある人は商社マンになり海外を飛び回るかもしれません。また研究者になるかもしれません。車の運転手になる人もいるでしょう。守衛になる人もいるかもしれません。お兄さん、お姉さんがどんな職業についても、

決してバカにするようなことがあってはなりません。

もし、卒園生で困っている人があったら、どんなことがあっても助けてあげなくてはなりません。それが、極楽学園の精神です」

幸は、真剣な学園生に語りかけた。

「皆さん、わかりましたか」

幸は、にこやかに問いかけた。

「はーい。わかりました」

学園生が一斉に返事をした。

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