第11話 人手が増えた

「アイツはセリがするよりも早い動きだな」

「一言多いよ。私がするより、ってなに?」

「その通りだろ」


 確かに私ではあんな簡単にはいかない。

 さすがライオン。腕力もあるのだろう。

 強くてカッコいいところもライオンの魅力だよね。


「終わったんだが、これでいいのか?」


 ライオスがきれいに半分にした木を担いで持ってきた。

 

「うん、バッチリだよ!よし、ラビ達のところに戻ろっか」

「だな。アンタ……ライオスも来るか?」

「俺もいいのか?」

「もちろんだよ。というか、来てくれると助かるな〜みたいな……」


 私は俯きつつ答えた。

 だってよく考えたら材料運べない。ヴォルフだけだったら。いや、私もいるけれど持てないからな。

 そんなに手伝ってもらうのも良くないとは思うのだけれどね。


「うむ、分かった。手伝うと言ったからな。戻った方がいいならそちらに行く」

「頼っちゃってごめんね。お願いします」

「気にするな。これを持っていけばいいんだな?」


 ライオスはそう言いながら、木をヒョイっと持ち上げた。

 持ってくれたからあと二つだけになっている。

 私はその二つを持ち上げた。


「セリ、大丈夫か?」

「大、丈夫!ヴォルフ、お願い」


 来た時と同じように背に跨った。

 ライオスはその横を歩く。

 ヴォルフはそれに合わせて進んでいるみたいだけれど、合わせなくても良さそうなぐらい全然疲れを感じさせない。


「着いたぞ」


 その声を聞いて私は背から降りた。


「なるほど、ひよこが沢山いる場所があったのか」

「そうなんだよね。だから心配になったというか……」


 話しているとラビが近づいてきた。


「ちょっとアナタ誰よ?それに、その耳としっぽ!」


 ライオスを指差して言った。

 そうか、急に連れてきたからなあ。警戒するのも無理はない。


「俺はライオス。ライオンの獣人だ」

「ら、ライオンですって⁈」


 ラビが震え出した。やはり怖いのかな。元いたところでもそうだったし。物語でもそんなふうに描かれていた。


「ラビ、ライオスは優しいから大丈夫だよ」

「そ、そうよね。ライオンだからって怯えてちゃだめよね……よ、よろしく」


 震えながらも手を差し出すと、ライオスがラビの手を握る。


「ああ俺こそよろしく頼む。君に危害を加えるつもりはない。仲良くしてくれると嬉しい」

「分かったわ……私はラビ。ライオスって呼ばせてもらうわね」


 和解したみたいだな。

 そうだ、ひよこは大丈夫なのかな?


『あ、あの、ライオスという方は本当に優しいのですか?』


 やはり怖かったのだろう。

 私に聞いてきた。


「大丈夫だよ。ひよこのために作業するって言ったら手伝うって言ってくれたんだから」

『そうなのですか?』

「うん。怖くないよ」


 ひよこと話しているとライオスが近づいてきた。


「なにか言っているのか?」


 そうか、私以外にひよこがなに喋っているのかは分からないのか。


「えーとライオスに怯えてる……かな」

「そうか。やはり俺は、ライオンは、怖がらせてしまうのだな……」

「私は好きだけどねえ。ライオン」


 たてがみもカッコいいし、毛ももっふもふだし。いいとこづくしだなあ。


「そう言ってもらえるのはありがたいが、怖がられているからな」


 どこか悲しそうだ。ライオンの獣人というだけで毛嫌いされてきたのかもしれない。


「じゃあ、怯えるより慣れろってことで!」


 私は先程まで話していたひよこを、ライオスの手のひらに乗せた。


『な、なにを⁈』

「触ってもらったら人柄もきっと分かるよ」


 人柄、でいいのかは微妙だけれど。獣人ってどちらに分類されるの?

 いや、どちらだっていいか。だって、意思疎通ができる。それなら伝わるよ。

 他の動物の言葉が分からなくたって、私が通訳すれば解決する。

 ん?そうか、もしかして……


「せ、セリナ。俺はどうすれば?」


 話しかけられたので私は先ほど考えていたことを、一旦置いておいた。

 ライオスがひよこをどうしたらいいか分からず慌てている。

 

「撫でてみて、優しくね。自分の思う倍は優しく、ね」

「あ、ああ」


 ライオスはそーっとひよこに手を伸ばした。

 そして撫でる。


「ふわふわしているな……」


 小さな声で呟いた。

 きっと初めて触ったのだろう。私も初めてはそう思ったな。


『優しすぎて少々くすぐったいですね……ですが、彼が悪い獣人ではないと知ることができました。ありがとうございます』

「ふふっ、分かってもらえて良かったよ」

「ひよこはなんと?」


 ライオスは首を傾げる。


「優しすぎてくすぐったいって」


 私はそのまま伝えた。


「そうか。痛がっていないのならいい」


 ライオスは微笑んだ。

 イケメンなんだよねえ。ライオンだって分かっててもドキッとしちゃう。

 というか、ライオンだからこそなんだけれど。まあ、耳と尻尾がぴょこぴょこ動くのは可愛いかも。


「セリナ?顔が近いようだが……」


 ライオスが顔を近づけてきた、ら


「な、なんでもないよ⁈ほら、作業しよ!ね!」


 顔が赤いのは君のせい。そんなことは言えない。

 よし、作業しよう。そうしよう。

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