第3話 冒険に出る
「ねぇ、セリ。セリはうさぎが好きなの?」
「うさぎも好きだけど、もふもふしたもの全部好き!」
「そ、そうなのね」
興奮して顔が近くなりすぎてしまった。もふもふを語る時にはついそうなってしまうのが私のだめなところである。友人にも注意されたことがあったのだった。
直そうと思って直せることではないのでどうにもならない。
「あっ、ごめんね?」
「いや、いいわよ。セリはもふもふしたものが全部好きなのね?それなら森に行ってみるのはどうかしら!もちろん危険もあると思うけど…」
「森?そこにはどんな動物がいるの?」
「そうねぇ、私の天敵がいるわ」
ラビがギリっ、と歯軋りが聞こえてきそうな険しい顔をして言う。
そんな顔をするほど嫌なのだろうか。うさぎの天敵っておとぎ話とかでよく出てくるあの動物だったりするのだろうか。
「天敵って、なんの動物?」
「オオカミよオオカミ!あいつはいっつもうるさいから嫌なのよ!」
「オオカミ⁈この世界にはいるの?本当に⁈会ってみたい!もふりたい‼︎」
ラビのいう天敵はやはりオオカミだった。日本ではもう見られない動物。
童話か昔のことを書いてある本でしか見たことがなかった。
それなのに、この世界にはいるだなんて会ってみたいし触ってもみたい。
私の探究心は抑えられない。
「はぁ……セリがそう言うなら案内するから行きましょうか。それと、他の動物もいるけれど長らく探索したい?
「うん!探索したい!」
案内してくれるというのならもちろん色々な動物を見てみたい。
この世界のことは私には分からないことだから、ラビの申し出はとてもありがたいことだ。
彼女に案内してもらえるのなら私が実際に見たことのないものにも出会えるかもしれない。
「分かったわ。じゃあ、私は家に帰って必要なものを取ってくるから。少し待っていて。動いたらダメだからね!」
「それは良いけど……すぐそこなの?」
「えぇ、あそこよ」
ラビは前の方にある小さな家を指さした。
「あんな小さなところなの⁈」
「失礼ね!小さくないわよ!」
「そ、そうだよね……じゃあ、私は待ってるね〜」
私がそう言うとラビは走っていった。
小さな体でぴょこぴょこしていて、とても可愛い。
うさぎをあんなに触っても嫌がられないなんて感動だ。
だって、動物園で働いてた時はうさぎの飼育員にはなれなかったし。
幸いにもこの世界にはもふもふが、いっぱいだとラビが言っていた。
異世界転生も悪くはないのかもしれない。転生という言い方で合っているのかは微妙なのだけれど。ってさっきも同じこと考えていた気がする。
なんてことを考えてたら、ラビが走ってきた。
「セリ、準備できたわよ!行きましょう!」
「うん。それは分かったんだけど……その二、人?は?」
私はラビの隣にいる二足で立っているうさぎを見た。どちらももふもふそうで触り心地が良さそうだけれど。いったい誰なのだろうか。
「初めまして、私はビット。この子の母親です。こちらが……」
「僕はギーウ。ラビの父親です」
両親だったのか。やはり両足で立って喋るようだ・
今はそうではなくて、挨拶しないと。
「初めまして、セリナです。ラビとはさっき仲良くなりました」
「私共も先程聞きました。ニンゲンに会えたと嬉しそうに話してくれたのです」
「それでそのニンゲンと冒険に行くと」
いけないことなのしれないと一瞬で考えついた。
知り合ったその日に一緒に冒険だなんて親なら不安になっても仕方ない。
むしろ防犯意識が高くて素晴らしい。
「すみません。私が行きたいと言ったので、ラビを責めないでください」
頭をさげて言う。
私のせいでラビが責められるのは嫌だと思ったからだ。実際、行きたいと言ったのは私の方だし。
「責めるだなんてとんでもない!ラビがあんなに嬉しそうにしているのを見るのは久しぶりなので私共は喜ばしいのです」
「ですから、素直に物事を言えないうちの娘をどうか冒険に連れていってください」
ラビの両親にそう返された。
「もちろんです!それに、娘さんを危険な目に合わせたりは必ずしません!」
私は胸を叩いてそう誓った。
こちらで初めてできた友達なんだもの。危険な目に合わせてたまるものか。
「ありがとうございます。では、ラビをよろしくお願いします」
「はい!」
ラビが口を開いた。
「お父さん、お母さん冒険に行くの許可してくれてありがとう!私、セリと一緒に成長して帰ってくるから!」
「えぇ、頑張るのよ!」
「行ってらっしゃい」
私とラビは手を振って歩き出した。
この先どうなるかは分からないけど、楽しいことが待ってるといいと思う。
沢山のもふもふに会いに行くという決意を胸にラビと進みだした。
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