第3話 バズってる

 ミラクルハートを助けた翌日、俺の朝は早かった。


「お母さんは……もう行ったか」


 いつものことだけど、相変わらず朝から早いものである。

 俺はキッチンへと向かい、冷蔵庫にあるもので簡単な朝食を作った。その際に優奈ゆうなが起きたようで、今リビングにいた。

 俺は朝食を皿へと盛り、リビングへと向かった。


「おはよう、お兄ちゃん」


 桐山優奈。黒髪のショートヘアをしている。配信のサポートをしてくれる俺の自慢の妹である。


「おはよう。朝食なら今出来たぞ」


「ありがとう、早速食べようか」


 俺は机に朝食を置いて椅子に座った。


「「いただきます」」


 俺と優奈は朝食を食べ始める。……うん、普通に美味しいな。


「それにしても、昨日はバズりましたね~」


「うん? ミラクルがバズったのか?」


「それもそうだけど、お兄ちゃん、正確にはマジカルジョーカーがバズったんだよ」


「マジか、後で確認してみる」


 その後は黙々と朝食を食べ続け、皿に食事が無くなった。


「「ごちそうさまでした」」


 俺は早速スマホを見てみる。すると通知が沢山来ていることに気付いた。SNSを見てみると、トレンド入りしていた。


「本当にバズったのか……切り抜き動画まであるじゃないか」


 不思議なことがあるものだ。最後にチャンネルを確認してみた。


「登録者数、2万人」


 昨日まで0だったものが2万人に増えていた。驚きで言葉が出て来ない。

 スマホの時間を確認すれば、準備しなければならない時間になっていることに気付く。


 俺は学校に行く準備をして制服を着る。鞄を持って玄関に行けば優奈が待っていた。


「「行ってきます」」


 俺と優奈は家から出る。俺は高校へ、優奈は中学校へ向かって行った。




 学校へ到着する。俺は教室に入った。


「おはよう」


「「おはよう」」


 クラスメイトに挨拶をして、自分の席に座る。俺はスマホを見てみる。


「変わらないか」


 SNSを見たら変わらずトレンド入りしていた。これは夢なんかじゃないかと思うが、今更だな。


「おはよう!」


「「おはよう!」」


 すると、金髪ロングで制服を着た少女、白河しらかわ彩花あやかが教室へ入ってきた。

 白河さんはミラクルハートである。これは彼女が雑談配信した時に、正体を明かしたからである。だからクラスメイト、いや学校にいるみんなは白河さんがミラクルハートであることを知っている。


 それより見た限り怪我は無さそうである。良かった。


「怪我大丈夫?」


「昨日の話を見ていたけど、本当に大丈夫なの?」


「うん。私なら大丈夫。マジカルのおかげだよ」


 話題はマジカルのことになった。


「一体何者なんだろうね」


 魔法少女です。


「強かったよね。レッドオーガを手玉に取っていたもん」


 手玉に取っている風に見えていたんだ。全然そんな意識は無かった。


「本当に強かったよ。私もあんな風に強くなりたい!」


 白河さんは強くなりたいのか。取り合えず前向きな白河さんが見れて一安心だ。

 その後先生が来て、朝のHRが始まった。




 学校では特に目立ったことは無かった。そのまま授業、昼食、また授業と進んでいき、放課後になった。

 俺は部活には入っていない帰宅部であった。下校すると、俺はバイト先まで向かった。


 喫茶店『ネクサス』、それが俺のバイト先である。裏口から入って、更衣室で制服に着替えてエプロンを付けた。

 更衣室から出て、ホールへと出ると俺より大きい男性、マスターがいた。


「こんにちは、マスター」


「こんにちは。今日も頑張ろうか」


「はい」


 それから暫くすると、ドアベルが鳴り響いた。


「いらっしゃいませ」


 俺はお客様に挨拶をする。お客様は常連客であり、俺のよく知る人物でもあった。


「こんにちは、悠希君」


「こんにちは、白河さん」


 常連客は白河さんだ。


「いつもの席なら空いていますよ」


「じゃあ、そこでお願い」


「分かりました」


 白河さんをいつものテーブル席へと案内した。白河さんが席へと座ると鞄が動いた。彼女が鞄を開けると兎の形をした妖精、ココロが姿を現した。


「ココロもこんにちは」


「こんにちは!」


 ココロとはネクサスに来て以来ずっと顔を合わせている。最初に見た時は本物の妖精だって驚いていたっけ。


「ご注文が決まりましたらお呼びになって下さい」


 俺は一度席を離れる。数分後、白河さんから呼び出しを受けて席へと向かった。


「ショートケーキとカフェオレ下さい」


「畏まりました」


 俺はキッチンにいるマスターにメニューを教えた。マスターはカフェオレとショートケーキを準備する。

 先にカフェオレを渡した後に、ショートケーキを届けた。


 白河さんはカフェオレを飲んだり、ショートケーキを食べてココロにも分けていた。ココロも美味しそうにショートケーキを食べてくれた。

 白河さんとココロの笑顔を見れて良かった。


 そんな俺に白河さんは手招きをする。俺は他のお客様がいないことを確認してから、マスターに一言伝える。


「すみません、少し外れます」


「分かった」


 マスターには心の中で感謝しつつ、白河さんの所へと向かう。対面するように席へと座った。

 そもそもどうして、俺と白河さんが話せるような仲になったのか。それは俺が偶然ココロがショートケーキを食べていたのを目撃して、自分なりの気遣いが白河さんにはとても良かったらしく、こうして話せるようになった。


「どうかした?」


 外れていることもあって口調は素に近い。


「マジカルジョーカーについて何か知らない?」


 俺ですと公言するつもりは無い。ただ、教えられる範囲のことは話してみるか。


「マジカルジョーカーね。確か配信者で、ダンジョンだとF、E、Dランクは行っている。配信でもやっていたよ」


「そうなんだね。強さはどんな感じなのかな」


「正直、まだ底は見えない感じかな」


「あんなに強いのに、まだ底があるなんて」


「あくまで俺から見た話だ」


 今はこれくらい話しておけば良いだろう。


「流石、彩花が信頼している悠希だね」


「偶々だ。配信が残っていたのが幸いだった」


 まぁ、消す理由も無かったから残していただけなんだけどな。そんな深い意味合いは無い。

 それにしても――


「白河さんに信頼されているなんて、嬉しい限りだ」


「信頼しているよ。それに、悠希君と話しているこの時間、結構楽しくて好きなんだよ」


「それは、ありがとう」


 なんか照れるな。こうも真っ直ぐに言えるものなのか。……それが白河さんの良い所なんだろうな。


「私、マジカルと友達になれるかな」


 白河さんの問い掛けに俺は迷いなく答える。


「なれるよ。白河さんなら、きっと」


「……うん。ありがとう、悠希君」


「どういたしまして。……それじゃあ、俺はバイトに戻る。ゆっくりしていけ」


「うん!」


 俺はバイトへと戻った。他のお客様も来て、俺は対応していく。

 白河さんも暫くした後、会計をしたら帰っていった。


 数時間後、バイトが終わり俺も家に帰っていくのだった。

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