菊池昭仁 短歌集『ビター・チョコレート』

菊池昭仁

第1話

短歌集1(1~10)

1 君背負い 海辺を歩く 夏の日に 足跡ひとつ 愛すればこそ




2 菜の花に 君の思い出 揺れながら 遠くに続く 桜並木を




3 青空に 君の名を#描__か__#く 春の日に 忘れじの君 雲に隠れて




4 月灯り 曇りてもなお 消え残る 君の残り香 桜に紛れ




5 ソーダ水 弾ける音に 耳寄せて 君なき今は 春の嘆きか




6 ラーメンを 食べる横顔 カワイくて 君に差し出す 最後のチャーシュウ(字余り)




7 天の河 超えてみせるよ 君のため 夜に漕ぎ出す 頼りなき舟




8 ひっそりと 雨に打たれて 香り立つ 君の面影 くちなしの花




9 目覚めれば #五月雨__さみだれ__#あがり 梅雨空に 大きく架かる 七色の橋




10 雨は降る 僕の心に アジサイに 君の瞳に 躊躇いもせず




短歌集2(11~20)

11 風になれ 大地を駆ける 風になれ 愛を育む やさしい風に



12 暗黒の 海に引かれた 月の道 この道ゆかば 君が待つ月



13 見つめあう ふたりの想い 蕩けゆく ラムレーズンは ハーゲンダッツ



14 雨あがり 芙蓉を愛でる 君の手が 痛々しくも 雨つゆに濡れ



15 水しぶき ジャンプするよ 君のため 空まで届け 果てしなき愛



16 傘を捨て 君を抱きしめ 石となり #五月雨__さみだれ__#の時 夜に紛れて



17 黄金に 光漂う 夕暮れに 船乗りの夢 消えるが如く



18 雨の朝 そっと伸ばした その先に あなたの寝息 肌の温もり 



19 夏トマト お日様の味 鮮烈に イタリア人に なったみたいに



20 あなただけ 私はピアノ 弾かれたい そんな想いに 夜は更けゆく



短歌集3(21~30)

21 人はなぜ 出会いと別れ 繰り返し 涙の川を 超えてゆくかな



22 庭に咲く 薄紫の 朝顔は 泣いているのか 朝露に濡れ



23 雨の音 ピアノを叩く 音に似て 君の琴線 爪弾く夜に



24 傘ひとつ 相合傘の 君とボク 好きだと言えず 縮まぬ想い



25 人知れず 六月の薔薇 香り立つ 切なき想い 翳りゆく街



26 気の抜けた サイダーひとつ #五月雨__さみだれ__#に これも恋かと 言わずもがなか



27 暗闇に 土砂降りの雨 君となら 歩いて行ける 愛すればこそ



28 ブラームス そしてお前と カルバドス それさえあれば 何もいらない



29 映画館 君とシェアする ポップコーン 君と手が触れ 戸惑うふたり



30 雨あがり 君の想いを 知りながら 君を抱き寄せ 午後の陽だまり



短歌集4(31~40)

31 「見たいなら 勝手に見れば?」 丸くなる 背中を向けた おにぎりパンダ



32 流れ星 愛していると 言い切れず 儚く消えた 夏の夜の夢



33 雨の夜 コーラ片手に 君想う 躊躇いがちに スマホに触れて



34 CoCo壱で 君と頬張る カツカレー 微笑むふたり 愛を感じて



35 梅雨を背に 別れ話は 長引いて アイスクリーム 溶けるが如く



36 風になり 飛んでゆきたい 君の街 風になりたい 緑の風に



37 「濡れますよ」 傘を差し出す 雨の中 君の泣き顔 晴れる気がして



38 恋に落ち 愛に溺れて 苦しんで それでも人は 愛を捨てない



39 海ゆかば 君待つ港 この果てに 君の手紙に 消えぬ残り香



40 名も知らぬ 瓦礫に咲いた 一輪の 花になりたき 我れが想いか



短歌集5(41~50)

41 自転車で 頭を屈めて 通る道 たわわに実る 枇杷の木と知り



42 君に抱かれ このまま死んで しまいたい そんな哀れな 雨の降る夜(字余り)



43 ルノワールの絵 サリンジャーの本 そしてボク それさえあれば 何もいらない?(字余り)



44 当てもなく ただ流されて ゆく旅も 出会いの中に 学ぶべきあり



45 山手線 夜の都会を 走ってく 君と二人で 漂う銀河



46 七夕に 会えるといいな 織姫と 笹に願いを 牽牛の恋



47 あの角を 曲がれば君に 会えそうで 募る想いは 異国の果てか



48 朝採れの 冷えたトマトを 丸かじり その鮮烈さ 夏の日の恋



49 七夕に かける短冊 真剣に 願い込めた 幼き我が子



50 仙台の 街を歩けば 俺たちを 邪魔するように 七夕飾り




短歌51

 君だけを いつも見ていた 夏の日の 煌めく海に ダイブする俺


短歌52

 颯爽と 俺を追い抜き 駆けて行く 揺れる彼女の ポニーテール


短歌53

 生かされて 生きているなら その命 粗末にしては 無駄になるやも 

 


短歌54

踏まれても 頭を上げて 咲いている 秋晴れの道 白いコスモス


短歌55

夏が消え 秋も過ぎ去り 長い冬 寒さに震え 春を待つ朝


短歌56

いい事も 悲しい事も 日が暮れて 溶けて流れる ソフトクリーム


短歌57

月うさぎ 仲良く餅を ついている 君が微笑む 十五夜の月


短歌58

虫たちの 奏でる秋の コンチェルト 寝落ちしてゆく 紅葉もみじの夜に


短歌59

 秋深し 君のやわらか 膝枕 読みかけの本 だらりと落ちて


短歌60

 恋焦がれ 君を探して ゆく秋の 風にそよぐは 野辺のススキか


短歌61

 俺は今 どこにいるのか 暗闇の 秋風の中 君の名を呼ぶ


短歌62

 空高く 君の背中を 抱きしめて なお穏やかに 秋が流れる


短歌63

 拓郎の 歌を歌いて ゆく秋の 刈られた田圃 残る悲しみ


短歌64

 落ちてゆく 枯葉のように 儚くも 君の面影 木枯らしに舞い


短歌65

 寒き朝 お前の声に 包まれて これが愛かと 微睡まどろむ秋に


短歌66

 アルバムも ワイングラスも 捨ててゆく 身軽になった 終活の朝 


短歌67

 イブの夜 行けば必ず 別れると 仙台ひかりの ページェント 


短歌68

 晩秋の 倒れたススキ 無情にも 降り積もる雪 躊躇いもせず 


短歌69

 「会いたい」と 泣いてる君を なだめつつ 遠距離電話 立冬の夜


短歌70

 珈琲に お砂糖2つ 入れてみた ふたりの愛が とろけるように 


短歌71

 君の手が 冷たい朝に 手をつなぎ その手に触れて 愛を感じる



短歌72

 クリスマス イルミネーション あでやかに 大人の恋が 花開く夜



短歌73

 ダウン着て お前と歩く 雪の道 深夜のマック 熱きカフェラテ 


短歌74

 会いたいと 君にせがまれ 月を見る 夜空を飛んで 君に会えたら


短歌75

 恋という 名前の酒で 君と酔い 雪舞う夜に 熱き月夜か


短歌76

 他愛ない 「今日何食べた?」 で始まる 深夜の電話 いつの間に朝




   


短歌77

 初詣 みくじを引いた 君の顔 輝くことを 祈るわが


短歌78

 小椋佳 湯船に浸かり 落涙らくるいを 未だに消えぬ 青春の色


短歌79

 初詣 「寒くはないか?」 その先に 海より広い あなたの背中


短歌80

 流れ星 叶えてみたい 願い事 唱える前に 儚く消える


短歌81

 春を待つ 凍える君の 肩を抱き 寒くないかと 梅の香りが


短歌82

 腕を組み 「愛している」の 言葉より ふたりで歩く 春の夜桜  


短歌83

 手に熱い 缶コーヒーが あればいい お前とふたり 冬の海辺に


短歌84

 あなたとの 愛の戯れ 繰り返し 春が近づく 三寒四温  


短歌85

 思い出の 茶店さてんが消えて 悲しむは 君の横顔 春の桜か 




短歌86

 手をつなぎ 出会ったことが 定めなら 恋が始まる ふたりの夢が

 


短歌87

 ほんのりと 酔ったお前の その頬に 散りゆく桜 春の月夜か

 


短歌88

 春小路はるこみち 桜吹雪を 浴びながら 君を抱き寄せ 飲み干すコーラ


短歌89

 雨に濡れ じっと咲いてる 桜花 お前の顔が 浮かんでは消え


短歌90

 真ん中に 心と書いて 愛ならば お前と俺は 恋を超えたよ


短歌91

 お花見に 花びら落ちて 日曜日 君と作った 弁当飾り


短歌92

 桜咲く お前と歩く 坂道で 行き交う人の 眩しき笑顔 


短歌93

 春のよい 君への想い 断ち切れず 溢るる涙 カクテルグラス


短歌94

 ひとひらの 桜の花弁 宙に舞い 落ちぬようにと 見守る君よ


短歌95

 五月雨さみだれに 濡れた歩道に 映る俺 俺を見つめて 泣いている俺


短歌96

 ただでさえ 足取り重い 月曜日 朝からの雨 空も泣いてる


短歌97

 日曜の 朝のラジオと 五月さつき晴れ 隣で寝てる あどけなき君


短歌98

 ポピー咲く 丘に登りて 愛の夢 語る言葉は June Bride


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菊池昭仁 短歌集『ビター・チョコレート』 菊池昭仁 @landfall0810

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