第20話 観覧車
「私が可愛い……どういうこと?」
急に蘭くんから可愛いと言われて困惑している。しかもサメみたいに可愛いって何?
「とにかくあなたが可愛いってことですよ」
蘭くんが意味分からないことを言い出したので、逃げるように次の水槽に向かう。次の水槽はマグロの水槽だ。
さっきからずっと気になってたけど、やっぱり水族館ってカップル多いな。私たちもカップルに見られてるんだろうか。ん?もしかしてそれを考えた上で蘭くんはさっきのことを言ったのか?
「マグロ、旨そうですよね」
蘭くんがそう呟く。水族館行くと、魚が旨そうに見えるのってよくあることな気がする。
次の水槽は……ペンギンだ!
「……可愛い」
私は思わず声を漏らす。
「藤花さんのが可愛いですよ」
蘭くんがまた変なことを言う。いやペンギンのが可愛い。
――その後も色々な水槽を見たが、私はドキドキしていて、あまり記憶がない。
「水族館楽しめました?」
蘭くんに聞かれたので、私は素直に頷く。
🪻🪻🪻
「お!水族館から出てきたっすね」
暇川さんに言われたので、私は双眼鏡で覗いて見る。もう出てきたのか……思ったより早かったな。
「ん?なんかお姉ちゃんの顔赤いですよね?」
「そうっすね。蘭が何かやったんすかね?」
「やっぱり蘭くんってできる子だったんだ……」
蘭くん、水族館の中でお姉ちゃんに何したんだろう……。蘭くんの前だとお姉ちゃん、意外と照れやすいから、そんな大袈裟なことはしてないと思うけどなぁ。
🪻🪻🪻
「蘭くん、次はどこ行くの?」
藤花さんが聞いてくる。えーっと次は……
「観覧車乗りましょうよ!」
藤花さんと観覧車に乗ったらドキドキして死にそうなのだが、これも椿さんが必死に考えてくれたデートプランなのでちゃんとやる。
向かい合わせに座る。観覧車から見る街並みは小さく見えた。そんなことよりも思ってることがある。実は僕、高いところが苦手なのだ。
「蘭くん?大丈夫?」
藤花さんに聞かれるが、大丈夫なわけない。
「だ、大丈夫です!」
僕は慌てて返す。
「……そっち側、行くよ」
藤花さんが僕の隣に座りに来てくれる。
「ねえ、大丈夫?すごく心臓の音聞こえるけど」
いやそれは藤花さんが隣にいるから、なんて言えるはずもなく……。
――やっと二人きりの観覧車という恐怖で幸せな時間が終わった。
「次はどこ行くの?」
藤花さんが少し楽しそうにしている様子を見て安心する。こんな僕でも、この人を幸せにできてる。
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