引っ越し先のお隣さんは元アイドル

亜月廻

第1話 お隣さん

「今日隣に引っ越してきました朝比奈といいます」


「……」


 大学進学を機に長年過ごした地元を離れ一人暮らしをする事になった俺は今まさに新居のマンションの目の前にいた


 大学生の一人暮らし、こんないい場所でなくても良かった訳だが、過保護な両親が最近は物騒だと心配し物件を探していく中でセキュリティ面もしっかりされていたことによってこのマンションに決まった


 内覧の時に不動産の人が築三年で新しいとか何とか言っていたな

 その言葉通り建物全体が綺麗で外壁に目立った傷が一切無い

 あちこち見渡しながら今日から住む部屋に入った


 部屋はほとんど今日の転居までに親に協力してもらって運んでおいた生活品が整理され置いてあるから、あとは軽めの荷解きで済む

 パパ、ママ本当にありがとう


 荷解きをしながら、内覧の時の不動産の話をまたも思い出した


 このフロアは俺の入居で全部屋埋まるみたいな事も話してたな

 俺の部屋、角部屋だしお隣さんに一応挨拶しておかないとな


 思い立ったが吉日、早速さっき入ってきた玄関を出て隣の部屋のインターフォンを鳴らす

 とは言っても、昼間なわけで、学生にしろ社会人にしろ出歩いているであろう

 自室に戻ろうとしたタイミングで


『はい……』



「あ、すみません突然、今日隣に引っ越してきました朝比奈と言います」


『……』


 沈黙は辛いから何か返してほしいけど、

 突然引っ越してきましたって来られても、

 だから何?って感じになるよな

 一人でやきもきしていたら玄関の扉が開いた


「……わざわざ、どうも」


 っ!かわいい……じゃなくて


「い、いえ、こちらこそ」


 てっきり、インターフォン越しで済まされるだろうと思っていただけに若干キョドってしまった、女性だし、いや声で女性というのはわかっていたけど


 それにしてもマジマジと見ると可愛いというか綺麗というか、顔色は少し悪そうだけど切れ長の目で猫顔っていうのかなこういうのを、オマケに黒髪ロングで背も高いし

 もしかして芸能人なのかも……


 でも、どこかで見たことがあるような顔なんだよな……まぁ、いいか


「今後よろしくお願いします」


「星宮です……よろしく」


 自分の部屋に戻ったあとも俺はお隣さん、星宮さんの事を考えていた

 なるほどこれが一目惚れというもなのかもしれない、今まで恋愛らしい恋愛をしてこなかったからわからないが


 でも、仲良くなれたらいいなとは純粋に思う


 あれから、頻繁に星宮さんと会うということはなく、それどころか真隣の部屋だというのに最早本当に隣部屋に住んでいるのかってぐらい生活していて遭遇しない


 引っ越してきてからはや4日ここまでゴミを出しに行ったり一人暮らしということで買い出しに出たり家を出る回数は多くもなく少なくもなくといった具合だったが、あの初対面の挨拶以降会うことも無く


 明日はいよいよ大学の入学式だ

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