いつのまにかPCの中にあった文章① 奇妙な会話
「仕事でT町に行った時の話なんですけどね?」
家庭教師のYさんはそう言って話を始めた。
正直にいえば、またT町か、と思った。T町は関東地方にある小さな町なのだが、ここ2、3年ほどは伏字にする意味もないほど不可解な事件が続いている。
その分、私が取材させていただく方からもT町の話を聞くことが増え、正直に言って仕舞えば辟易していたのだ。
何より、T町の話を雑誌に載せると関係者が不可解な死に方をするらしく、雑誌によってはT町というだけで没になることもある。それでは書き上げても徒労だ。
私は内心「ハズレだな」と思いながら話を聞いた。(ここら辺はカットでいいかも)
「僕の仕事って、授業が終わった後の空き時間は基本的に好きにしてていいんですよ」
その日は、午前中に別の町で授業をした後T町に住む中学生の男の子に授業をし、夕方ごろに町のマックで遅めの夕食を食べていたらしい。
少し奮発して頼んだセットを食べていると、ふと隣で妙な会話が聞こえたらしい。
「なんていうか、落ちる、とかどうとか高校生くらいの女の子たちが口論してたんですよ」
Yさんが記憶を辿って話してくれた内容によると、以下の様なことを言っていたらしい。
「いやだから、落ちるよりはよくないって話じゃん」
「でもさぁそもそもそれって先輩たち頃の問題で、それで私たちがってのはやっぱおかしくない?」
「それはおかしいかもしれないけど実際しょうがないじゃんもう終わりなんだから逆に大丈夫だよ」
「てかどこでするわけ?」
「いや、そもそもする体で進んでるのが意味わかんないし」
「えじゃぁ苦しんだほうがいいわけ?落ちる?」
「それは違うじゃん。私彼氏いるし」
「じゃぁ尚更だよ。彼氏に迷惑かけてもいいの?」
「それ言うのずるじゃんヤダって思うのはしょうがないでしょ私まだ2年だし」
「まぁねー」
「なんというか、何かをやるかやらないかで揉めているんだろうなってことはわかるんですけど、具体的に全然わからなくて」
何より異常だったのは、彼女たちの話している内容は言い争う様なものだったにも関わらず、その声は終始平坦だったことだ。まるで授業中に当てられて朗読させられている様に、投げやりで照れを感じさせる棒読み。
気味が悪くて無視していたが、食べ終わってふと彼女たちの方を見て、Yさんはひどく困惑した。
彼女たちは、全員が天井を見上げながら話していたのだ。
その光景はあまりにも不気味で、足早に席から離れようとしたその時、ひとりが上を向いたまま立ち上がり、Yさんの方に歩いてきた。
「ひ」
思わず声を上げるYさんに、少女は目を合わせることなく上を向いたままこう言ったそうだ。
「すみません、ちょっと相談なんですけど」
「は、はい?相談って」
相変わらずの、平坦な声。
「私たち、どうやって死ねばいいと思いますか?」
あまりの不気味さに、Yさんは食べ終わったトレーもそのままに白月さんが落ちた時の様な速さで走って逃げた。後ろからは、棒読みで「あっはっは」と笑う彼女たちの声が聞こえていたそうだ。
(軸がブレるので書かなかったが、このあと訪問したお宅で、生徒のお母さんが自殺未遂をしていたらしい)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます