若松青葉の話①
ここまで掲載させていただいた内容は、私の仕事仲間である編集者の鹿野君経由で、若松青葉さんという青年から、ZIPファイル形式で送られたものである。
私は普段はライターの仕事をしており。複数の雑誌を跨いで実話怪談や心霊スポットに関するコラムを提供させていただいているため、読者の方からこういった形でいわゆるネタ提供をされることも少なくない。
その上で、文章を送られた当初、失礼を承知の上で言えば、悪趣味な自己顕示、あるいはミーハーな若者の作り話だと思っていた。
倶疋でいくつもの心霊現象が発生していること、そのほかにも様々な不審死が相次いでいること自体は、当然私も認識していた。
しかし、逆に言えばむしろかなり有名な話であったので、倶疋に関するネタ提供は若松さんが文章を送ってくる以前からそれなりに多くあり、またそのほとんどがどうにも真偽の疑わしいものばかりだった。
言ってしまえば、ホットで、都合のいい話題であったわけだ。人が死んでいるのになんだとは思うが、人間なんてそんなものだ。
加えてそもそも私はあまり倶疋に関心がなく、「はいはいまた倶疋ね」という気持ちで読んだのを覚えている。
結果として、私は若松さんに会って見ることにした。
若松さんの収集した倶疋と白月ミウに関する様々な体験談は、実際に新聞などで確認できる事件と一致するもので、ネット上から収集された噂や投稿なども、少なくとも嘘を言っているのではないと思えるものだった。
何より、多少作り話だったとしても、若松さんの決して上手いとは言えない文章から感じられる白月ミウへの執着に、興味を抱いたのが大きい。
白月ミウ。倶疋に関する怪談に頻繁に登場する「ミウくん」「白月くん」という名前は、特に先日の倒木事故で亡くなった根尾ゆうかさんの断末魔を経て、広く知られるものになった。
だがその人物像については、ほとんどの人間が知らない。とある書き込みから、倶疋ことある高校で自殺した男子生徒と一致するということがようやくわかった程度だ。
もしかしたら、そんな白月ミウの人となりについて聞けるかもしれない、と感じた。彼の在学していた高校の同級生は、若松さんの文書にもあった通り、若松さんを除いて全員死亡していたため、白月ミウの生前を知る人自体が極めて貴重になっていた。
私は若松さんにメールを送った。
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