『動画』

2024/10/5

(パーカーを着た、黒マスクの女が画面に映る)

どうも〜、黒犬ろくの心霊ちゃんねるで〜す！

えー今日はね、今ネットで話題になってる『見たら死ぬ動画』を見ていこうと思います

(スマホを取り出す。スマホにはゆうかの最期を写した動画らしきものが映っている)

えっとまず、知らない人のために説明するとこの動画、今年の9月半ばに撮影された、女子大生の事故死の瞬間を捉えた動画です！

最初に上がったのはTwitterで、当然すぐ消されたんだけどその強烈なインパクトからいろんなところに転載されております

まぁそれだけだとただのグロ動画なんですが……なんとこれ、見るとヤバいことが起きるらしいんです

そりゃね？ボクもただのグロ動画見たってしょうがないですからね？

で、具体的に何が起きるかっていうと、耳元で死んだ女子大生の声で「見ないで」って声が聞こえるとか、急に気分が悪くなって背後に人の気配を感じるとか

あと、女性が見ると流産してしまうって話も……あ、妊娠中の女の子は今回ブラバ推奨で！

ま、俺は結婚する気ないんで、別によす

さてさて、そんな恐ろしい動画ですが……あえて危険に飛び込んでこそのオカルトちゃんねる！……やべ、心霊ちゃんねるだわここカットで！みんなの脳内でカットしといて！

よーし、それじゃぁ早速見ていきましょう

あ、一応画面共有するので、苦手な人はここで抜けてね〜

その間に準備……っと、えっと

(1分ほど機材をいじる女のアップが続く)

おっけー？もう共有しちゃうけど大丈夫？

はい、じゃぁ映しまーす

いきなりおっきい声するらしいから気をつけてね〜

では、3……2……1、ヤー！

(画面上に動画が映る)

(動画の再生が始まる)

うお！初っ端悲鳴！？

みなさーん、大丈夫？鼓膜破壊されてない？

うわ……え、でもえぐいね……いや、声リアルだわ……いや、リアルで当たり前なんだけどそれにしても……

うおっ……え、てかなんか意味不明じゃない？言ってること……うわ……キツい……俺実は苦手なんだよなぁこういうの……ホラーとはまた違うっていうか……

うーわ……全体映った……血ぃヤバ！

あ、ええ……

(動画が終わる)

あー、いや壮絶でしたね

人って死ぬ時こういう感じなのか……トラウマだわ……

それにしても、彼女が読んでいたミウくんっていうのは一体誰なんでしょうね？恋人かなーとも思ったんだけど……なんか、毛色が違う感じするよね？

うーむ……謎だ……

あ、ところでさ……女子大生とは別なんだけど……なんか、画面の端にいるこの人、ちょっと透けてない？

(画面が拡大され、カーソルが動く)

(停止)

(何も映ってない)

これ、髪の長い男が……ほら、足元！

えー……心霊がまた別の心霊を……いや、逆にこの霊が女子大生を？うーん……可能性あるよね？

あれ、でもこれ……見覚えある様な……無い様な……

(数秒の沈黙)

え、あ、そっか

ミウくん、か

(女が画面を凝視する)

(女の目から血が出る)

うん、あ、なるほどね

うんうん、ああ、そっか

えっと、つまり……お前らが死ねばいいんだよね

お前らが死んでさ、俺も死ねばいんだよね？

あ、じゃぁ、死なないと

(女が痙攣を始める)

お前らも、ちゃんと死ぬよね？えっと、この動画を拡散して、え？なんで？死ぬの？え？ていうか

あれ、ミウくんって誰？ミウくんは、髪が長くて、所作が綺麗で、え？いや、えっと

ミウくんはぶっきらぼうだけどほんとは優しくて

死んだ時もきっと何か悩んでたんです

(女が指先を痙攣させながらマスクを触る。爪がずるっと剥がれて、マスクに血がつく)

だからわたしは

ミウくんのためにたくさん人を殺さないと

ねぇ、だって

見てるもんね？

見てるよね？

わたしのことどうでもよくないよね？

(マスクが外れる)

(女が鼻血を垂らしながら、涎を垂らす)

ミウくんは、わたしの好きな人です

(女の鼻から大きい血の塊が落ちて、鼻が凹む)

ねぇ、ミウくん

ミウくんってば

ねえ、

(口の中から大量の血と、ぶつぶつした肉の塊が、ゆっくりせり出す)

なんで？

(女が画面に倒れ込む)

(かすかにくぐもった笑い声がひびく)

◆

『コミュニティ』

お世話になっております。黒犬ろくの心霊チャンネルに関わらせていただいていました、ろくの友人です。

先日ろくは、配信中の体調不良で倒れ、搬送先の病院で亡くなりました。

葬儀は内々に済ませ、こちらのチャンネルは今後配信を停止させていただきます。

突然のことに私どもも心の整理がついておらず、このような簡素な文章となってしまいましたが、皆さまの応援のおかげでろくは最後まで幸せだったと思います。

そうかな

これまでろくの　しね　活動を支え　

くるしんで

ていた　しね　だき

しんでた

ありが　しね　とうござ　

よ

いました。

なぁ

おまえらも

死ね(笑)

死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ね