もう二度と書けない、そんなすれ違いにしたかった。と思ったら社長に邪魔された
夕日の赤が視界を幻想的なものに変える。
お別れと言う出来事の始まりにはピッタリの赤。
焼けるような、まさに夕焼けと呼ぶに相応しい赤色だと思った。
僕はユカの待つ公園に入った。
『あ!ソラ…その…久しぶり……元気にしてたか?』
「うん、元気だよ…ユカは?」
『うん…まぁまぁ……かな?』
小学生から付き合いがあるが、今までこんな違和感のある会話は無かった。
僕は人の…特に女性の心の機微は未だによく分からない。
いや、男女関わらず、出会った人達も然りだ。
宇宙人だからか、それとも元からなのか。
いや、社長とか変な人しかいないからか…
だから言葉を紡ぐ、例えそれが終わりの言葉でも。
目を泳がせ、何だか落ち着かないユカ。
「本当に…この公園も久しぶりだね。色んな事があったね、ユカ…………ェ゙?」
『ん?…うん、そうだね………どうしたの?ソラも座れば?』
「いや、ちょっと立ちたい気分で……」
立ちたい気分って何だ…いや、そういう気分なんだ。
だって、ユカの座っているベンチでの後ろの木…アレは……アレが見えるから………
『クックック!ポロッポー』
『イエス!タカジョー!アイム!カートゥーン・タカ!ジョー!クワ!ベンギン!?』
『クルッポー!クルックルックルッ』
『ユカ?ベン!チュウコ ノ ベン!ソラ?ベンキ!ソラ ハ ノット ベンキ!ミシヨウ!』
『ボーボーボー』
会話の内容は分からないが、とにかく馬鹿にされている。
さっきまで桃太郎の雉状態だった金髪シスターと、何故か一緒に木にとまっている複数の鳩が会話?している。
とにかく馬鹿にされているようだ。
何か膜?
結界的なものがあるのだろうか?
耳で音を聞かない僕は聞こえるが、ユカには聞こえていないようだ。
よく見るとシスターの首からスマホがぶら下がってる。
ブーッブーッ
そして僕のスマホからはメールの着信音が鳴り……
【雑談やめろ、ホラ貝貴様、グズグズしてないで、早くNTRを詰めろ、時間を考えろ】
何故かサラさんからメール……いや、これは社長だ。
あのぶら下がったてるスマホて盗聴、そしてサラさんのスマホで……
つまりこれは間違いなく、社長が近くにいる……本当に嫌だ。
『今日は…その、私の話を聞いてほしいんだ……良いか……な?』
「うん……」
ユカはいつから喋り方が変わったんだろう。
男みたいな変な話し方、思い出してみれば高圧的な喋り方…最初はアニメか何かの影響だって言ってたなぁ…だから本当は高圧的な態度では無かったのかも知れ…
【夕飯になるだろが、良いから早く話をすすめろよこのボ】
何だこのメール…すると視界の隅に不思議な光景を目にした…と、同時に話の核心に迫るユカ……と、ガヤ……
『私ね、防専に行ってから…変な力を手に入れて…戦ってたんだけど……白い防専の敵…化物に初めてを奪われたの……』
――ソラ君と女の子の邪魔はやめてください!――
――このクソガキャー!お前も謀反か?魏延だらけの大運動会か?この会社は!?――
――ソラ君の邪魔しちゃ駄目ですって!何で人の不幸を楽しもうとするんですか!?私は絶対に許しません!ミカエ!合体です!――
――許さんってサトルかボケェっ!また変身か!?!変身ヒロインは全部飼える虫か爬虫類、脱皮しやがって!汚弟子は浣腸の刑に処す!!―
――やめ!?やめて!ギャァァァ!!ガァ!?♥――
『クルックルッポッポー』
『ソウ ダ!ユカ カイジン ノ ベン キ!ソラ ハ ニューベン キ!ミシヨウ!!』
脳が揺れる、色んな意味で。
童貞を未使用って言うな。
それにユカ……それは、君が奪われた事はもう知ってるんだ…だって教えて貰ったから……この間…君から。
違うな、一番気になるのは……何故か公園の植込みを越えた砂場で取っ組み合い、口元だけ出るようなマスクしたエナメル変態ナースみたいな格好に犬耳の付いたサラさんに、卍固めをする社長。
鷹の人と一緒でコスプレみたいなナースだ。
そのサラさんが社長に浣腸された、結界の様なもので聞こえないが、かなり大きな喘声をあげたサラさん…初めて聞いた…当たり前か。
木の上では性的な行為をした事のない僕を、多分馬鹿にしている…鷹を自称するシスターと鳩。
全員同時に喋ると僕は……
『それで……先輩がね…助けてくれて…私……ソラの為に強くなろうと…なのに…』
―アッ♥あぁああ……♥ぐうう……アヒィ♥―
―変態上司とキ〇セ〇してた時と同じアへ顔だな。やはり汚弟子は粛清に限り……電話?もしもしー、何?アルマンが煩い?あ、首にいねぇや、分かった、取りに行く。え?いや、今、忙しいんですよ―
『えっと…あの…その…あのね………私…その…先輩と……してしまっ……辛い…筈なのに……』
――ま……ちな…さ……人の恋の邪魔を……ンアアッ!!♥――
――うるせぇ馬鹿たれ、お前はその辺に転がってホラ貝がフラレるのを待ってろ――
『クルル?ポッポー!?』
『サラ ハ ゼッチョー ベン キ!アイム タカジョー!タツ ハ バカ!アイム タカ!!』
とてもうるさい、ユカに伝わってないが僕には色んな声がガンガン聞こえる、この意味不明な状況が辛い。
――んはっぁ♥ミカエッ!は!早く感度を止めて!ソラ君が来る前に!――
――サラ!ユウゴウノママ イチニチ イナイト ダメ――
――そ、そんなぁ♥また♥この格好で1日ぃ!♥だ、大丈夫!刺激さえ与えなければ……♥――
『その…不快だと思うけど…言わないと…でも、まだソラの事が……その……』
まだユカは僕の事が好きなのだろうか?
それで付き合い続けたとして……
ペッタンペッタンペッタンペッタンペッタン
不思議な足跡、僕はこの足音を知っている……
社長のペット…その名は狂信者のアルマン。
外見はイグアナ…みたいな爬虫類で1メートル近くあり、普段社長の首にネックレス様に巻き付いている。
作業着の下にいるし、ヒンヤリしているのでたまに存在を忘れるとは社長の話。
――え!?アルマン!?何で!?ヤダっ♥そこ乗っちゃダメェ♥――
――キョッキョッキョッキョッ!!――
パシンッ!パシンッ!パシンッ!
――アルマンやめてぇ♥んあア゙!?♥アッ!♥ア゙ァ゙ッ!♥ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ァ゙ッッッ!!!♥♥♥――
アルマンは仰向けのサラさんの胸の上に前足をそれぞれの丘に乗せ、首を縦にぶんぶん振りながら重みをかける。
そして尻尾で股間をパシンッと叩いていた。
僕は耐えきれず上を向いた。
そうだ、僕の名はソラ……この名前は遥か遠く宇宙の…【ベチャッ】
「ぐぁッ」
『クルッポッポー』
『イエスッ!ソラ コレデ チュウコ ベンキ!ミンナ チュウコ!サラ アルマン プレイ!ヘンタイ!』
僕は上を向いた瞬間に鳩に糞を落とされ目に入った。
瞬間、涙が出た。鳩の糞は痛くて染みる、目に入れるものじゃない。
駄目だ、もう耐えきれない。
『……………私…ソラに許して……うっ…欲しくっでぇ…ゴメ』
「良いよ、ユカ。全部知ってるんだ…だから…もう無理だ、別れよう。その先輩とやらと上手くやってね。ごめんね、貴重な時間、割いちゃって……バイバイ」
目が痛い…もう無理だ。
思考がまとまらない、話を聞いてられない。
僕は感情がうまく整理がつかないままその場を去った。
何か最高に妨害された気がするけど、でも結局フラレるのだから、結論は同じだから深く考えなくても良いのかも知れない。
この時はそう思ったが……
公園の入り口まで行くと、首にアルマン(イグアナ?)を巻いた社長と、ビクンビクンと変な顔になって脱力しているサラさん…と、そのサラさんの首を掴んで立たせている鷹の人が、入り口で待っていた。
少し離れた場所から唯一普通の格好をしていた寧々子さんに問われた。
『知り合いだと思われたくないから少し離れてた。しかし、残念だったね…どうだった?初めての失恋は?何か感じるものはあったかい?』
「いえ、無いです……目を洗いたいです……」
『あ、そう?そうかぁ…残念!ユカはフラれたんだな。まぁそりゃそうかぁ、もうちょっと地球外交流が見れるかと思ったけど仕方無いね。ちなみにもしもう一度付き合いたいって言われたらどうする?』
ユカがフラレた?フラレたのは僕だと思うけど…それにもう一度…確かに今はユカの事しか考えられないけど……
「え?いや、それはないんじゃないですか?まぁその時は考えます。まだまだ地球には学ぶ事があるので……」
『そーかい?地球人ではよくある事なんだよ?じゃあ、その時にまた声かけるよ(笑)案外早くなりそうだけどね〜』
『おい、クソ猫。何話進めてんだ?コイツはこれからアダルト……おい!何だあいつ、どっか行ったな。まぁ良いや、じゃあ根多建設のフラレパーティーでもしようや。この変態犬合体女(サラ)の奢りでな!領収書は切るけどな!あ、ちげぇ、家に飯あるんだ』
クズみたいな発言をした社長はともかく、こうして僕の幼馴染との恋愛は幕を閉じた…様な気がする。
何故、気がするかというと、何だが滅茶苦茶にされただけの様な気もするからだ。
僕は本当に地球のお別れを経験する事が出来たのだろうか?
それはきっと時が過ぎれば分かる事だろうと少し投げやりに考える事にした。
――――――――――――――――――――――
「結局、何だったんですかね?僕とユカは…」
『長い時間考えたのに、1ミリも名作に近づけてなかった、ゴミだな。ホラ貝らしい別れ方だ』
ここは社長の家。社長の家ではホームパーティーではないが、良く現場監督のサトルさんが遊びに来て、僕の家の大家、社長の旦那さんのヒロさんとお酒を飲んでいる。
フラレた直後…とは言うけど僕は良く感情が掴めないので聞いてみる事にする。
と言っても、僕は大体、社長以外とは話をしない。
社長がそもそも自分より下の立場の人としか話す気がないからだ。
めんどくさいらしい。
『耐久卿は言ったな、そいつは某宇宙ファイルのスカ◯ーなんじゃないか?宇宙人に洗脳されたり攫われたり…托卵もしてるかも知れないな。それだとパクリだし、それじゃあ【S◯Xファイル】のパクリだからパロのパロだな…どうしょうもねぇ。違う脚本で行こう。もし、付き合ってた?と言うお前の妄想が本当だとしたら、それこそ脚本レベルのイベント起こさないと狂ったお前がストーカーになるから派手に嘘ぶちかましたんじゃない?』
「えぇ!?脚本?僕から離れる為にあんな事を!?それは辛いですね……」
もしそうなら恥ずかしくてこの街にいれないなぁ…
『ま、とにかくお前は気持ち悪い。それだけだ』
この人は本当に酷い人だな、首に巻き付いてるアルマンも頭を激しく縦に頭を振る。
変なイグアナモドキにまで……
『ラー メン!ミカエル!チャー!シュー!メーン?バリ タカ』
『分かったから、ガブ、ラーメンは後で食べるからね?…それよりソラ君、大丈夫だよ?ソラ君は気持ち悪く無いからね?これからきっと素敵な人が現れるよ』
『ソラ!ウーバー!イーツ!ラー メン!?』
ちょっとプルプルしながらアドバイスをくれたのはサラさん。変なコスプレエナメルナースの格好がやめれない?らしく上から革ジャンを着ている。
サラさんはバイクで移動しているが今乗ったら事故を起こすからと一緒に来た。
後、鷹の人がパシリにしようとしてきたが無視した。
『感度が30倍の淫乱な殺人エルフ妹よ、今もテカテカぴっちりナースコスプレで2つお山のテッペンに固〜いボッチを浮かび上がらせるキメキメ浮気女よ、だったらお前がコイツの慰み者になれよ』
『うるさいです!アナタがしたんじゃないですか!ソラ君、この人の言っている事は多分、全部逆ですよ、参考になりませんから!』
『ちげぇよ、思い出した。オレのアルマンを慰み者にしやがって。トカゲ虐待だぞ?なぁアルマン?お前何か女風に行け』
『キョキョッ!!ギョギョギョ!!』
サラさんはこの件で一貫して優しい。
話によるとサラさんも彼氏がいるのに他の人としたらしい。
だからユカにも少し同情的だ。
『きっとユカちゃんは後悔してるよ?やり直せとは言わないけど、憎しみは何も生まないから。きっと時間が解決する、だから前に進んだ方が……』
『あーあー、お前ら女はいつもそれだ。嘘つきだな、後悔なんかしてる訳ないだろ?良い男がいたから行った。それだけ。オレとは違う』
どうやら女をやめた社長がどうしょうもない事を言った。
でも、なんかワラワラ人がいて話していて、そんな空気の中にいるとズキズキが和らぐのも事実で、僕はついダラダラと社長のお宅で夜中まで居てしまった。
夜中、二人の大人に話を聞いた。
現場監督のサトルさんと、大家さんのヒロさん。
二人も愛していた人に浮気されたらしい。
サトルさんは言った。
『もう関わんねぇのが一番良いよ。所詮、若いうちは性欲だからさ。俺みたいに性欲無くなって、落ち着きたくなったら落ち着く相手と一緒に静かに暮らす、それが一番良いよ』
ヒロさんは言った。
『そうだな、その女の子と関わると男も関わってくんだろ?そんな人の女とるような間男なんて関わらない方が良いって。イク婆さんからも言われたからさ、ソラの面倒見てやってくれって。だから変な人には関わらないのが一番だよ』
「うーん、やっぱりそんなもんですか……」
何だがサトルさんの奥さんであり、道場の師範代であるセツコさんと、秘書のカエデさん、それにヒロさんの妻である社長の目が濁っていたけど……
経験者のアドバイス…僕は胸にしまい、これからを生きようと思ったが………………
それから数日後……僕は…僕の選択は…
『ソラ!ソラ!私はもうソラしか信じない!ごめん…違うね、信じるしかないの!!だから私に道を……ついていくしかないの!例え宇宙でも化物でも!!!』
僕は肉体を失いコアだけになっていた。
ユカの体内と皮膚に張り付き生きながらえているだけ。
そして一つ言える事がある。
――そんな人の女とるような間男なんて関わらない方が良いって――
『ぃ゙グえ゙え゙ェ゙ェ゙ェ゙ェ゙ェ゙ェ゙ェ゙!!光ってるゾ!間男が!宇宙一!ホンマもんの間男だ!一緒に逝こう!絶望へ!二人で一緒に!永遠に!苦しみ!悲しみ!オバババアアアアッッッ!!!♥♥♥♥』
――俺みたいに性欲無くなって、落ち着きたくなったら落ち着く相手と一緒に静かに暮らす、それが一番良いよ――
『夜のお供にセフォルニア!サトル君の夜は月月火水木金金土日!』
『うるせぇックソ女!!お前が来るんじゃねぇ!俺が良く行く俺の欲が逝くっ!それが
僕は僕の道を行く。
何故なら大人は嘘つきだ。
そして、地球人は、皆、頭がおかしい。
※やっと本題に入れそうです………
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