第223話 右にケモミミ、左に金髪
十二月二十九日の朝である。
昨夜はシェリアさんとフーズとお酒を飲みながら、新年祭や新しく来る人たちのことを話し合った。たぶん、深夜十二時ぐらいまでしていたと思う。
それから先、俺も母さん秘伝の酔える酒を飲んでいたからか、二人と他愛のない話で盛り上がって――いた気がする。記憶が曖昧なのだ。
「いつの間にか寝ちゃったのかな……自分でベッドまで歩いてきたのかすら怪しいぞ」
どうだったかなぁ……誰かが運んでくれたのかなぁ、とぼんやりする頭で昨日のことを思い出しつつ、ベッドで横になったままグッと背伸びをする。
下着だけを身に着けた状態で、上半身は裸である。真冬とは思えない格好だけど、暖房の魔道具とステータスのおかげで、全く寒くない。
顔を右に向けると、フーズが毛布にくるまって丸まるようにして眠っている。頭を撫でると、ピコピコと耳が動いた。寝ているんだけど、フーズって頭を撫でると耳が反応するんだよな。可愛いです。
しばらく耳をモフモフしてから、体を起こそうと布団に手を突いたところで、左隣にも誰かがいることに気付く。
「? ……メノかリケットが夜に入り込んできたのかな?」
布団に埋もれているので、瞬時に誰なのかまでは判別ができなかった。なので、起こさないように気を使いながら、ゆっくりと布団をめくってみる。
「…………?」
いちど布団を戻した。目をごしごしと擦ってから、深呼吸をしたのち、もう一度布団を持ち上げる。
見覚えのある薄い金色の髪が見えた。それと同時に背中が目に入ったのだけど、綺麗な肩甲骨が見えており、衣服は身に着けていないようだった。
……ふむ。
フーズは茶髪、というか反対側で寝ている。リケットは白髪、メノは銀色と水色と足して二で割ったような色。
同じような髪色のヒカリはもう少しレモンっぽい色合いだし、ロロさんは金髪だけど、もうちょっと濃いし、ボブカットだし……。
いやいや待て、まだそうと決まったわけじゃない。まだ未婚の王女様がすっぽんぽんで一緒に寝ていると決まったわけじゃない。
だってほら、まだ明け方で暗いし、色が正しく認識できていないだけかもしれないじゃないか。それに、部屋の中には薄いオレンジの間接照明が取り付けてあるから、リケットの白い髪が光の具合で薄い金色っぽく見えているだけの可能性があるし。
「……だめだ、絶対シェリアさんだ……」
色々否定しようと思考を巡らせてみるも、どれもこれもが隣の人物はシェリアさんだという回答になってしまう。
記憶はないけど、さすがに無理やりシェリアさんを――ということはないと信じたい。そうなった場合はフーズが力づくで止めてくれるだろうし、酒に酔ってあばかれた俺の本性がそんな醜いものだとは信じたくない。
「とりあえず土下座か……? いやそもそも、一切手を出しておらず、寝ぼけたシェリアさんが勝手に俺の布団に入ってきた説だってあるじゃないか」
もう色々と見ちゃったけど、これはさすがに不可抗力ということにしていただきたい。
というか、頭まで布団に潜り込んだら呼吸がしづらくないのだろうか?
現在俺の寝室に置いてあるベッドには、大きな掛け布団が二枚と、毛布が四枚常備してある。最初の頃は両方一枚ずつだったのだけど、わりと寝苦しかったので今のスタイルに落ち着いた。
そして俺は毛布を足元に蹴り飛ばしており、布団だけを羽織った状態。右のフーズは毛布にくるまり、左のシェリアさんと思しき人物は布団だけ使用している状況。
「いやいや、布団の使用状況とか考えてどうすんだよ……と、とりあえず、顔だけでも出してあげたほうがいいよな?」
そう言い訳のように口にしながら、俺は布団をずらして金髪を外気に晒した。
うん、やっぱりシェリアさんですね。後頭部しか見えていないけれど、この長い髪と色合いは、彼女で間違いないだろう。
上半身だけ体を起こした状態で、この後どう行動すべきか悩んでいると、シェリアさんがもぞもぞと体を動かして、こちらに体を向けた。布団がずれそうになったので、慌てて場所を調整する。
シェリアさんの目がパチリと開いた。
俺の手はシェリアさんの布団を両手でつかんでいる状態である。彼女は俺の手を見て、それから俺の顔を見てパチパチと瞬きをした。
「お、おはようございます……アキトさん」
「おはようございますシェリアさん」
とりあえず朝の挨拶を交わしたけど……もしかして今の俺って、布団をはぎ取ろうとしたように見えてない? 上半身裸の男が、裸の女性の上にある布団に手を掛けている状態って、かなり状況的に勘違いされそうじゃないですかね?
「え、えっとですね、こ、これにはいろいろと理由がございまして、あの、す、すこし冷静に話すために心を落ち着けてもよろしいでしょうか?」
なぜかシェリアさんのほうが弁明をするような口調だった。
どちらかというと俺のほうがそうしなければならないような感じだったけど……こうなったらシェリアさんのノリに合わせたほうが良さそうだ。
そう判断した俺は、「もちろんですよ」とにこやかに告げるのだった。
結論。ギリギリセーフだった。
いや、未婚の王女と一緒のベッドで寝ていることをセーフとしていいのかは定かではないが――というかかなりアウト寄りだとは思うが――むしろアウトかもしれないが、ここはセーフと言わせてほしい。
冷静になったパンイチのシェリアさんから話を聞いたところ、俺はどうやらベッドに辿りつくなりすぐさま寝てしまったらしい。
というかね、昨日の夜は俺たち三人だけでなく、途中からルプルさんやユミィさん、シャルロットも参加しての飲み会になっていたらしいんだよ。
俺はその段階でかなりお酒を飲んでしまっていたようで、シェリアさんだけは『そろそろ止めたほうが』と止めようとしてくれていたみたいだが、ルプルさんとシャルロット、それからユミィさんが俺を誘って飲み比べ対決などをしたらしい。
ちなみにフーズは、最初から俺が酔ったら介抱すると決めて言っており、その言葉通り、最後は俺に肩を貸してくれて寝室まで連れて言ってくれたようだ。
で、なぜここにシェリアさんがいるのかだけど――、
「み、みなさんから、なんといいますか、こう――背中を押すというか、『いっちゃえ、いっちゃえ~』みたいな感じで言われてまして、わ、私も少し酔ってしまったこともあり――その大変申し訳ございませんでした!」
そういうことらしい。
とりあえず、無理やりなんてことが無かったようで安心したけれど――あとは寝ていたメノとリケットへの説明――それからシェリアとの今後についてだよなぁ。
~~あとがき~~
セーフ(アウト)ですね!
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