覗き見。
覗くつもりはなかったんです。
でも見てしまったんだから仕方ないじゃないですか。
その日はいつものように仕事終わり電車に乗っていました。帰宅ラッシュもあってか、中は大混雑。
ぼくは音楽を聴きながら目を瞑っていました。
一駅着いて沢山の人が乗車してきました。
ぼくの隣にいたおじさんは降りてゆき、代わりに髪の長い綺麗な女性が座ったんです。
ビジネススーツを着たスラリとした若い子。
20代序盤くらいかな?
マスク越しでもわかるくらいに美人さんで、ついつい見惚れちゃいました。
もちろんナンパなんてことはしませんよ(笑)
ぼくも別に若くはないですから。
その子はしきりにスマホを触っていました。
こんな綺麗な若い子は一体どういうのに興味があるんだろう、やっぱり美容系かな?と思い、好奇心からちょっと首の角度を上げて……見ちゃった。
そう、覗いてしまったんですよね。
あまりの光景にしばらくは目を離せませんでしたよ。
音楽なんて全然頭に入ってきません。
と、突然、女性が立ち上がったんです。
やばいバレたかな、と思ったんですが、どうやら前にいたおじいさんに席を譲るために立ち上がったようでした。おじいさんも喜んでいた。
きっと周囲からすれば綺麗で性格も良い美人のように映ったでしょう。
こういう人が世の中にたくさんいればいいなって。
でも、ぼくは見てしまったんです。
女性が無修正のリストカット画像を貼っているツイートに『早く死ねば?』『生きる価値ないんだから』『さっさと死ね』とリプライを送っているのを……。
人間の本質なんて見かけではわかりませんよね。
その女性がすぐに次の駅で降りてくれて、正直ホッとしましたよ。ああ、嫌なものを見たなぁって。
でもね、そのときに視線を感じたんですよ。
女はすぐ後ろにいました。
電車の窓にギリギリまで顔を近づけて、ぼくをジーッと眺めてた。
きっと覗いてしまったからでしょうね。
だからぼくも覗かれたのでしょう。
────────────────────
テーマ『外見/中身』
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます