親父殺害「やっぱり○○ザワ・ワ○ルは殺すしかない」

楠本恵士

第1話・クソ親父を殺害〔妄想〕

 深夜零時過ぎ──家の凸部屋にある、クソ親父の部屋で月明かりの中、返り血を浴びたオレは、床に倒れ模造刀が腹から背中まで突き抜けて絶命している、クソ親父【ワ●ル】の亡骸を、放心状態で見下ろしていた。

(ついに、やっちまった……クソ親父を殺しちまった)


 部屋に飛び散っている汚れたブタの血痕、  

 天井にも、壁にも、畳にも、数分前の惨劇がオレの脳裏にリプレイされる。


 片手持ちの木槌掛矢で、メチャクチャに強打したクソ親父ワ●ルの顔面は潰れ、もはや誰だか人相がわからなくなっていた。

 陥没した頭蓋骨の隙間から、奇妙な色の物体が露出しているところを見ると……アレがクソ親父の脳漿のうしょうだろう。


 メッタ打ちにした体も、腕や足が妙な方向に曲がっていた──(骨が折れたか……けっ、笑える)

 罪悪感はない、クソ親父ワ●ルは殺されて当然の報いをオレにした。

 高圧的や威圧的な態度で逆鱗に触れてオレを追い詰めるという、絶対にやってはならない大罪を……だから殺した。

 逃げ場を失った人間が、選択するのが殺人──それも、子供に殺されるとは、クソ親父ワ●ルも数年前は想像もしていなかっただろう。

 

 ことの発端は「家の風呂に絶対に入るな!」の一言、家でのささやかな安らぎの行き場を奪われたと感じたオレは、この時に確定した殺害意識を持った。

「風呂に入るな!」

「家から出ていけ!」


 家を出たくても、そるだけの金銭的な余裕が皆無なオレの心は、極限まで心理的に追い詰められ……身内を殺害するしか選択肢が残されていなかった。

(もう、やるしかない……クソ親父を殺すしかない)


 模造刀の切っ先を、研磨して刃物の切れ味に変えた。白刃を全部研いで真剣に変える必要はない。

 先端だけ尖って刃物化していれば、クソ親父の柔らかい腹や喉を突き通すことはできる。

 元々、日本の刀剣は突きが主流だ。数十分前の出来事が頭の中に甦る。


 ◆◆◆◆◆◆


 研磨した模造刀と、リュックに入れた掛矢やその他の殺害道具を背に、足音を忍ばせて階段を降りて。

 オレは殺害するクソ親父ワ●ルの部屋に向った。

 オレが「起きろ」と発する前に、気配に気づいた眠りが浅いクソ親父が起きる。


 クソ親父は、思っていた通りにオレが持っている模造刀を見て。

「そんなモノでどうするつもりだ!」

 と、怒鳴る。

 その言葉は想定済みだ。

 オレは薄笑いを浮かべて言ってやった。

「もう、そんな段階じゃねぇんだよ! 死ね!」

 模造刀を鞘から引き抜いて、最初に鞘でクソ親父を殴る。

 両目を怒りで見開いた、クソ親父ワ●ルの次の言葉。

「バカヤロウ! 家を出て行け!」

 それも想定していた言葉、オレは無表情で一言。


「死ね……」そう言って模造刀を何も考えずに突き出す。

 研磨した模造刀の先端は、自分でも驚くほどスルッとクソ親父の腹に刺さって入っていった。

 クソ親父の、怒鳴り声と悲鳴が聞こえたが。

 頭の中が真綿のような感覚になっていた、オレは現実ではない夢見心地で、クソ親父を殺害する。

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