3-16:オリジナルの鎧騎士復活
プロトタイプの新型「鋼鉄の鎧騎士」が順調に進んだので、初期ロットの残り二体も同じように組み上げらていった。
「うーんと、それじゃぁ始動します」
私はそう言いながら二号機の初動をさせる。
プロトタイプと同じく各種テストをして、各座して最後の三号機にも同じ初動テストを行おうとした。
「アルム、ちょっと待ってですわ」
「ん? なにミリアリア姉さん??」
三号機に乗り込もうとする私をミリアリア姉さんは止める。
何かと思って振り返って聞いてみたら注意事項を言い始めた。
「この三号機はオイリングコーティングをして見ましたわ。駆動部にこのスライムからとったオイルを使用して摩擦を軽減してますわ。その分反応速度も上がっているので、扱いには注意をしてくださいですわ」
「駆動部にスライムからとった油?」
またなんか変なこと思いついたな?
ミリアリア姉さんはたまに変なことを思いつくとそれを実行する。
例えば、退役する予定の古い「鋼鉄の鎧騎士」の機体を回収して、防御力を上げながらも双肩に魔光弾を発射できる装備を付けた中距離支援型を作ったり、城壁で長距離射撃の魔光弾が発射できる下半身を遠距離型に安定させるので、人型の足でなく荷車のような台座にしたものを同時に開発したりしている。
今までの「鋼鉄の鎧騎士」どうしの戦い方は基本人が大きくなって剣と盾での切り合いと同じだった。
それは大体の「鋼鉄の鎧騎士」が対魔処理をしているからだ。
つまり、魔法で攻撃してもダメージに繋がりにくいのだ。
しかし中距離及び長距離の後方支援や、遠くにいる一般兵や城壁兵器などに対しては旧型を遊ばせておくよりはいいだろうと変なものを作り上げてしまった。
それがキャノンタイプとタンクタイプと言う訳だ。
まぁ、「ヴィ作戦」自体が「鋼鉄の鎧騎士」を使った新たな戦略の構築なので間違いではないのだけど……
これでこれらの機体を運搬するモノでもあったらおとり部隊として活躍できそうだ。
「オイリングコーティングかぁ、まぁ多少動きが良くなるくらいかな?」
そう言って私は三号機を起動させる。
しかし機体を動かし始めて初めて気づいた。
「なんだこの感覚……」
違う。
体の隅々まで感覚が行き渡ったようなこの感覚は……
「やってみるさ!」
そう言って動かしだした三号機は別物だった。
動き一つ一つがあまりにスムーズで、頭で思った瞬間には動きだしていた。
「こ、これはっ!!」
凄い。
他の二体とは全く違う。
あまりにも凄いので予定以上にテスト項目をこなしてみて終了する。
私は各座して操縦席から降りてミリアリア姉さんの元へ行く。
「ミリアリア姉さん、凄いよこの機体!」
「しまったですわ……これは盲点でしたわ……」
しかしミリアリア姉さんは観測用の水晶を見ていてため息を吐いた。
「どうしたの?」
「どうしたもこうしたも、これって今の所アルムにしか扱えませんわ……」
そう言って水晶を見せてくれる。
そこには予定していた消費魔力、可動限界、動力魔晶石の色が全部赤になっていた。
つまり、普通の人では扱えないって事だ。
「オイリングコーティングは予想以上の効果がありましたわ。しかしその分反応速度が敏感過ぎて普通の人ではその感覚に追いつけませんわ。アルム、あなたどうやってこれを操縦したのですの? 普通の感覚では頭で思った事を手足に伝えて動かすのにどうしてもわずかな差が出来ますわよ? しかしこの水晶の結果を見ると、アルムの場合考えたと同時に『鋼鉄の鎧騎士』が動いていますわよ?」
「え~? そうなの??」
と言いながら、実は身体強化とか「操魔剣」もそうだけど魔力を体の隅々に流していると頭で思った瞬間体が動くって事が出来る。
筋肉を動かすのではなく魔力で体を動かすと言う事だ。
だから突き詰めればマリーたちが超人的な力を発揮できるのは全て魔力による効果と同じだ。
アビスも言ってたなぁ、魔族は魔力で動いていると。
となれば、この「鋼鉄の鎧騎士」も同じく、魔力で動いている。
だからその感覚で動かせば思った瞬間に動かせるわけだ。
「ふう、まぁ今更ですわ。私の旦那様はそこいらにいる普通の殿方とは違うのですわ」
フンスとドヤ顔でそう言うミリアリア姉さん。
あの、私あなたと一緒になるって認めてないんですけど……
「アルムくぅ~ん、アマディアス兄様が呼んでるわよ~」
ミリアリア姉さんの妄想を断ち切るかのようにアプリリア姉さんがやって来た。
一体何なのだろう?
私は首を傾げアマディアス兄さんの元へと行くのだった。
* * * * *
「つまり、二号機を持ってミリアリア姉さんとレッドゲイルに行って来いって事ですね?」
「うむ、この件は早急にオリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』を復活させ、更にその存在を誇示する必要がある。内外的にも現在オリジナルの『鋼鉄の鎧騎士』がレッドゲイルにあると言うのは周知の事。『鋼鉄の鎧騎士祭』だけ動くお飾りで無い事を示さなければならんのだよ」
アマディアス兄さんの所へ行ったら二号機を早急にオリジナルの旧型の素体と交換して欲しいとの依頼だった。
まぁ、もともとそのつもりでいたのでやぶさかではない。
でもここまで急だとは。
「……ずいぶんと急な話ですね? 三号機がやっとロールアウトしたばかりだと言うのに?」
「……ドドス共和国に動きがあったんだ」
「えっ?」
アマディアス兄さんのその言葉に私は驚く。
まさか、ドドス共和国って。
「またあいつら何か仕掛けてくるつもりなんですか?」
「この五年間でいろいろと準備をしていたようだ」
アマディアス兄さんはそう言って深く椅子に座り直してから話始めるのだった。
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