3-6:レッドゲイルへ
「くぅううぅ~、公務さえなければぁ!!」
「私もどうしても外せない用事が……」
「お兄様! 絶対にミリアリア姉さんと婚約なんかだめですよ!」
出発する時に姉妹たちが見送りしてくれるけど、なんか言ってる。
「アルムよ、イザーガには連絡を入れているが魔鉱石の加工、よろしく頼むぞ」
「分かっていますって、アマディアス兄さん。うまくいけばやっとイータルモアが持って来た連結型魔晶石核が使えますね!」
アマディアス兄さんも見送りに出て来てくれている。
そして魔鉱石の早期精製を望み、いち早く新型の「鋼鉄の鎧騎士」を完成させてもらいたいようだ。
「僕も行きたかったんだけどね~。どうしても外せない用事が出来てしまってね……」
シューバッド兄さんもそう言ってとても残念そうにしているけど、どうしても外せない用事って……
「シューバッド兄さんもしかしてそれってガレントの……」
「あれ? アルムに話したっけ?? まぁそれなんだよ。僕としてはもう少し自由にしていたいんだけどね。アマディアス兄さんがイータルモア義姉さんと一緒になってガレントの姫君との話が無くなってしまったからね。年齢的にガレントの姫君と僕じゃ合わないから公爵家の令嬢ってなってね。ガレント王家の血筋の公爵家らしいから無視はできないしね」
そう言って軽いため息を吐く。
王族としての責務となる訳だけど、思わずエシュリナーゼ姉さんを見る私。
「な、なによ? 私はいいのっ! アルムがいるんだから!!」
「いや、腹違いとは言え実の弟相手に何言ってるんですか……」
この姉、本気で私を狙いに来ているらしい。
ある意味頼りになりある意味味方のはずなのだが一番危険なマリーがいるから夜這いはされないものの、第二次性徴の証が明白になった時点でマリー含め私は身の危険を感じてしまう……
いっそどこかに逃げ隠れてしまおうか?
そんな事を思いながら馬車に乗る。
そして私たちはレッドゲイルへと出発するのだった。
* * *
「んふふふ~♪ アルムが一緒ですわぁ~♡」
「あの、ミリアリア姉さん? 分かっていると思うけど僕たちの今回の目的は魔鉱石の精製だからね?」
「分かっていますわよ。でも、アルムも協力してくれるって話、忘れないで欲しいですわ♡」
上機嫌なミリアリア姉さん。
私は少し不安になって外を見る。
現在外ではカルミナさんとアビス、そしてマリーが魔物たちを殲滅していた。
「アマディアス様ぁいけずぅニャ! なんでこの大事な時にアルムの護衛ニャ!? あたし今発情期でチャンスにゃのにぃニャっ!!」
「猫、そこうるさいです! きますよ!!」
「くーっくっくっくっくっくっ、魔物相手なら容赦はいりませんね? 久々に思い切りやらせていただきましょう!」
どッガーン!
ばっゴーン!!
馬車の外では三人が張り切っているので他の護衛の人たちは手出しが出来ずに呆然としている。
うん、平和だねぇ~。
「アルム様、片付きました」
「アルム、早く用事を済ませるニャ! 一刻も早くアマディアスの様の元へ戻って子作りするニャ!!」
「くーっくっくっくっくっ、我が主の進む道を妨害するとは、何と愚かな。我が主よ、ごみの掃除が済みました」
どうやら終わったようで、三人は馬車に戻って報告をしてくれる。
私は頷いてからまた馬車を出発させてもらう。
「ねぇ、アルム。この三人がいたら『鋼鉄の鎧騎士』いらないのじゃないのですの?」
「うーん、それはあるかも……」
道の横にかたずけられた大型を含む魔物たちの死骸を横目にミリアリア姉さんがそう言う。
確かにこの三人、特にアビスの戦力が有れば魔物どころか国の軍隊相手でも対抗できるだろうけど……
『巨大ロボットは男の子のロマンなのよ!』
「アルム? なんですの今の言語は? 聞いた事のない古代言語ですの??」
思わず日本語でそう言ってしまい、ミリアリア姉さんに聞かれて我に戻る。
最近体の成長に伴って多少は男の子の気持ちが分かるようになってきた。
なのでつい、前世で聞いたセリフを言ってしまった。
首をかしげて見ているミリアリア姉さんに私は苦笑して言う。
「いや、それでもオリジナルはちゃんと動くようにしないとね。僕が壊したようなものだから」
「ふふふ、そうでしたわね。でも私にとってはそのおかげでこの五年間ずっとアルムといられたのは良い事ですのよ?」
笑いながらそう言うミリアリア姉さんに私は頷き思う。
そうか、この五年間でブルーゲイルで好きな人が出来たと言う事か。
「鋼鉄の鎧騎士」開発に関わり、結果ミリアリア姉さんもマルクス叔父さんから帰って来てお見合いしろとは言われないで済んでいるのだから、良かったと言う事か?
「なんにせよ、早い所新型の『鋼鉄の鎧騎士』を完成させなきゃね!」
「そう、ですわね」
私たちはそんな話をしながら馬車に揺られレッドゲイルへと向かうのだった。
* * * * *
「アルム! よく来たな!!」
「来たね、アルムエイド君。久しぶりだね」
レッドゲイルに着くとエイジやイザーガ兄さんが出迎えてくれた。
「お久し振り、エイジ、イザーガ兄さん」
「ただいま戻りましたわ……」
私もミリアリア姉さんも挨拶をしてから屋敷へ入る。
荷物はすぐに工房へ運ばれている様だけど、まずはマルクス叔父さんに挨拶もしなきゃならない。
大きな屋敷の奥の部屋に私たちは連れられて、扉をノックする。
コンコン
「入れ」
中からマルクス叔父さんの声がして、扉を開くとそこは執務室のようだった。
大きなテーブルの奥にマルクス叔父さんは書類から顔をあげて私たちを見る。
「お久し振りです、マルクス叔父さん」
「ただいま戻りましたわ、お父様」
私とミリアリア姉さんがそう挨拶をすると、険しい表情のマルクス叔父さんは立ち上がり私たちの前まで来る。
そして仰々しく話始める。
「よく来られたアルムエイド殿下、しかし殿下にはその誠意を示してもらわなければなりませんぞ?」
「はいッ?」
いきなり険しい表情でそう言うマルクス叔父さん。
一体どう言う事なんだ??
「それなら私の気持ちはずっとはっきりしてますわ! アルムエイド!!」
訳が分からないままいると、ミリアリア姉さんがいきなりそう言いながら私の手を引っ張る。
そして私の両の頬を手で押さえていきなりキスしてきた!?
ぶっちゅぅ~♡
「んむぐぅっ!?」
え、なになに?
なにこれ?
一体どう言う事ッ!?
ちゅぽんっ!
「こ、これでお分かりですわね、お父様? 私はアルムエイドと一緒になりますわ!!」
ミリアリア姉さんはいきなり私の唇を奪ってからそうマルクス叔父さんに宣言するのだった。
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