3-3:新型の開発経過
「本当ですのそれっ!?」
私とミリアリア姉さんは新型の開発途中にイータルモアが懐妊した可能性の話をしていた。
当然の事ミリアリア姉さんは驚き、私にその真意を確認する。
「まぁ、相手が人族なら確実だろうね。カルミナさんもアマディアス兄さんに取り入って関係を持ったって言ってたけど、兄さんって何考えているんだか……」
相変わらずアマディアス兄さんは私に対してはやたらと優しいけど、計算高い所は健在だ。
なので、正妻のイータルモアはまだしも、カルミナさんとか有力な貴族の女性にも手を出しているのは絶対に何か企んでいるはずだった。
「でもこれでとうとう王位第一継承権を持つアマディアス兄様は更なる盤石の強化が出来ましたわね」
「そこまで準備する必要があるの?」
「当然ですわ。私たちの父であるマルクス王弟は本来継承権第一位を持っていましたわ。しかしあなたが生まれ、イザンカの王家が安泰と悟るとその継承権をあなたたち兄弟に明け渡しましたわ。レッドゲイルはブルーゲイルに何か有った時の為の存在。しかし王家が安泰で世継ぎも安泰なら完全にイザンカ王家の側面からの手伝いをするのが筋。その為のレッドゲイルですわ」
ミリアリア姉さんはそう言って私を見る。
「もっとも、王家の血を濃く残す為には私とアルムが夫婦になるのはやぶさかな事ではないのですわよ?」
「いや、ミリアリア姉さん僕との年齢差分かってる?」
「あら、アルムは私の事嫌いですの?」
そう言ってミリアリア姉さんはウルウルとした瞳で私を見上げる。
本来私より長身のミリアリア姉さんにしてはやたらとあざとい仕草だ。
「あのね、僕はミリアリア姉さんもエシュリナーゼ姉さんも、アプリリア姉さんもエナリアだって姉弟として好きだよ? でも結婚したいとかそう言うのは別問題だよ?」
「……可愛くありませんわね、ここは嘘でも好きと言う所ですわ」
そう言って頬を膨らませて怒る。
しかし残念ながら私は女性への興味がとんと湧いてこない。
美少年からイケオジまでの範疇なら触手が動くのだが、美少女はねぇ~。
多少は生理現象で体が男の子として反応する事はあっても、女性を見てそう言う気分にはまずならない。
先日だってみんなして私がお風呂に入っている所へ裸で押し寄せても何も感じなかった。
そのくらい私は女性には興味がない。
「まぁ、いいですわ。まだまだ時間は有るのですから……」
そう言ってミリアリア姉さんはまた新型の「鋼鉄の鎧騎士」開発に取り組むのだった。
* * *
「魔鉱石を使うのですの?」
「はい、実はエマリエルさんから聞いたのですが、魔法学園ボヘーミャの所蔵している書籍で『鋼鉄の鎧騎士』に使われていたフレームにはモノによっては魔力伝達の良い魔鉱石が使われていたらしいのです」
私がそうミリアリア姉さんに伝えると、しばし考えこむ。
「確かに、今まで魔力伝達の悪さを考慮して基部ごとに中継の魔晶石を設置してましたわ。しかし、伝達率が良ければ余分なものがない分出力も反応速度も向上しますわ……」
ぶつぶつそう言いながら新型の「鋼鉄の鎧騎士」の設計図を見る。
三面図の横に内部の魔力伝達回路について書かれたものがあるけど、イザンカ製の「鋼鉄の鎧騎士」は基本全て体の要所要所に中継のデバイスとなる魔晶石が設置され、そこへ中央の動力源から魔力が流れ込む。
常に魔力が一定量あるので、スピードは出るがそれ以上のパワーが上がらないという欠点がある。
しかし、高出力の動力源から常に動力に魔力が流れるなら……
「流せるだけ魔力を流せるからパワーもスピードも格段に上がりますわ!」
「やっぱり! じゃぁさ、市場に出回っている魔鉱石をもっと仕入れようよ!!」
「それは…… そうなのですが……」
ここでミリアリア姉さんはもごもごと言い淀む。
一体何が問題なのだろう?
「何か問題でもあるの?」
「問題は魔鉱石は加工が難しく、今のイザンカの技術力では思うように加工が出来ないのですわ」
そう言えば、素材の魔力伝達が悪いのは精製の過程で高純度が引き出せないからだった。
確かにうちの工房ではこれ以上の精製は難しいかもしれない。
「あ、そう言えばレッドゲイルの工房はどうなったの? イザーガ兄さんと連絡が取れたんじゃないの?」
「出来たには出来たのですが…… 炉の温度を上げるための魔力が足らないのですわ」
「魔力不足かぁ……そうだ! うちで再生している魔晶石を使ったらどうだろう? 使い終わった魔晶石をこっちへ持って帰ってくれれば、僕がいくらでも再生するよ!」
「あっ、ですわ!!」
そう、現在イザンカ王国の商用産業の一つ、魔晶石の再生は私がいれば一気にその効率が上がる。
と言うか、魔力注入が容易にできる。
いつもは魔力量の多い人がエマニエルさんの指示の元ローテーションで魔力を注入しているけど、一日の生産量なんて微々たるものだ。
大きな魔晶石だと数人がかりで数日かかる。
でも私がいれば一瞬で済んでしまう。
……相変わらずおこぼれの魔力をアビスが狙っているけど。
「そうでしたわ! アルムがいれば魔力炉の魔力不足は解決できますわ!! しかも魔晶石はアルムがいれば何度でも再生できるし、これならいけますわ!!」
「じゃぁ、とうとう素材も何とかなりそうだね!」
「ええ、すぐにでもイザーガ兄様に連楽しましょうですわ!!」
私とミリアリア姉さんはそう言ってすぐにレッドゲイルへ連絡を取るのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます