第三章:イザンカ王国
3-1:気が付いたら五年が過ぎてました
「アルム! そっちのフレームは魔力伝達率が悪いですわ! 製造工程で不純物が入っていませんの?」
ミリアリア姉さんはそう言って魔力伝達の状況を水晶球で確認していた。
さてさて、あれから五年の月日があっという間に流れていた。
私は先日十歳の誕生日を迎えて五年ぶりにあの面倒くさい誕生日会を開いた。
まぁ、相変わらずだったけどね。
そしてこの五年間、レッドゲイルからこちらブルーゲイルにいとこのミリアリア姉さんがずっと来ていて、「鋼鉄の鎧騎士」の魔道技師たちに混ざって私と共にあの壊れた「鋼鉄の鎧騎士」を修復……いや、結果的に完全心機一転で開発を始めていた。
なにせ、イザンカ王国の「鋼鉄の鎧騎士」の歴史は古く、約千二百年近い歴史がある。
初めて「鋼鉄の鎧騎士」を導入したガレント王国が千四百年前と言われているから、本当に長い歴史だ。
ただ、驚かされるのはその設計思考だった。
私も詳しく無かったけど、この五年間でよく分かった。
はっきり言ってまったく進歩してなかったのだ。
誰も「鋼鉄の鎧騎士」を改良とか、進化とかそう言った考えが全く発生していなかったと言う事だ。
勿論、私にしてみれば信じられないものだったけど、結局下手に改造やら何やらをするより、今まで通りで動いていれば必要最低限の事は出来るのでそれで良しと言う考えらしい。
が、現在私たちの手元にはイータルモアが嫁入りで持って来た連結型魔晶石核と言うとんでもない出力を発揮する動力源のコアがある。
二年前、正式に結婚をしたアマディアス兄さんは、この連結型魔晶石核のコアをイータルモアからたくさんもらって大喜びだったが、いかんせんうちの「鋼鉄の鎧騎士」がそのパワーに耐えられなかった。
そのまま装着すると、私がその昔壊したオリジナルの中身であった素体同様すぐにオーバーヒートして止まってしまうか、魔力伝達回路が焼き切れてお釈迦になってしまうかだった。
余談だけど、アマディアス兄さんとイータルモアの結婚式はイザンカ風でやって、あちらの参列者はタルメシアナさんと、人の姿をしたタルメシアナさんとそっくりで、もうちょっとお姉さんっぽい黒龍とその娘だか何だかよく分からないけどやはりよく似ている髪の毛と瞳の色だけ違う美少女が参列していた。
なんか参列者全員がもの凄い威圧感あって、貴賓席からほとんど動かずにいたので私も遠目になるべく関わらないよにしてたけどね。
話がそれたけど、ちょうど私とミリアリア姉さんが中心となってオリジナルの中身を直そうとししていた所、どうせならとアイデアを出し合いながら修理をしているうちにだんだんとあっちもこっちもいじり始め、結局原型をとどめなくなってしまった為に、イータルモアが持ち込んだ連結型魔晶石核を搭載できる新規の「鋼鉄の鎧騎士」を開発する事となってしまった。
「アルム君~! お茶しましょうよ~!!」
「アルム! 来てやったわよ!!」
「お兄様、お茶の時間です!!」
「はぁ~、僕の方の仕事もひと段落だよ。アルムお茶しようよ~」
相変わらず兄や姉妹は私の所へやって来る。
するとミリアリア姉さんが私の首元をグイッと引っ張って言う。
「まだ駄目ですわ! これだけやったらお茶をしてもいいですわよ?」
「え~、いい加減ひと休みしようよ、ミリアリア姉さん……」
正直この五年間、厄介な姉が一人増えたようなものだった。
ミリアリア姉さんったら、マリー顔負けに私にちょっかい出して来るからお風呂だろうが何だろうが一緒に入って来てその都度エシュリナーゼ姉さんやアプリリア姉さん、エナリア含めて大騒ぎになっていた。
あ、マリーとも誰が一緒に布団に入るかとかしょっちゅうもめている。
いい加減にしてほしい所なんだけどなぁ~。
正直この身体にも慣れてきたらば、男性としての機能とかもちゃんと動いていて、おどろた事に小さな頃から男の子ってあれがある程度ぱお~んするのね!
実際はに第二成長期にでもならないとぱお~んしないと思ってたけど、何とある程度の大きさには生理現象でぱお~んするのだった。
お姉さん、そんなの知らなかったわよ。
となると、エイジもシューバッド兄さんも幼少期からパオ~んしてたんだ///////
もうそれ考えちゃうと、十二、三以上からの守備範囲がなんか広がっちゃいそう///////
最近は自分と同じくらいの歳頃の男の子見る目が変わっちゃった♡
そんな事を考えながらやることやってアプリリア姉さんたちとお茶をする。
あ、ちゃんとマリーが給仕してくれてますよ?
そうそう、またまた余談だけどマリーは今年二十七歳になるはずなのだけど、五年前とほとんど見た目が変わらなかった。
エシュリナーゼ姉さんなんか二十歳になったのでだいぶお肌のケアとか気にしてたけど、その都度マリーにどんなお手入れをしているか聞きに行ってた。
ただ、マリー曰く「何もしていませんが……」とか言ってエシュリナーゼ姉さんが「そんなはずないわ! なんでもいいから教えなさい!!」とか言ってマリーを困らせていたけど、先日こっちも外観が全く変わってないイータルモアに聞いたらどうやら竜の血のせいらしい。
竜族は体が必要な大きさにまで成長したら後はその姿のままゆっくりとしか成長しない。
よく野生の鹿とかが生まれてすぐにでも立ち上がれるように、竜族もある程度の体の大きさにまでは順調に短期間で成長するらしい。
これは自然界で生き延びる為のモノなのだろうけど、イータルモアやマリーのように人型の場合もある程度の身体までは人族同様に普通に成長するけど、その後がゆっくりとしか老化しないらしい。
なのでこの二人は五年前とほぼほぼ見た目は変わっていない。
「はぁ~、また失敗したニャ~」
「カルミナさん、いい加減アマディアス兄さんの事諦めたら?」
しっかりとお茶会に参加している獣人猫小娘……いや、もうキャットウーマンのカルミナさんは大人の魅力まき散らしながらあの大きな胸を揺らしビスケットをかじる。
もう二十三歳かぁ……
それに反応するシューバッド兄さん。
シューバッド兄さんもミリアリア姉さん同様に今年十八歳だ。
美形なゆるふわ系兄はもろ好みだったりするけど、カルミナさんのおっぱいに反応するのは面白くない。
「予定よりだいぶ遅れていますわね…… はぁ~いつになったらあの連結型魔晶石核を試せるのかしらですわ……」
お茶を飲みながらミリアリア姉さんは書類に目を通しながらぼやく。
「何? まだうまくいかないの?? あなたが付いていながらふがいないわね!!」
「エシュリナーゼ姉さん、そうおっしゃいますが素材自体からの問題ですわ! 我がイザンカの工房では純度の高い素材の生成が出来ていないのですわ!!」
うわ、また始まったよ……
エシュリナーゼ姉さんもミリアリア姉さんも何か有るとすぐにぶつかる。
それは私のこと以外でも。
ほんとうに仲が悪いのじゃなのだろうかと思えば、やたらと意気投合して一緒にお酒とか飲んでいる時もあるらしい。
何と言うか、悪友同士みたいな感じだな……
「素材工房と言えば、先日レッドゲイルのイザーガ兄様から連絡があってあちらの工房が出来あがったって言ってましたね?」
「それ本当なのですのアプリリア!? イザーガ兄様、その話私にはしてくれませんでしたわ!!」
お菓子の追加を出していたアプリリア姉さんが思い出したかのようにそう言うと、ミリアリア姉さんは憤慨する。
いや、その話先日風のメッセンジャーであったはずなんだけど。
ミリアリア姉さんも一緒に聞いていたはずだけど。
と言うか、あの時はなんかやたらと書類とにらめっこしてておざなりだったんですけど。
ため息をついて私は言う。
「ミリアリア姉さん、とりあえずイザーガ兄さんに問い合わせてみようよ。もしかすると魔力伝達精度の高い素材が手に入るかもしれないよ?」
「そう、ですわね。早速連絡をして見ますわ!」
そう言ってミリアリア姉さんは立ち上がり、すぐに行ってしまった。
「まったくせっかちだなぁ」
そんなミリアリア姉さん後姿を見送りながら私はぼやくのだった。
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