雪の玉の完全犯罪?

澄瀬 凛

雪の玉の完全犯罪?

 とある大会の最中、ひとりの人物が命を失った。

 その日。雪合戦の大会が催されおり、数々の雪の玉が飛び交い、そのうちの複数の雪玉の内部に石が紛れ込んでいた。その一種の凶器にもなり得る雪の塊が被害者の頭に何度も当たり、被害者の頭部には、固いものが複数当たった痕跡が残っており、それが死因となったとされた。

 雪玉には当然指紋はついていなかった。雪合戦は皆、手袋着用の上で行うからだ。しかも石の入った雪玉は複数見つかっており、一体誰が石を雪玉に混入したのか判別するのも難しい。

 だが雪玉に石が偶然混入することは考えられず、誰かが意図的に雪玉の中へ石を入れ、そうして被害者をわざと狙い、死に至らしめたことは確か……のはず。


 まさか雪玉に当たって人が死んだ事例など早々にない。ましてやそれが殺人事件として扱われたことなんて。警察は複数の雪玉に複数の石が混入していたという不自然な状況はあれど、この一件を事故死として処理しようとしている。どうにかこの事件を、あなたの力で解決してくれないか、という依頼なのだが。

 まず第一に、一面銀世界の雪景色のなかにそんな複数の石ころがゴロゴロと転がっている訳はない。ということは、犯人はあらかじめ、大量の石を会場のなかへ持ち込んでいたということだ。そんなものを目立たずに持ち込むには、一体どんな入れ物が必要になるか。


「この仕事も、楽じゃないな」


 頭を回転させながら、名探偵はそんなことをぼんやりと呟いた。

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