承認欲求堕天使。

猫野 尻尾

第1話:マッチングサイト。

俺は現在中小企業に勤める23歳、独身。

都心からかなり外れた訳ありマンションで独り住い。

訳ありって言うからには俺の部屋で何かあったんだろうくらいのことは

多分に想像はつく。


だけど俺には霊感なんかないから、その手のモノを見ることもないし、

金縛りとかにかかったこともない。


幽霊でもいいから俺の彼女になって欲しい。

幽霊でもいいからエッチしたい・・・あ、幽霊は下半身がないから無理か?


で、もう3年ほど女っ気がない・・・だから無性に彼女が欲しいって思ってる。

今の会社は男性社員が主で数人いる女性の社員はみんなおばちゃん。

若い子なんか入ってこないから社内恋愛なんて皆無。


これでも学生時代は少しはモテたし、付きあってた彼女だっていた。

でも、社会人になって女の子の匂いがまったくしなくなった。

彼女がいないとますます性に貪欲になる。


我慢できず風俗にでも行こうかって思う食らう性欲が盛んな時期。

だけど風俗なんてひとりで行く勇気はない。

それに俺は体の満足だけじゃなく恋愛がしたいんだ。

女の子とラブラブしたい。


とある土曜日、休日のことボーナスが出たがこともあって、ご褒美にひとり

でもいいからまじで風俗にでも行こうかと考えていたところにマッチングサイト

の広告が目に入った。


マッチングか?・・・。


だから試しにアカウントを作ってとりあえずログインしてみた。

そして興味本位で掲示板を眺めていた。

するとそこに、「19時過ぎに御蔵駅みくらえき近くでうんぬん」という募集があって

その投稿主のプロフィールには「JKです」と書いてあった。


JK?・・・バカだからスケベ心を出してそこに俺は引っかかった。


だから「初めまして、僕は「加藤 意志郎かとう いしろう」って言います、

歳は23歳の社会人です・・・よかったら御蔵駅でお会いできませんか」って

半信半疑でメッセージを送った。


すると「はい、分かりました、よろしくお願いします」と彼女から返事が

返ってきた。


彼女の名前は「天咲 来羅 あまさき らいら」歳は17歳。


17歳でマッチングって?・・・絶対、訳ありだって思った。

だけど会いたいって気持ちの方が強かった。


それでもまだ半信半疑。

あまりにすんなり決まったし・・・しかも相手はJK。

Just Kiddingの略で「冗談だよ」という意味なんじゃないかって思った。


で、指定された日の19時に御蔵駅駅舎の入り口で俺は彼女を待っていた。

数人の女子高生が俺の前を通り過ぎて行った。

でも立ち止まる子はひとりもいなかった。


彼女がなかなか来ない中、しばらく待っているとポツポツ雨が降りはじめた。

俺は、雨に濡れるのが嫌だったから駅舎の中に入ろうとした。


そしたら・・・


「ごめんなさい・・・遅くなって・・・」


そこに現れたのは、傘を差した高校の制服を来た細身の女の子。


「間違ってたらごめんなさい、「加藤 意志郎かとう いしろう」さんですか?」


その子は確かめるようにそう言った。


「あ、はい・・・そうです・・・」


君「天咲 来羅 あまさき らいら」さん?」


「はい」


17歳にしては大人びて見えたから高校生?と目を疑った。

まあ、いいや偽物の女子高生でも、女子大生でもこのさい関係ないし。

僕は久しぶりの制服と女性のなんとも言えない生々しい匂いに興奮していた。


「とりあえず、こんな時間だし・・・ご飯でも食べに行きます?」


「はい・・・私、お腹ペコペコです」


そう言って彼女は笑った。


その一言とその笑顔で僕の中にあった彼女に対する猜疑心が一気にどこかへ

飛んで行ってしまった。

なんて屈託のない笑顔・・・素直な言葉・・・もしそれが芝居だったとしても、

男なら誰でも彼女にやられてしまうだろうって思った。


彼女にはいろいろ聞いてみたいことがあったけど、とりあえず先に飯。

だから僕は駅近くにレストランへ彼女を連れて行った。


これから、もし彼女と付き合うことになっても僕にはもったいなくらい

見た目、最高の相手だと思った。

とにかく彼女は可愛いかった・・・こんな可愛い子がなんでマッチング?


まあ、彼氏がいないからマッチングなんだろうけど・・・?

いやいや彼女にビジュアル的に見ても彼氏がいないってのも変だし・・・

それとも面白半分?・・・誰でもいいから手っ取り早く遊びたかった?


そういうこと?・・・考えればきりがない。


出会った形はマッチングだけど、でもこのまま飯を食って「はい、さよなら」は

したくなかった。

もし、遊びだったとしてもそれでもいい。

言葉では言い表せられない彼女の不思議な魅力はこの時点で僕の心を完全に虜に

していた。


つづく。



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