第5話 絶叫
「よいか、アクタ、ウツロ。わしはおびただしい数の人間を
「おそれながらお師匠様、それは先ほどもお聞きしました。しかしそれが何でしょう? 生きるために他を
ウツロはこのように申し立てをした。
アクタも言葉には出さずとも同意している。
「もう十年ほど昔のことになるが、わしはある政治家の暗殺を依頼された。わしはすぐにその男の
「なんと、そのような
「最後まで聞いてくれ、ウツロ。わしは身辺調査の過程で、万城目優作が国際的なテロ組織から何度も
「その話が、いったいどうつながるのでしょう?」
話の筋が見えない。
アクタはぶしつけを承知で、おそるおそる質問をした。
「わしは万城目の娘、日和のことが気にかかっていた。ちょうどお前たちと同じ年ごろだったからだ。わしはなんとか、彼女だけでも逃がしたいと考えた。父親を殺せば彼女は
ウツロとアクタはごくりと
「万城目日和はその会場にいたのだ。父が忘れたスピーチの原稿を届けるという理由で。こっそり行ってパパを驚かそうという、子どもの発想で」
まさかと、二人の顔に冷や汗が浮き出る。
「わしはこの
人殺しいっ!
お父さんをっ、返してえええええっ!
「わしは名状しがたい恐怖に
ウツロとアクタは絶句した。
「そのとき以来、わしの頭の中には、あの少女のことがつきまとって、離れなくなってしまった。あの声が、わしに
まるで
ウツロもアクタも身じろぎすらできずにいる。
「あの少女がお前たちと重なる。お前たちが成長するごとに、わしの頭の中のあの少女も大きくなってくるのだ。そしていつか、わしに
このように彼は、精神の中に巣食う
普段の
「だからもう、わしは耐えられなくなった……この稼業を、続けることに……アクタよ、ウツロよ、どうかわかってくれんだろうか? このとおりだっ――!」
似嵐鏡月はやにわに頭を
「おやめください、お師匠様!」
「頭をお上げください、お師匠様!」
ウツロとアクタは
「アクタ、ウツロ……
*
その後、三人は会話も
二人は順番に湯につかったが、先ほどのことが頭から離れない。
不器用ながらも親を演じようとする態度に、彼らは人知れず
その涙は文字どおり、
風呂から上がったあと、ウツロとアクタは薪をくべると申し出たが、似嵐鏡月に「残り湯で入るから、お前たちは休みなさい」と、逆に気づかわれた。
彼らは
言葉は、ない。
アクタは頭の下に両腕を組んで、天井をボーっと見つめている。
いっぽうウツロは、
(『第6話
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