桜の朽木に虫の這うこと

朽木桜斎

第1作 桜の朽木に虫の這うこと

プロローグ

第0話 召喚

「すばらしい! この、魔王桜まおうざくらの力さえあれば……」


 BC(紀元前)399年、古代ギリシャ。


 神殿を埋めつくす巨大な「桜の木」に向かい、白衣の巫女は金髪を振り乱し、両手を高く広げた。


「このディオティマが、全知全能に……オリュンポスの神々すら、蹴散らせる存在に……」


 顔面を切り裂くように、口角がつり上がる。


 一本の枝が触手よろしく忍び寄ってきて、巫女の額をぐさりと貫いた。


「知恵が、力が……わたしの中に、流れこんでくる……!」


 「魔女」は笑いが止まらない。


「ふふっ、ふははははは!」


 この女・ディオティマが、この物語の主人公・ウツロと出会うのは、このときから2000年以上経過したのち・・・・・・・・・・・・・であった――

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