第2話 手持ちカメラは不便だろ
「……へえ、ダンジョン配信用の小型ドローン」
これまで、多くの配信者は自撮り棒やゴー〇ロで撮影を行ってきた。それは、片手が塞がるというリスクを抱えていて、接戦の画を撮るのは難しい。
そんな中、ダンジョン配信用の小型ドローンが開発され、近々発売が開始されるという情報が出た。
「え、ドローン出るの?」
「そうらしい」
親友の友部奏人が、ドローンの情報につられる。俺はよく彼の家に入り浸っている。
「えー俺買おうかな」
「なんでだよ配信もしてないのに」
「いや、シンプルに暗視性能高そうだし、攻撃勝手に避けたりしてくれそうじゃん」
「……確かに、ダンジョンくらいから暗視性能はあるはずか。攻撃は……ある程度は避けれるけど、そんなに俊敏には動けないみたい」
ダンジョンが現れてまだひと月と少しだから、そこまで性能の高いものは開発できなかったようだ。
「売れるだろうな、配信用ドローンのパイオニアだし」
「ていうかこれ、ダンジョン配信より配信者スレイヤー配信に向いてそうじゃない?」
「そうじゃん。モンスターは動くものに攻撃する。ドローンも壊されてしまうかもしれないけど、人間はわざわざカメラを先に壊そうとはならない」
奏人の気づきは素晴らしいものだった。
「またもや非リア拗らせ男こと碧の闇堕ち配信が加速する……」
「それもこれも、固有能力が外れだったのが悪い。もっといい固有能力だったら俺も配信で人気者に」
「ダンジョン登場以前の〇ouTubeと同じく、チャンネル登録者十万人超えのダンジョン配信者は全体の一パーセントに満たない」
「マジレスするな」
固有能力。
ダンジョンにひとたび足を踏み入れると、固有の能力が発現する。それを人々は文字通りに固有能力と呼んだ。
あくまでこれは一般的な名称であって、中二病は普通に「術式」とか呼ぶし、「スキル」と呼ぶ者も「呪術」と呼ぶ者もいる。呪術〇戦の読みすぎではないだろうか。
「っていうか、最近の面白い話一個あるんだけどさ」
「なになに」
「飼い猫をダンジョンに連れて行ったら、固有能力が発現したらしい」
「何の固有能力?」
「背中から天使の羽が生える」
「ああ、天使の羽ね」
固有能力・天使の羽。飛行能力を得ると同時に、ある程度の範囲での体重操作を可能にする。
ある程度の範囲とはどれくらいかというと、ランドセルの重さくらいである。ちなみに、生えてきた羽は引っ込めることもできるらしい。
「俺そろそろ帰るわ」
「わかった。明日も配信するの?」
「ああ。一刻も早くダンジョン配信を流行から抹殺したい」
「殺意が強いね……。まあ、気を付けて」
なんだかんだで俺のことを心配してくれる彼は、いい友人なのだろう。
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