オズワルド
入学式が終わり、アルフェンたちF級クラスは、学園内にあるF級教室へ向かった。
向かったと言っても、F級の待遇は非常に悪いので予想通り。
学園の教室棟ではなく、教室棟脇にある物置小屋の隣にある木造の平屋だった。
教室を見るなり、ラッツは嗤う。
「あっはっは。ここまで露骨だと怒りもしねーな」
ケラケラ笑うラッツ。アルフェンは壊れかけた引き戸を開け、教室内へ。
あまりにも酷い教室だった。
埃っぽく、窓ガラスには亀裂が入り、椅子や机はボロボロだ。
すると、女子の一人がアルフェンを押しのけ教室内へ。
「まずは掃除ね。さ、みんなでやるわよ!」
女子はパンと手を叩き、クラスメイトたちに言う。
いきなりのことに、今までクラスを仕切っていたラッツが前に出る。
「おいおいおい。いきなり仕切りだして委員長かオメーは」
「ふん。この教室の有様を見て、思ったことを言っただけよ!」
「ははーん? つーかよ、いきなり仕切るなよ。仕切るならなんで最初から、採寸のときや係決めから仕切らねーんだよ?」
「そ、そんなのどうでもいいでしょ! さ、さっさと掃除するわよ。先生も来ちゃう!」
女子とラッツがギャーギャー騒ぎだしたので、アルフェンが止めた。
「はいはいそこまで。さっさと掃除しようぜ」
「おいアルフェン。この仕切り屋には一言……」
「誰が仕切り屋よ!」
「あーもううるさい! 掃除すんだろ? えーっと……名前」
「あたしはレイチェルよ! フロンティア男爵家の五女レイチェル!」
「じゃ、レイチェルとラッツに仕切ってもらおうぜ。男子はラッツ、女子はレイチェルの言うこと聞いて掃除開始! みんなそれでいいかー?」
「「「「「異議なーし!!」」」」」
「お、ノリいいじゃん。じゃ、ラッツ頼むぜ」
「お、おう……やるなアルフェン」
「くっ……ま、まぁいいわ。ラビィ、こっち来て! あたしの補佐!」
すると、桃髪の少女ラビィがレイチェルの傍へ。
アルフェンをチラっと見てすぐ目を逸らした。
「おーし男子! 机と椅子の修繕からやろうぜ!」
「女子のみんな! 窓ふき、床掃除、蜘蛛の巣取りから始めるわよ!」
特に打ち合わせもしていないのに、見事な連携だった。
◇◇◇◇◇◇
掃除が終わり、なんとか教室らしくなった。
相変わらず椅子と机はボロボロ、窓ガラスもヒビが入っているが、テープで補修。床掃除をしたので埃っぽさは消え、教室と言えなくもない姿に。
生徒たちは、とりあえず適当に座って待つ……だが、一時間しても誰も来ない。
そして、一時間と十五分後……ようやく教師が来た。
「揃っているな」
最初の一言が、これだった。
ずっと待っていたのに、さすがのアルフェンも気分が悪い。
それに、目の前の男性教師は……どこか、見下したような目をしていた。
二十代半ばほどの年齢。茶色い髪をオールバックにし、メガネをかけていた。
「とりあえず、F級のお前らには召喚士の基礎知識だけを学んでもらう。ああ、召喚士として期待はしていない。学ぶことを学んだら卒業し、好きなように生きろ」
「「「「「…………」」」」」
「おや? なんだその目は……いいか、最初の授業だ。生徒として扱って欲しければ、召喚獣の等級を上げろ。そうすれば少しはマシな環境で授業も受けれるし、必要なことも学べる」
男性教師は、教室の空気を吸うのも嫌なのか顔を歪める。
「はぁ……空気が淀んでいるな。とりあえず『召喚士教本』を置いておく。明日から授業を始めるので今日は終わりだ。ああ、名乗っていなかったな。B級召喚士のオズワルドだ。覚えなくてもいいぞ」
そう言って、オズワルドは去った。
アルフェンの隣に座っているハウルは言う。
「貴族だろうが平民だろうが、召喚士は等級が全て……か」
「…………はぁ」
アルフェンはため息を吐いた。
これから卒業まで、やっていけるのか不安だった。
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