木造の寮

 フェニアはB級、アルフェンはF級。

 案の定というか、わかりきった結果だった。

 フェニアは結果がわかるや否や、同じくB級の認定を受けた召喚士たちに囲まれ、互いに自己紹介したり召喚獣を見せあっていた。

 そこに、アルフェンの入る余地はない。

 アルフェンは、さっさと荷物を持って学生寮へ向かう。


 学生寮へ続く道は整備されていない。敷地内なのに薄暗い森の中だった。

 差別は、どこまでもいっても差別される。

 学生寮に到着したアルフェンは見た……F級の学生寮は、木造の古い建物だった。

 中に入ると、受付があり、そこで名前と登録証を渡す。この登録用紙は、先の等級検査の時にもらったもので、アルフェンがF級認定を受けたことを表している。


「部屋は十号室。同居人と仲良くやんなよ」


 鍵を渡されたが、受付の老婆はあまり態度が良くない。

 だが、アルフェンは気にしない。

 十号室は寮の三階だ。軋む階段を上り、十号室と書かれたドアを開けると、そこには。


「お、新入りだ」

「ばーか。オレらも新入りだろ」

「あ、あ……とも、だち」


 男が三人いた。

 一人は、短い毛を逆立てた体格のいい少年。

 もう一人は、長い髪を縛っている蒼髪の少年。

 最後は、横幅の広い巨漢の少年だった。

 アルフェンは、頭を軽く下げる。同世代なのでタメ口で言った。


「よろしく」

「おう。あ、自己紹介がまだだったな。オレはラッツ。アウディオ男爵家の七男だ」

「オレはハウル。同じく辺境男爵のライル家の五男」

「ぼ、ぼくはマーロン……辺境子爵ピッグ家の三男です、はい」


 全員が貴族だ。

 だが、全員が末っ子であり、F級だ。


「俺はアルフェン。リグヴェータ家の三男だ」

「「「リグヴェータ家!?」」」

「うわっ!?」


 三人がズイッと迫ってくる。

 いきなりのことで、アルフェンは荷物を落としてしまった。


「リグヴェータ家って、あの四期生の『聖騎士』リリーシャ様の!?」

「あ、ああ。お、弟……なんだ」

「それだけじゃねぇ!! 弟のダオーム様、キリアス先輩もだろ!?」

「ま、まぁ……」

「……きみ、どうして」

「察しの通り、俺には才能がない。落ちこぼれってわけだ」


 マーロンが頭を下げた。

 巨漢の割に穏やかそうな少年だ。アルフェンはそう思う。

 すると、ラッツが言う。


「辺境男爵の末っ子。んでF級……はは、なんか親近感湧くぜ。お前も家族に見放されたってことか?」

「……まぁな」

「じゃ、オレらと同じか。なぁラッツ、マーロン」

「う、うん。ぼくたち、いい友達になれそぉ」


 四人は顔を合わせ、自分たちの家族やこれまでの人生を話し合った。

 いつの間にか、アルフェンは笑っていた。

 初めての友人。対等な友人に囲まれながら。

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