第44話 今日も元気に魔境調査

 俺と竜崎くんは転移魔法で前回調査した現場へと一瞬にして移動する。

 その場所とは――あの新しい村ができた場所の近くだ。


「そういえば、彼らは橋づくりをあきらめたのかな?」

「ルナレナ様の力があればこれ以上こちらに干渉してくることはないと思うっすよ」


 竜崎くんはあっけらかんとした態度でそう答える。

 まあ、彼がそこまで言うのだから大丈夫なのだろう。

 ……ただ、俺はあのリーダー格の男が妙に気になっていた。


 彼が創造の女神であるルナレナ様の力を凌駕するほどの実力者――とは微塵も思っていないのだが、どうにも存在が引っかかるのだ。なんとなく前の職場の嫌な上司と雰囲気が似ているからかな?


 とりあえず、あの村に関しては放置しておくとして、今日も元気に魔境の調査へ向かうとしよう。


 それにしても……ルナレナ様の力が弱まっているって話だったが、その原因となるものに関しては情報のひとつも出てきていない状態だった。


 正直、不甲斐なさを感じる。


 ルナレナ様は気にしていないような感じで明るく振る舞っているけど、その本心はまったく違うのかもしれない。

 とにかく一日も早く有益な情報を持ち帰らなくちゃ。


 ――とはいえ、調べるにしてもこの魔境は本当に広い。

 魔境のさらに奥地へと足を踏み込んでいくが、竜崎くん曰くまだまだ魔境の中心には程遠いという。


「改めてここがとんでもなく広い場所だって思い知らされるよ」

「でも、転移魔法があるからまだ楽になっている方っすよ」

「確かに……」


 魔法、か。

 そういえば俺も魔法を習得している最中だったな。

 しかし、基礎の段階でさえ突破できるのはいつになるか分からないと断言されてしまうほど未知数であった。教えてくれている竜崎くんも、あっちの世界の人間に魔法を教えるのは初めてらしいから仕方ないけど。


 でも、せめて手から炎とか水とか出せるようになれたらいいな。

 水道光熱費が節約できそうだし。


 そんなことを考えていると、先を歩く竜崎くんが急に足を止めた。

 何事かと思い、俺も足を止めて彼に声をかけようとした――その時だった。


「あれ?」


 どこからか声がする。

 これまでも言葉を発する動物とは何度も会ってきたので今さら驚きはしないのだが……これはもしかして――歌か?

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