第35話 創造の女神の実力

 ログハウスへ戻ると、早速今日の出来事をルナレナ様へ報告したのだが――


「お疲れさん。そういうのはこっちで対処しとくから」


 ポテチを食べつつノートPCでお笑い動画を見ながらそう答えた。


「き、危機感が薄すぎる……」

「とはいっても、あれで一応女神っすからねぇ。お得意の規格外パワーでなんとでもなっちゃうんだと思うっすよ」

「聞こえているわよ、ホーリス」

「こりゃ失敬」


 神様の力、か。

 身も蓋もない話だけど、めちゃくちゃ説得力あるよなぁ。

 たぶん、ジャージ姿で動画見ながら爆笑している光景を目の当たりにしているから実感なんてものは湧きあがって来ないんだろうけど、実際はとんでもない人なんだよな。なんてったって俺が暮らしていた世界を創った創造神なのだから。


「あっ、そうだ。それよりももっと重要な話があるのよ」

「重要な話?」


 よほどのことがない限り慌てふためくなんて事態にはならないと思っていた矢先に飛び出した「重要な話」というなんとも緊張感が高まる言葉。


 創造の女神が語る重要な話……こいつは只事じゃなさそうだ。

話の続きを待っていると、ルナレナ様は一枚の紙を取り出した。


「これを見に行きたいの!」

「えっ?」


 それはチラシだった。

 よく見ると、以前野菜を売ったあの道の駅に移動動物園が来るらしい。


「でも、動物ならこの魔境でもたくさん見られるのでは?」

「分かっていないわねぇ。こっちの動物たちは賢すぎるのよ。あんたの世界にいる動物はこれぞ動物って感じがしていいんじゃない」

「は、はあ……」


 違いがよく分からんし、その辺の匙加減こそ神のみぞ知るって感じがするけどな。

 まあ、一般ピーポーである俺では理解が及ばない領域の話なのかもしれない。そういうことにしておこう。


「しかし、移動動物園って実際何が来るんだ?」

「やっぱり小動物メインじゃないっすか?」


 それもそうか。

 像やらキリンなんて運べそうにないからな。


 ……なんか、魔境でとんでも動物たちと会話を交わしている身からすると物足りないな。


「開催は明後日! それまでに魔境の外をうろついている連中はしっかり対処して存分に楽しむんだから!」

「あの、ルナレナ様? どうか穏便な手で……」

「当り前よ!? 髪の力で消し飛ばすとでも思ったの!?」

「ほ、ほんのちょっとだけですよ?」


 あんまりフォローになってはいなかったが、ルナレナ様はそれで引き下がってくれた。


 俺が初めて接触した異世界の人たち……怖そうな人もいたが、少なくともリーダー格の男性はいい人っぽい。


 何事もなく撤退してくれるのを祈ろう。

 あと……地味に移動動物園が楽しみだったり!

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