第33話 初めての異世界交流
思えば、この世界に来てから竜崎くんやルナレナ様以外で話したのはクマとシカくらいか。
そういえば彼らも独特というか、ちょっと普通じゃない感じだった。というか、人間と会話ができるという時点で十分普通じゃないよな。比較対象を間違えたよ。
気を取り直して……まずは声をかけてみるか。
「あの、ちょっといいですか?」
「うん? 誰だ、君は」
「と、通りがかりの旅人ですよ」
事前にこうしようと決めてはいたが、いざ実際に会話をしてみるとそれまで準備していた言葉が全部飛んだ。
でも、会話に違和感がない。
元の世界……現代日本でしていた時とまったく同じ感覚だ。
竜崎くんの言うようにこちらの常識が通用しないこともあるだろうが、普通の会話くらいなら普通に通用するじゃ――
「なんだ、こいつ……殺しますか?」
前言撤回。
やっぱり分かり合えないかもしれない。
すぐにでも逃げ出した方がいいのかと思っていたら、リーダー格っぽい初老の男性が腕を伸ばして物騒な発言をした男をたしなめる。
「よさないか。そうやってすぐに乱暴な言動を取るのはおまえの悪い癖だと何度も教えたはずだぞ」
「す、すいやせん」
初老の男性は厳つい顔の男を一喝。
年齢や体格からすれば、あっちの男性の方が優位に立てそうだが……それでも敬語を使って逆らわないところを見る限り、相当な実力者であることがうかがえる。
「無礼な振る舞いをしてしまい申し訳ない。旅人とのことだったが、どこから?」
「えっ? あ、それは……」
しまった。
俺はこちらの地理に疎い。
今にして思えばかなり杜撰な計画だが、ここはなんとしても誤魔化さないと。
「み、南からです。各地を転々としながらいろんな仕事をしてきました」
「ほぉ、それはいいですな」
最初はどうなるかとヒヤヒヤしたが、だんだんと穏やかな方向へシフトしていっている。
……もう少し踏み込んだ話題を振っても大丈夫そうか?
「あなた方はここで何を?」
「この川に橋をかけようと思いましてね」
悪い予感は的中してしまったな。
もしかして、ここが魔境だと知らないのか?
「なるほど、橋ですかぁ……しかし、この先にある森はちょっと不気味な感じがしますよ?」
「えぇ、何せ魔境と呼ばれている場所ですからね」
「っ!?」
この人……魔境について知っているのか?
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