第0話
44 けがれた黄金
序章/プロローグ
俺の名は
単に浮気調査や迷った犬猫探しばかりをするわけではない。法で裁けない案件を扱ったりすることもあるわけで…
今回も厄介な依頼がやってきて、奮闘するわけだが、俺には頼りになる相棒がいる。
ちなみに、俺の相棒には秘密があった。
偶然、神戸の和田岬で瀕死状態の女を発見したが、身元不明で過去の記憶を失っていた。そして、奇跡的に命を取り留めた後、俺が責任を持って面倒を見ることにした。
謎の女の名前は、夏に遭遇したことから
夏女には俺の仕事を手伝ってもらい、たちまち数々の難事件を解決してくれる相棒に成長するのであった。
ここで俺たちの仕事ぶりを見せていこうと思う。
一九八×年、秋の終わり頃。場所は神戸に位置する刑務所。
その日、刑期を終えて出所する男性がいたが…
「もう来るなよ」
「世話になったな」
出所した男性は看守に決まり文句を浴びせられるが、反省の色はないようであった。
出所した男性の名は
作戦は成功して警察の包囲網を潜り抜けたわけだが…
ドガォン!!
一つの銃声で、卓也たちの運命の歯車が狂いだした。彼らは人気のない廃工場で強奪した金を山分けしようとしたが、卓也だけ取り分に納得いかず、卑劣な行為に出ようとした。彼は仲間の背後に回って、
撃たれた仲間は虫の息の状態だが、卓也は冷静で、強奪した全ての金を自分の車に積んで逃走した。このまま卓也の思惑通りに進んでいくと思われたが…
現金輸送車襲撃事件が発生してから数日後、担当刑事の捜査が順調に進展していく。実は卓也に撃たれた仲間は生きており、まともに会話が交わせるまで回復していた。
刑事たちは早速、卓也の元仲間が入院している病院で事情聴取を行った。卓也の元仲間は、腸が煮えくり返り、警察に協力的であった。
また、卓也の交際相手や関係者の聞き込みによって、彼の尻尾を掴むことができた。
卓也が行きつけの居酒屋を出ると、鋭い眼つきをした男たちの姿があった。彼らは卓也を監視していた刑事で、しっかりと標的を包囲していた。卓也はお縄について、獄中生活を送ることとなった。そして…
時が経ち、卓也はようやく
自由の身となった卓也は、何を企む、悪事を働く時の眼をしていた。
場所は兵庫県に位置する中央競馬場。金欲に眼がくらむ愚者が集結している場所であり、アベックや家族連れで賑わうのは、もう少し先の時代となる。
出所したばかりの卓也は開催中の競馬場に足を踏み入れて、何かを目論んでいる様子であった。
〈…出走馬が続々とゲートに入っていきます〉
レースが始まる時間が迫り、馬券購入者は固唾を呑んでスタートする時を待っていた。そして…
バン!
出走ゲートが開き、一斉に競走馬がゴールまで駆けて行った。レース時の馬場状態(芝)は稍重で、馬の実力差はあまりなく、
「差せ!差せ!」「逃げ切れ!」「そのまま、そのまま!!」
「………」
場内の観客が熱狂する中、卓也はレースではなく、何故か別の場所に視線を向けていた。そして…
〈…着順が確定しました、一着は逃げ切った九番人気…〉
レースは荒れに荒れて、本命馬は期待を裏切ることとなった。穴馬がレースの主役となって、幕を閉じるのであった。
レース終了後、外れ馬券を破り捨てて、怒りを露わにしている者が多かったが、中には強運で大金を得た者も存在する。
「…よっしゃあ、また当たった!今日はついているな~」
「調子いいな…メインレースも当たるんじゃないのか?」
「今日は高い酒が飲めそうだ、はは…」
一人の馬券購入者が穴馬を当てて、友人に自慢していたが、彼の運は尽きようとしていた。
「…おっと、ごめんよ~」
その時、観客が密集している場所に割り込む者が一人現れて、強引に突き進んでいった。すると…
「…あれ、財布がない」「え…俺もだ…ば…馬券もない!」
「…ふ」
観客席が騒然とする中、卓也は不敵な笑みを浮かべて、馬券払い戻し窓口へと向かった。
「封筒を用意しましょうか?」「ああ、頼む」
卓也は何気ない顔で払い戻しの手続きをしているが、彼は一切、馬券を購入していなかった。
実は、観客と接触した際、財布や当たり馬券を奪い取っていた。卓也は払い戻しを済ませた後、メインレースを見ずに競馬場を後にした。彼の懐は一気に温まるのであった。
卓也は汗水を垂らさなくても、簡単に金銭を得る方法を熟知していた。
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