第2話大衆食堂 うましかて

「…くん?ゆうくん??ねぇ、聞いてる??」




「ひゃい!!!」




「も〜しっかりしてよね~。これから心配なんだけど。なんてね。これから宜しくね。頼りにしてるよ!」




と言い微笑んだ。も〜やめてくれ。可愛すぎるだろ…その後、持ってきた荷物を片付けをした。お互いに生活必需品は現地で調達しようと考えていたため、荷物はそう多くはなかった。理人さんからお詫びとして冷蔵庫や洗濯機などの家具が一式送られてきた。断ろうとしたのだが断りきれず、受け取ることになった。




「これ、全部最新式じゃん…しかもかなりいいやつ…」




「そうよね…この後家具とか必要なものを買いに行く予定だったけど…そうだ。ゆうくん夜ご飯どうする?」




「食材も無いから外食でもするか。冷蔵庫もまだ冷えてないだろうし。帰る頃には冷えてるだろうから帰りに食材買って帰ろう。」




そう言って外出した。




「実は最近、親父が定食屋を開いたんだ。そこに行く?」




「え、旅館やってたんじゃないの?」




「あぁ、旅館以外にも料亭も出してるんだけど、リーズナブルな価格で色んな料理を安価でも食べてもらいたいって言う理由で定食屋も始めたんだ。」




「へぇ〜。料亭もやってたんだねぇ。卒業してからは継ぐの?」




「うん。卒業したら定食屋を継ぐつもりだよ。まぁ、幸いにもここの学校には料理を専門的に学べるコースもあるし、複数のコースを受講出来るみたいだからね。まぁ、複数のコースを学ぶ人はごく少数らしいけどいるみたいだね。その人たちは別室で放課後に学ぶことがあるらしい。まぁ、俺は料理人から一通りは教えてもらってるし。多分料理系はコースを選ぶかどうかはまだ分からないけどね。」




「ふぅ〜ん。将来の事まで考えて偉いなぁ~。私はこの学校に入ったのは良いけどまだ何やるか考えてないなぁ〜。」




「高校3年間あるし、ゆっくり考えれば良いよ。」




なんて話しながら歩いていたら例の定食屋についた。




「【大衆食堂 うましかて】っていう名前なんだ。夜は隣で大衆居酒屋として居酒屋もやってるのね。」




「あぁ、居酒屋もリーズナブルな価格で味も美味しいってので結構評判良いみたいだよ。」




と言いながら食堂の方に入る。




「いらっしゃい!!!2名様ですねー!少々お待ち下さいって兄貴じゃないすか!!!1本電話くれれば席開けときましたのに」




「よぉ。元気にしてたか?そんな事しなくてもいいぞ〜。しばらく顔出せなくて悪かったな。」




「いえいえとんでもない。俺らは元気にやってまっせ!兄貴、隣にいるのは彼女さんですか?」




「あぁ、紹介するの遅くなったな。こちらは渡辺美乃里。まぁその…俺の彼女///ってか仕事しろ!呼ばれてるぞ。」




「あぁすいません。はーい!少々お待ちくださーい!席が空き次第お呼びいたしますんで少々お待ち下さい。」




そう言って店員は業務に戻った。まぁ、そろそろ閉店とはいえ、まだまだ人は多い。今日もいつもと変わらず賑わってる。




「お疲れ様です。お待たせしました。今空いたんで、どうぞ。2名様のご来店でーす!いらっしゃいませー!!!」




「いらっしゃいませ~!」






と元気で大きな声が店内に響き渡る。店内にはカウンターが10席、テーブル席が5つほどある、どこにでもあるような大衆食堂である。メニューは豊富で唐揚げ定食に焼き魚定食、ハンバーグ定食、ラーメンにチャーハン等、和•洋·中幅広くつくっている。




「ねぇ、あの店員さん、ゆうくんの事を人兄貴って呼んでいたけど…凄くイカツかったし…ヤンキーかなんか?」




「あーあの人?あの人はハルって言うんだよ。他にはホールにヤス、厨房にミツとシュウ。の4人で回してる。まぁあいつらにも色々とあったからねぇ〜…」




「兄貴って呼ばれてたけど何かにあったの?何かになきゃ兄貴なんて呼ばないと思うけど。」




「実はな、こんな事があってね…」




この4人はここらへんではそこそこ有名だった。特にこれと言ってタバコを吸ってるだとか酒を飲んでる、バイクに乗ってブイブイ言わせてるなんて悪い事をしているわけでは無いのは知っている人も少なくは無かったが、裏社会の人と繋がりがあるという嘘の噂が広がってしまった。本人たちは本当に繋がりは無かった。まぁ、やんちゃな高校生な感じではあったが。この4人を嫌う人達がこんな嘘を撒き散らしたのだろう。本人たちは本当に何もしていなかったから嘘を晴らそうと色んな人に無実だと言った。何度も嘘の情報を晴らそうとしても、誰も信じてもらえずどんなに弁解しても誰も俺らの言うことを信じてもらえ無かったのだ。そのせいで就職も上手く出来ずに行かなかくなり、公園で4人が集まって話をしていた所に俺がちょうど通りかかった。俺を見てかなり落ち込んでたのが分かったらしく、入試の勉強やらテストの成績が上手くいかなくて聞いてもらった。この4人から勉強を教えて貰ったり遊んだりしてもらった。この4人にもこの時何があったのかを全て聞かせてもらった。丁度今の店を出店する事を親父から聞いたのでどうかと提案したら許可を得る事ができたので、うちの会社で働くことになった。最初は売れ行きはまぁまぁだったが、味や接客、店内の雰囲気がとても良い事から彼らの悪いイメージも無くなり、今はとても繁盛している。




「まぁ、こんな事があったんだよ。この店が回ってるのはこの人たちのおかげだし、俺は感謝してるよ。あいつらは『あんたがひろってくれなきゃ今頃どうなっていたか…』なんて泣きながら言っててな。『命の恩人です!これからはあんたについていきます!兄貴と呼ばせてください』なんて言われてな…断りきれずにこうなった訳さ。」




「リスクとか考えなかったの?この人たちが嘘付いてるんじゃないか?とかもし雇ったとしても変な事でするんじゃないか?とか色々考えられるリスクはあったでしょ?」




「勘ってやつ?それに新しく建てる所に新しい従業員も欲しかったからね。」




なんて話をしていたらハルが来た。




「すみません、こちらお冷とお手拭きをどうぞ。こちらがメニュー表になります。お決まりになりましたらお呼び下さい。失礼しま〜す。」




「さて、腹も減ったしメニュー決めるか。」




「いやぁ悩むねぇ〜…ゆうくんは何頼むの?」




「俺?今日はそうだね…めちゃくちゃ腹減ってるから、豚バラ定食のセットで大盛りにしようかな。味噌汁を豚汁にして、ご飯に玉子トッピングしようかな。」




「じゃぁ私もこれにする!私はそんなに食べれないから普通盛りで。」




注文が決まったのでハルが駆けつける。




「豚バラ定食のセットが2つで兄貴が大盛りでご飯に玉子トッピング、味噌汁を豚汁に変更っすね。了解ッス!少々お待ち下さい!」




注文を受け付け、厨房に注文票をたわす。辺りには閉店間際だったため、人が俺達以外誰もいなくなっていた。




「そういえば、このお店のメニューって豊富だけどやっぱりメニューとかって旅館とか料亭のやつを改良してだしてるの?」




美乃里が気になったことを聞いてきた。




「和食のメニューの大半はそうだけど、俺がオレジナルで考えたメニューもあるよ。豚バラ定食もそのうちの一つなんだ。旅館とか料亭には無い、大衆食堂ならではのメニューも欲しかったからね。」




「こんなにメニューがあるのに4人じゃ大変じゃない?ピーク時とか回らなさそうだけど…」




「ピーク時はもう少し人はいるよ。」




「他の人は隣の居酒屋の仕込みに入ってるよ。」




と居酒屋の話をしていると注文していた定食が届いた。




「わぁ〜!凄い!凄く美味しそう!!!」




ご飯に味噌汁、メインの豚バラの炒め物。ニンニクの芽やキャベツ、ピーマン等も一緒に炒められている。その他に生野菜のサラダと小鉢が4つ添えられている。小鉢にはほうれん草の胡麻和え、人参としらすの和え物、明太子入りポテトサラダ、肉あんかけの揚げだし豆腐が添えられている。小鉢の品は日によって変わる。




「良かったらこれもどうぞ召し上がってください。」




そう言って渡されたのは、プラス500円の料金を払えば付いてくるセットとソフトドリンクだ。内容は刺し身の盛り合わせ、角煮、だし巻き卵の3つである。




「良いよ別に〜。気を使わなくても。ありがとね〜。」




「兄貴にはお世話になりっぱなしなのでこれくらいさせて下さい。」




「プラス500円で品目を増やせるのをメニューに入れたいって言ってたけど内容は決まって実際に取り入れたんだね。」




「社長にこれをやりたいって言って、メニューとか費用等を伝えたらOKって言われて出来ることになったんっスよ。」




「この角煮おいひ〜!味がしみてて柔らかい!しかもこの刺し身もすごく新鮮!それにこのだし巻き卵!めっちゃ出汁が聞いててマジ美味しい!」




凄く気に入ったのか良く食べている。気に入ってくれたのはとても嬉しい気持ちだ。




「ごちそう様でした!」




「美味しかったな。」




「うん!とってもおいしかった!また一緒に来ようね!」




そう言って【大衆食堂 うましかて】を後にした。

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