第9話 第二関門

そうして、その日朱雀の姫選別の第二関門が始まった。


相変わらず春蕾チュンレイ様が一歩前に出て説明される。


「朱雀の姫候補の皆様、おはようございます。

さて、今日の第二関門では、拳大ほどの氷を熱または炎で溶かしていただきます。

氷に直接触れなければ、炎でも熱でも、ありと致します。


ただし、炎or熱以外の魔法、例えば風魔法で切り刻むなどは、NGですので、ご了承ください。


では、それぞれの席に座って下さい。

氷が持って来られますので。」


私たち23人の朱雀の姫候補はそれぞれの椅子に座り、机に手を構える。


氷なんて溶かせるのだろうか?

不安で胸が一杯だった。

でも、やるしかない!


氷が運ばれて「始め!」の合図がなった。


私は手に手柄を込めて熱を出すイメージをする。

手元が熱くなり、氷が溶け始めた。


結果、私は3番目の早さで、第二関門を突破した。


安堵する私。


♦︎♦︎♦︎


そして、その夜また蓮の池のほとりに向かった。


飛龍フェイロン様に会いたくて会いたくて…

その気持ちだけだった。


飛龍様は月の花を弾いて居た。


「飛龍様…」


私はそっと彼に近づく。


小鈴シャオリン

そなたに話があるのよ…」


飛龍様は少し暗い表情でそう言った。


「何ですか…?」


「まぁ、座れ。

俺にはかつて愛して居たおなごがおった。

名前を雹華ヒョウカと言った。

雹華は氷のように美しいおなごであった。


俺は農村の娘である彼女に一目惚れし、蓮の後宮に通い詰めた。

彼女を正式な妃にするつもりだった。


しかし、女の嫉妬とは恐ろしいものでな。

雹華はありとあらゆる嫌がらせをこの後宮で受けて、衰弱して死んでしまったのだ。


それから、一度も後宮のおなごを抱いておらぬ。


なんならば、憎んでいる。


雹華はもう会えぬ月の花になってしまった。

だがな、まだ、愛しておるのよ。


だから…


そなたを愛する事はできぬ…」


飛龍様は確かにそうおっしゃった。


そなたを愛する事はできぬ…


と。


それから先の事は覚えていない。

気づけば自分のいつもの部屋に帰って居た。


それから、私は風邪で3日寝込んだ。

精神的ショックが大きかったのかも知れない。


だけど、それで吹っ切れた。

いや、飛龍様のことはお慕いしている。

だけど、今は待つしか無いと、そう思ったのだ。


その日から元気になり、食事もパクパク食べる私を見て明明は安堵して居た。


大丈夫、私は大丈夫。


そして、そんな中、宰相の春蕾様が私の部屋にお見えになった。


一体どうしたのだろうか?

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