第3話 初の客

その日、私の水揚げの日が決まった。


その夜来たお客さんの中で1番の高値を出した人に抱かれる事になったのだ。


私は怖くて怖くて…

気分転換に妓楼街を歩いていた。


ずっと下を向いて歩いていたので、人にぶつかってしまった。


「も、も、申し訳ございません!」


「いや…

良い…


そなた妓女か…?」


ぶつかった男性に聞かれて、そこの妓楼館で妓女をやっている、と答えた。


♦︎♦︎♦︎


そして、夜…


私に1番の高値を出したのは、あの昼間にぶつかった男性だった。


何故一見のお客さんがそんな大金を…?


私はよく分からぬまま、美しい衣に着替えて着飾ってお座敷に出た。


「おぉ、来たか。

こちらに座れ。」


そのお客さんはフェイと名乗った。

飛様の連れの方はチュンと言うそうだ。

飛様はとても美しい男性で、何処となく気品も兼ね備えていた。

そんな美しい男性なのにも関わらず、私の心は沈み、そして、身体は震えていた。


「そのように怯えずとも良い。

俺は優しくする。」


飛様はそう言って私の肩をグイッと抱いた。


あぁ…とうとう…


私は覚悟を決めた。


そして、飛様は私を抱き上げ寝室に連れていった。


私の衣をゆっくりと脱がせていき、あぁ、いよいよだ…と思ったその時、フェイ様の手がぴたりと止まった。


何故か私は衣を着せられて、彼は「帰る」と言って帰ってしまわれた。


一体何がいけなかったのだろうか?

でも、私は緊張から解かれてそのまま眠ってしまった。


♦︎♦︎♦︎


翌朝、女将さんの声で目を覚ました。


「あんたは今日付けで妓女じゃないよ!」


女将さんはそう言った。


「え…

どう言う意味ですか…?」


「昨日のお前のお客さんね、王都のお偉いさんだったみたいでね。

あんたが朱雀の姫候補かもしれない、とさ。

大金を置いていってね。

後宮からの迎えの馬車が来るそうだよ。


さっさと用意しな。」


そう言って女将さんは部屋から出ていった。


私が…

朱雀の姫候補…?


そういえば、腕の辺りに朱雀みたいなあざがあるわ…


これを見て抱くのを辞めたのね、あの人…


でも、私が朱雀の姫のはずは…


私はそう思いながらも、用意した。


そして、妓楼を見上げてお別れをすると、私は迎えの馬車に乗り込んだ。


こうして、私は後宮に入る事になったのだ。


小鈴シャオリン様、私は後宮までの案内人の泰然タイランと申します。

どうぞ、よろしくお見知りおきください。」


泰然様がおっしゃる。


「はい。

よろしくお願いします。


あの…昨日の方は…?」


私は尋ねた。

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