東京ディザイア
七星北斗(化物)
1.日常
七つの大罪という、人が死に至る欲がある。だが人間とは、本当に七つ死の枠に囚われた存在なのか?
考えてみてほしい、多様な人間がいてたった七つしかないという方がおかしいというもの。人の罰とは、その罪を背負うこと。
つまりは、欲を制御することに他ならない。それが七つの大罪の本質にある。
ならばこそ欲望を剥き出しになった人間が、何よりも恐ろしいというそんな話。
今から始まるヒストリーは、欲望にまみれたあなたたちが織り成す世界のお話。
欲望渦巻く東京、治安は乱れて、力ある金狸が国を牛耳っていた。
「アムネジアの皆さん、こんポンよー。麻雀系πチューバーの姫カワだよー♥️」
ちっ、今日も閲覧者数が百人越えない。肌もっと見せなきゃ釣れないみたいね。
おっと、カメラ落としちゃった。
そのタイミングで投げ銭がいくつか入る。慌てた振りをしてカメラを元の位置へ。
本当に気持ち悪い、でも一番気持ち悪いのは私だと思う。
あ、メールきてる。
【コラボ依頼、コラボイベント◯衣麻雀を一緒にやりませんか?】
やるわけねーだろばーか。
今月の家賃厳しい、バイト増やさないと駄目だな。あー何か疲れた。結局、私は何をしたいんだろう?
あたしの夢は、アイドルになってお金をたくさん稼いで、カッコいい王子様と結婚することです。
そんな風に小さい頃は、夢を見てたものだ。
実際のところは、露出を増やして金を稼ぎ。キモいおっさんが寄ってくるだけ。
現実なんてこんなものだ。
やめだ、悶々と考えても時間を無駄に使うだけ。飯食いに行こう。
マンションを出て、放浪通りを抜ける。今日は、何を食べようか?そんなことを考えていたら。
その人物に視線を奪われてしまった。長い黒髪に切れ長な睫毛。身長は、私よりも小さい。しかし残念なことに目の下に凄いクマができていた。
そんな風に見ていると、この辺りで有名なぶつかり屋が現れ。案の定、目の前の少女にぶつかる。倒れようとした少女を、私は後ろから支えた。
「ありがとう、お姉さん」
少女は、素直にお礼を述べた。ぶつかり屋は、そのままその場を去ろうとする。
「ねぇ、おじさん。ぶつかって謝らないんだ?」
中年の男は、ピタッと歩みを止めて振り返った。
「何だあ、肩が少し当たっただけだろ」
「おじさん、傲慢だね」
「無礼講なこの世の中に何を言っているんだ」
「見解の相違だね。あなたのような人には、こうするのが一番だよね」
少女は、男を突き飛ばし。突き飛ばされた男は、車道へ倒れた。
「おじさん、運が悪かったね」
男は、大型ダンプに磨り潰される。濁ったカビ臭い匂いが辺りに広がった。
その光景を見て、胃酸が上がってくる。私は、思わず吐いてしまった。
「お姉さん大丈夫?」
少女が、心配そうな顔で見下ろす。
「あなた何者?何でそんなことしたの、人を殺したんだよ」
「僕は、◯◯◯。人を殺すことは、何気無い一幕だよね。だって人間って特別な生き物じゃないでしょ?」
少女と思っていた子供は、男の子だった。この子は、人を殺すのに躊躇いがない。頭のどこかのストッパーが外れているのかもしれない。
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