異世界でもう一度生を

@kasuri

第1話 思い出した

『………』


『思い出せたかい?』



高次元の存在が問いてくる。

俺はその問いに返事をし、もう一度自身の死因について振り返る。

会社帰りにたまたま立ち寄った古い神社で、ガラの悪い学生達が純白の蛇を捕獲しようとしていたのを発見したのだ。

何故だか分からないがその蛇を見た瞬間、『逃がさなければ』という気になり学生達に注意をしたんだ。

注意の甲斐あって蛇は逃げることに成功したようだが、それに腹を立てた学生達に暴行され、気付いたらここに居たんだ…



『それはよかった。それで君には2つの選択肢がある、好きな方を選ぶといいよ。』



・1つは輪廻に加わること。

所謂、輪廻転生だ。ただその場合は次も人間とは限らず、違う生命体になる可能性が高いそうだ。余程幸運なら人間に、運がなければそれ以外か。


・2つ目は地球とは違う次元の星に行くこと。

要は異世界転生だ、それも「人」への転生だという。だと言うのに嬉しいという気持ちが沸かない、不思議な気分だ。


当然答えは2つ目の異世界転生を希望する。

日本でオタク文化に触れたとこがある人種なら誰もが選択する。

そうでなくとも次も人間になれるなら誰でもそうすると思う。


それと先程からいくつか気になることがある。

・死因もそうだが、異世界への転生を聞いても感情の起伏が感じられないこと。

・何故転生を希望させてくれるのだろうか。ここに来るもの全員が選べるのだとしたら、輪廻転生を選ぶ者がいるのだろうか、人間を何周もして摩耗してるなら別だが。

それらを思い浮かべると同時に高次元存在から答えが返ってくる。


『1つ目は君たちで言うなら洗濯に近いかもしれないな。魂の数も強度も有限だ、本来なら綺麗にして輪廻に送るとこだが、君の場合は転生の選択肢があったから薄めてある。廃人同然では選択できないだろ?』


『2つ目は……一言で言えば気まぐれみたいなもんだ。』


気まぐれ…これがほんとの神の気まぐれだろうか。

『やかましい』

神のツッコミが飛んでくる。

高次元存在を怒らせるかもしれないが正直言えばイマイチ納得出来てない。


『はぁ〜君はさ、死ぬ直前に何をした?』


……???

やけに白い蛇を助けたこと?

今思えばペットショップでもあそこまで白い蛇は見たことがない、白というか最早純白だった。


『あれはな神の写し身で、君はそれを助けた。本来は転生は選ばせず輪廻に送るのだが、偶然にも下位存在が高次元存在の写し身を助けたんだ。本神に代わって私が褒美を遣わせようと思っただけだ。』



なるほど、納得がいった。

人の身で神をお救いできただけでも光栄なのに、褒美までいただけるとは光栄の極みだろう。

これで安心して行ける


『さて、納得出来たならそろそろ次の次元に行って『まァ待てよ、俺らにも話させろよ。』


『おい!勝手に他神の神域に侵入してくるなよ!!』


『細けぇこたぁいいじゃねぇかよ、俺達の仲じゃねぇか。なぁ?』『『『『『『『『)/¥@&&」1「:8(93¥/jslgじゅg』』』』』』』』



喋り方を聴くに男神と…もう1柱いるが人語ではなく何重にもなっていたため聞き取れなかった。

少しすると高次元同士の会話は終わったようで、新たに入ってきた男神様がコチラに声をかけてくださる。


『それでおめぇ、名はなんていうんだ?』


私は…あれ?私の名前は……思い出せない…これが洗濯というものか。


『ッチ、遅かったか既に漂白済みかよ。』『『『『『『『『kdっjfじゅ:88@「「……』』』』』』』』


男神様は苛立ちげに、もう1柱は残念?そうな声を出される。


『まぁいい、それよりウチのもんが世話になったな。大儀であった、よくやった。』

『『『『『『『『jしいう18:「「「&』』』』』』』』


男神様に続いて、もう1柱の方が感謝の意をお伝えになられる。

こちらこそ、矮小な身で神の一助になれただけで歓喜の極みでございます。

身体を動かす感覚がないので、頭の中で日本人伝統の土下座を思い浮かべる。

男神様は満足そうに返事をされる。



『そこでだ、おめぇに褒美を取らせる。何を望む?』



…へ?

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