猫嫌いの少年

澁澤弓治

第1話 黒猫のプルート

 僕は猫が嫌いだ、犬と猫どちらが好きかという二択は僕にとっては一択だ。

 母が事故死し、一年後の墓参りには既に、僕と同じ苗字を名乗る女が居た。森 葵である、旧姓、三船 葵。

 一年以内に三船が来たことも、三船が猫を連れてきたことも、僕にとっては苦しかった。

 三船が連れてきた猫はプルートという。黒猫で瞳は青い、三船は葵という名前だから、青い目に惹かれたの、とプルートについて説明していた。

 三船が来るまでは、不器用な男二人で、まずい料理を作ったりしていたから、三船がきてから明らかに、生活の質は上がった。実用面で、良かったと言える。

 三船が来たことにより、夕飯は一人でないし、美味しい、当然コンビニ弁当も減った。




 暑い六月の日、僕は半袖で、でも薄いタオルケットをかけ昼寝をしていた、目が覚めると、腕と胴体に不思議な感触が、そちらを向くと、居た、プルートだ、二つの青い瞳と中心の漆黒の穴、瞳孔に吸い込まれそうだった。

 僕は気づいたときには飛び跳ね、部屋から出ていた。

 長い廊下を走り、リビングに着いた時、三船がいた、耳で和訳された韓国ドラマを消費しながら、洗濯物を畳んでいた。

 少し冷静になった。 

 プルートは完全に閉まっていなかったドアからするりと体を滑り込ませ、入っていきたに違いない、滑り込ませる図を考え、ゾッとした。

 こんな風に猫を避け、恐れている僕に対し、三船は僕との距離を縮めようと、事もあろうかプルートを使った。

 みんな猫は好きだろう、少なくとも嫌いじゃない、という考えか、共通の好きな物を持とうそんな魂胆が僕には透けて見えた、天秤に猫を耐える事と、今後も続いていく、家族関係をかけ、僕は家族関係をとった。

 家の中で僕の役割は、風呂掃除とプルートの餌やりになった。

 猫から逃れれるのは学校だ、しかし学校も安住の地とは言い難い、なぜなら僕は陰キャラ三銃士だからだ。

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