第30話 一騎打ち!

2km離れた土地にホテルを出すというのは、どう考えても俺に対する宣戦布告だ。 

そして、俺はその宣戦布告を受けてたつしか無かった。


負けられない…!

アイリーさんがどのような作戦で来るかはわからないが…


俺は馬に乗り、アイリーさんがプロデュースするというホテルを見に行った。


50人ほどの大工によって、着々と工事が進んでいるようだった。

高さや幅は、俺のEarthの宿屋よりもはるかに大きかった。


俺は帰ろうとしたが、背後から呼び止められた。


「あら、エイトさん?

私のホテルを見た感想はいかがかしら?」


振り向くとそこにはアイリーさんが居た。


「どんなに立派な建物でも経営者の手腕によりますね。」


俺は嫌味を言った。


「たとえそうでも、私には確かな才能がありますのよ。

まぁ、いずれわかりますわ。」


「俺には才能が無いと思っているのですか?」


「ほほほ。

では、一騎討ちですわね。

楽しみですわ。


では、私はこの辺で失礼しますわ。」


アイリーさんは、工事の指揮に戻っていった。


俺は後味悪くEarthの屋敷に帰った。


既にアイリーさんの三つ星ホテルの噂はEarthにも知れ渡っていた。


「ちょっとぉ、エイト!」


リアーナが馬から降りる俺に声をかける。


「大丈夫なのぉ?

宿屋が危ないんじゃないのぉ?」


「心配し過ぎだよ!

俺は宿屋もみんなも守ってみせる!」


「だけど、アイリーも嫌なやつねぇ!

こんな近くに建てる事無いのに!」 


リアーナ。


「どこに何を建てようと法律に違反していなければ自由だよ…」


俺は力無く言う。


「ねぇ、アイリーのホテル、名前が"ローマ"ですってぇ。

ローマって何よ?笑

そんな変な食べ物も物も無いわよねぇ?」


リアーナがそう言い、俺の身体に電流が走った。


ローマ!?

あの、ヨーロッパのイタリアのローマか!?


俺は地球図鑑で各国と主要都市を記憶していた。

間違いない!


では、アイリーさんも地球図鑑を持っている!?


そんな…


呆然とする俺に、リアーナは呼びかける。


「ちょっとぉ!

エイト!

大丈夫!?」


「あぁ、俺は少し書斎に籠るから。

カイに指示を仰いでくれ。」


そう言って書斎に向かい、地球図鑑の世界地図のページを開いた。


ローマ…

たしかにある…!


くそ!

こいつは厄介だぞ!


もしも、アイリーさんが地球図鑑を持っていたとしたら…

俺たちは互角かもしれない…


しかし、向こうがどんなホテル経営するかまだ分からない今、打つ手は思いつかなかった。


ラッシャーさんに頼んでいる門とアパートの建築もあるし、アイリーさんはしばらくほっとくしかないな…


そう割り切ったものの、なんとなく不安な日々を過ごしていった。

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